9-16 卒業後の同窓会 16
僕は電車に揺られて高校の最寄り駅まで向かっていく。席に座っていると眠気が襲って来るが、自分は電車の中だと眠れないタイプなのでスマートフォンで通知を確認していた。なっちは眠ってしまっているようだ。
「次は終点、降り口は右側にございます」
電車の路線上は終点ではないが、今乗っている電車だと終点になるようだ。自分はなっちを起こし、エスカレーターで改札の方まで向かって行った。
「改めて懐かしいね」
なっちはそういった。昔あったミスドも今は別の店舗になっているようだ。自分は改札を出て、家の方まで歩いていくことにした。
建物の上にある観覧車が見える。消灯しているが、営業時間中は冬はオレンジに、夏は緑に光っているものだ。自分は観覧車があるビルと、駅前のビルの間を抜けて歩いた。
「寒くない?」
なっちはそう言った。僕は途中にあった店でカイロを買った。なっちは特に冷えやすいお腹に張っていたようだ。
パチンコストアの横を抜けるように歩くと、ローソンや区病院がある場所まで辿り着いた。なっちはコンビニで何かお酒でも買わない?と提案した。僕はその提案に乗って、同じ種類の氷結を2つ買って、コンビニの近くのベンチで乾杯した。
こうやって歩いているとなっちと付き合っていた頃のことを思い出す。周りに誰もいないので自分はアイドル活動のことに聞いてみた。
「もう無理かもね、実質的に引退ってことになるかも」
彼女はそういった。大学院を卒業したら社会人として働くことを考えているようで、アイドルとして活動していた時期とは別の人生を進みたいと思っているようだ。
「高校1年生の頃、普通の高校生として生活を送りたいって言ってたよね」
自分は彼女が言っていたことを聞いてみる。彼女はその感覚に近いのかもしれないと言っていた。
寒さのせいかお酒のせいかはわからないが、彼女の顔が赤くなって行っているのを感じる。彼女も妙に饒舌になっているようだ。
「社会人になった時は元アイドルだと気づかれないといいけどね」
彼女はそう言った。僕は彼女に対して、僕以外に気づかれたことがあるかと聞いてみたが、ないと言っていた。自分も決してローカルアイドルに詳しいタイプの人間ではない。気づいていなかった可能性も十分ある。
「気づいてなかったら高校生活どうなってだんだろうね」
彼女はふとそういった。
「軽音部に入ろうと思ったのはなっちがきっかけじゃなかったから、案外同じような未来になってたのかもしれないね」
僕はそう答えた。




