覚悟のあとさき
※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助的に利用しています。
今週は執筆に少し余裕ができましたので、祝日だった月曜日にも追加で一話投稿しています。
まだお読みでない方は、そちらを先にお読みいただけますと幸いです。
第三章 プロローグ
遺跡のような迷路が続くゴブリンダンジョン。その五階層。
最奥にあるボス部屋の手前で、コンゴーとギンジという二人の冒険者は壁に寄りかかって話していた。
何度繰り返したかも分からない、同じ話題だ。
だが、他にやることは特にない。
ダンジョンでは電気を使う道具は動かない。
暇つぶしになる物も、あまり持ち込めない。
かつて持ち込んだ本や雑誌は、読み終えてそのまま放置していたら、いつの間にかダンジョンに吸収されてしまった。
それ以来、コンゴーたちは本を持ち込まなくなった。
愛読書が吸収され、ひどく落ち込んでいたコンゴーの姿。
思い出すたびに、ギンジは少しだけ罪悪感を覚える。
毎日、朝にはダンジョンへ入り、夕方には出る。
そんな規則正しい生活をしているのは、目的の男がそういう性格だと聞いているからだ。
だが、その男は一向に現れない。
来たのかどうかすら分からない。
駐在している警察官も、自衛官も、誰が来たかなど教えてはくれない。
そして、自分たちが煙たがられていることにも気付いていた。
毎日来て、ダンジョンへ入る。
なのに、ろくに魔石は持ち帰ってこない。
精算を担当する職員が嫌な顔をするのも分かる。
その上、互いの名前で順繰りに数日先まで予約を取ってある始末だ。
自分が職員でも、「何だこいつら」と思うだろう。
だが、だからといって露骨に嫌悪感を向けられることにも腹が立つ。
自然と自分の態度も悪くなる。
そんな自分に、少しだけ自己嫌悪した。
互いに、そろそろ諦めようか、と相手が言うのを期待していた。
そんな頃だ。
ボス部屋の前からもっとも遠くが見渡せる通路。
その向こうに、二人は目的の男の姿を同時に見つけた。
「おっ、やっとか」
「やれやれ、待たせやがって。何様だってんだ」
冒険者ネーム、アマギ。
一度、同じサークル臨時で顔を合わせた男だ。
細かいことまでは覚えていないが、それでもあの頃とあまり変わっていないように二人には見えた。
背は高く、百八十センチを超えるらしい。
確かに高い方だろう。
だが、コンゴーは自分の方が背が高いことを知っていた。
ギンジよりも細身だが、空手をやっていたらしい。
確かに、普通の男よりは体つきもがっしりしていた。
だが、背で負けても、力では負けないとギンジは考えていた。
「おい、てめえ、アマギだな! 話がある、そこで止まれ!!」
ギンジが声を張り上げた。
いきなりぶん殴ると思っていたコンゴーは少しだけ面食らったが、ひとまず冷静で良かったと思うことにした。
だが、件のアマギの足はまったく止まらない。
左手にトンファーを、右手で長いバールを肩に担いだまま、普通に歩いてくる。
何を考えているのかは、表情から読み取れない。
ただ冷たい視線だけをこちらへ向け、顔色ひとつ変えずに歩み寄って来る。
「おい、止まれって言ってんだろうが! 聞こえねぇのか!」
ギンジが怒鳴る。
だが、アマギの動きが止まる事はない。
口出しはしないつもりでいたコンゴーだが、その姿につい叫んでしまった。
「おい、無視すんじゃねぇよ! 話があるって言ってんだろ!」
その叫んだ相手――アマギの視線が、自分へと向く。
その眼を見た瞬間、コンゴーは反射的に槍を握る手へ力を込めた。
「待ち伏せ野郎が勝手な事、ほざいてんじゃねーよ」
その言葉に、コンゴーは返事に詰まった。
確かに、話だけなら地上で済ませた方が良いことは分かっていた。
だが、ギンジがどうしても、一度アマギを殴らなければ気が済まないと言った。
一発殴らせれば、それで終わる話だと思っていた。
コンゴーにとっては、それだけの話だった。
アマギがどう受け取るか。そのことを考えていなかったと、ここで気づく。
「チッ、話も通じねぇのか。女を見捨てただけあって、聞いてた以上にクソ野郎だな!」
アマギの視線がギンジへ移る。
そのことに、一瞬だけ安堵した自分にコンゴーは気付いた。
無意識に一歩、後ずさる。
代わりにギンジが前へ出た。
「おい! だったらタイマンだ! 俺がサシで相手になってやる! 素手で勝負しろよ!」
その言葉に、アマギの口の端がわずかに吊り上がる。
そして、返ってきた言葉はさっきと同じだった。
「待ち伏せ野郎が、勝手な事ほざいてんじゃねーよ、カス」
たったひと言、最後に付け加えて。
その一言で、ギンジは激昂した。
アマギへ向かって突進しようとして――
出来なかった。
アマギの担いでいたバールが、ギンジの下半身へと叩きつけられる。
踏み込みは止まり、身体が折れた。
そのまま逆手に構えていたトンファーの先端が、コンゴーへと向く。
コンゴーが見えたのは、そこまでだった。
「『エアハンマー』」
その言葉と同時に、視界が暗転した。
顔面へ。
鼻っ柱へ、叩きつけられる。
叩きつけられた風の衝撃が、身体を勝手にくの字へ折り曲げる。
真っ暗な視界の中で、
「タイマンだって言ってんだろ!」
という、ギンジの上ずった叫び声だけが聞こえた。
次に耳へ届いたのは、
「知るか、待ち伏せ野郎」
という、アマギの冷たい声。
続いて、鉄の棒が風を切る音。
それを最後に、コンゴーの意識は遠のいた。
※集英社のコンテストに参加している関係もあり、月末に前倒しで何話か更新する予定です。
変則的な投稿になりますが、よろしくお願いいたします。
コンテスト終了後は、少し更新をお休みし、今後の構想を練る時間に充てようと思っています。
また、せっかく夏のコンテストもいろいろ開催されていますので、久しぶりに新作にも挑戦してみようと考えています。
落ち着きましたら、その後は週末(土日0時)更新を目標に進めていく予定です。
難しい週もあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。




