表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代にダンジョンが出来たので好色に生きようと思います  作者: 木虎海人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/76

 数とサイズ


進路を何度か折りながら進み、雨木は別の拓けた場所へと出た。

念のため手帳を取り出し、簡単にマッピングを行う。


マッピングの基本は歩数だ。

スケールも常備しているが、歩幅を均一に保つ訓練も兼ねている。


手帳をしまうと、リフェリアが様子を窺うように周囲を舞っているのが目に入った。


「まぁ、あれだ。サークル臨時も無意味じゃなかったよな。

ここでもレッサーコボルトが出る訳だし」


何となく気まずくて、蝶の姿のモンスターカードに突飛な話題を振る。

罪悪感もあって、責められているような気がしていた。


リフェリアは何も答えない。

いつものことだ。

だが今は、それがどうにも落ち着かない。


「分かったよ。次に来た時に修復されてなかったら、何か考える。

今は無理なんだ。今日のところはそれで機嫌を直してくれ」


まるで癇癪持ちの彼女の機嫌を取っているようだ、と雨木は思う。

相手は魔物。

それどころか、モンスターカードと呼ばれる存在だ。


だがダンジョン生まれのリフェリアが、

ダンジョンを壊したことをどう思っているのか。

それは雨木には分からない。


少なくとも、もうリフェリアなしの冒険者生活には戻れない。

戻りたくもない。


そのためなら、気くらい使う。


しかし、リフェリアの反応は予想とは違った。

いつものように受け流されると思っていた。


だが、明確な意思が脳裏に叩きつけられる。


『違う!』

『ゴブリン』

『そっちが先!』


脳内に響く単語。

幾度となく経験してきた、リフェリアの意思だ。


「あー、それは分かってるんだけどな……」


ゴブリンダンジョンの探索を諦めたわけではない。

幾つか事情が絡み、マッピングの練習を優先していただけだ。


最大の理由は、十階層のボス部屋。


同じボス部屋でも、十階層は文字通り桁が違う。


まず、十階層へ至る道中。

これまでの階層で現れた雑魚ゴブリン、その全てが姿を見せる。

群れをなして。


さらに問題なのはボス部屋だ。


大ボスの取り巻きとして、三階層の小ボス。

五階層の主。

八階層の中ボス。


さらに、その周囲を取り巻くように、道中と同じ雑魚ゴブリンが二体ずつ加わる。


積み上げた階層が、そのまま戦力になる総力戦だ。


数でも、質でも、雨木は圧倒的に不利になる。


そして最大の問題は大ボスだ。


他のダンジョンの掲示板に載る、十階層、そして二十階層の情報によれば。


十区切りのボスは、人のサイズを超える。

十階層で三メートル。

二十階層では四メートルを超えるらしい。


ゴブリンダンジョンは過疎ダンジョンだ。

情報は、ほとんど無い。

だからこそ、最悪を想定するしかない。


三メートル。

それは見上げる高さだ。


そこが中級の壁だと、掲示板ではよく言われている。

普通の冒険者がチームで挑むそれに、

雨木は単独で挑むつもりでいる。


「数とサイズを突破する、そんな手段が欲しいんだ。

分かってくれ、頼むよリフェリア」


越えなければ、雨木楓真に先は無い。

だからこそ現在、ゴブリンダンジョンから距離を置いている。


他にも理由はいくつかある。

その中でも特に、競合の追加が大きい。


先日、蠟燭ゴブリンが誰かに先に狩られたことを、レコルドで知った。

担当になった熊澤に確認したところ、

現在のゴブリンダンジョンには二人組の冒険者が毎日潜っているらしい。


その結果、火魔法スキルカードと嗅覚強化カードは、

レベル2に上がったところで足踏みしている。


だがある意味、良いタイミングではあった。

雨木には準備が必要だったから。


連戦になるであろう十階層。

最短で進むための、ルートの確保。

手札としての複数の攻撃手段。

何らかの回復手段に、

補給物資の確保、戦利品の運搬方法。


その全てを、一人で賄い補う必要がある。


この薬草ダンジョンなら、まだ人を誘う選択肢もある。

だがゴブリンダンジョンに人を誘うのは難しい。


誰かと入れば収入は半減する。

人が増えれば増えるほど、分け前は減るだけだ。

減った分け前に、人を呼ぶ魅力はない。


だからゴブリンダンジョンは過疎なのだ。

あそこは独占して(単独)こそ美味いダンジョンだ。


何より、リフェリアの存在がある。


この緑色の蝶は明確に、十階層を越えたいと意思表示をしている。

ならばそこに、何かがあるのだろう。


それを他人に、どこまで見せて良いのか。

雨木には判断がつかない。


もしその結果が、リフェリアを手放すことになったら。


後悔しか残らない。

萎えて、冒険者を辞めるかもしれない。


その可能性が、雨木の中で消えない。


「焦る気持ちは分かる。けどな、他のダンジョンに潜るのも準備のためなんだ。

もう少しだけ俺を信じて待ってくれ。

必ずリフェリアを、十階層のボス部屋、その奥のポータルまで連れて行ってみせる」


言い切ってから、少しだけ気恥ずかしくなる。


今のはまるで、プロポーズのようだった。

そんな考えが頭をよぎった。


沈黙が流れる。


やがてリフェリアが小さく震えた。


『なら、どうするの?』


どうやら、話は通じたらしい。


「実はな、とっておきの案がある。

靴に風魔法を纏わせたら、高速移動できるんじゃないかって前から考えててさ。

広い場所で試したかったんだよ。

名付けて――ウインドブーツ。どうだ、悪くないだろ?」


少しだけ得意げに、雨木は言う。


リフェリアは、戸惑うように翅を揺らした。


そして雨木は、自慢の安全靴の左右の踵に風魔法を纏わせる。

同じことをリフェリアにも要求する。

これで纏う風は倍だ。


その風を制御して進もうと、意識を集中させた。


次の瞬間。


靴と足だけが、先に進んだ。

勝手に。


体は、置いていかれる。


踏ん張る。

だが、こらえきれない。


足が浮いた。


次いで、視界が反転する。


盛大に転び、背中から地面に叩きつけられた。


※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを利用して調整しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ