第2話:違いと、優しさと
はじめまして、この作品を読んでいただきありがとうございます!
この物語は——
「動物とモフモフが大好きな人間の少年が、獣人だらけの学園で過ごす日常と成長」を描いた作品です。
まずは簡単に登場人物の紹介です。
■ 結城 蒼
本作の主人公。動物やモフモフが大好きな普通の男子生徒。
猫カフェにいたはずが、気づけば獣人だけの世界へ。
この世界で“たった一人の人間”。
■ レオナ(ホワイトタイガー)
大胆で落ち着いた王子様系。冷静で頼れる存在。
蒼のことを興味深く見ている。
■ ルナ(狼)
元気でポジティブ、少し能天気。
人懐っこく、蒼に一番最初に話しかけた存在。
■ ガルド(ライオン)
フレンドリーで目立ちたがり。
強さにも自信があり、蒼を気に入っている。
■ シオン(黒豹)
クールで真面目。観察力が高い。
冷静に蒼のことを分析している。
■ モコ(熊)
無気力で子供っぽいマイペース系。
モフモフ好きで、蒼に興味津々。
個性豊かな獣人たちと、人間である蒼がどんな関係を築いていくのか——
ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!
「よし、今日は実技だ」
教室に入ってきた教師の一言で、空気が少しだけ引き締まった。
「この学園では知識よりも“身体能力”を重視する。外に出るぞ」
案内されたのは、広いグラウンドだった。
見た瞬間、なんとなく嫌な予感がする。
「まずは軽く走る。準備運動だ」
教師の合図と同時に、全員が一斉に走り出した。
「——はやっ!?」
思わず声が出た。
速いとかいうレベルじゃない。
地面を蹴る音が違う。風の切り方が違う。
気づけば、あっという間に置いていかれていた。
「はっ……はっ……」
息が上がる。
足が重い。
「蒼、大丈夫かー?」
余裕そうに隣を走るルナが声をかけてくる。
「大丈夫……じゃない……」
「だよな!」
なぜか楽しそうだ。
なんとか一周走りきった頃には、もう立っているのもやっとだった。
「次は跳躍」
教師の声が追い打ちをかける。
用意されたのは、かなり高いバー。
「え、あれ越えるの?」
「当然だ」
いや無理だろ。
そう思っている間に、ルナが軽々と跳んだ。
ガルドも、シオンも、レオナも。
モコですら——
「……よいしょ」
という感じで普通に越えた。
「嘘だろ……」
「蒼、いけるか?」
レオナが振り返る。
「……やるだけやる」
助走をつけて、思い切り踏み込む。
——結果。
「いってぇ……」
バーに引っかかって、そのまま転んだ。
「ははっ!やっぱ人間すげぇな!」
ガルドが笑う。
「すげぇの意味違うだろ……」
「無理すんなよー」
ルナが手を差し出してくる。
「ありがと……」
引っ張られて立ち上がる。
「……やはり、身体能力はかなり低いな」
シオンが冷静に分析する。
「人間はここまでとは」
「でもさ」
ルナが笑う。
「別にそれでもいいじゃん」
「そうだな」
レオナも頷く。
「戦うための力だけが全てではない」
「気にすんなって!」
ガルドが背中を軽く叩く。
「……ん」
モコも小さく頷いた。
なんだろう。
悔しい気持ちはある。
全然できないし、ついていけない。
でも——
嫌な感じは、しなかった。
その後も授業は続いた。
走って、跳んで、投げて。
結果は全部ボロボロだったけど——
誰も笑わなかった。
それどころか、声をかけてくれた。
それだけで、少し救われた気がした。
——授業が終わる頃には、体は限界だった。
「おつかれー!」
ルナが元気に手を振る。
「今日はすごかったな!」
「いや、ダメな意味でだろ……」
「でも面白かったぜ」
ガルドが笑う。
「……興味深い」
シオンが小さく呟く。
「無理はするな」
レオナが一言だけ言った。
「……またな」
モコは眠そうに手を振った。
それぞれ寮へと帰っていく。
俺も案内された寮へ向かうことにした。
歩いていると、少しずつ静かになっていく。
「ここか……」
目の前には、学生寮の扉。
その前に——
一人、熊の獣人が立っていた。
「……あ」
目が合う。
「お前……人間?」
低く、ゆっくりした声。
「そうだけど……」
じっと見られる。
少し間があって——
「……変だな」
「え?」
「怖くないのか?」
どこか不思議そうな顔だった。
少し考えてから、答える。
「うーん……」
寮の中を思い浮かべる。
教室でのことを思い出す。
「モフモフだし」
「……は?」
「可愛いから」
一瞬、沈黙。
そして——
「……変なやつだな」
小さく笑った気がした。
そのまま、扉が開く。
——獣人だらけの学園生活、二日目。
まだまだ、知らないことばかりだ。




