第1話 目覚めたら、獣人だらけの学園でした
はじめまして、この作品を読んでいただきありがとうございます!
この物語は——
「動物とモフモフが大好きな人間の少年が、獣人だらけの学園で過ごす日常と成長」を描いた作品です。
まずは簡単に登場人物の紹介です。
■ 結城 蒼
本作の主人公。動物やモフモフが大好きな普通の男子生徒。
猫カフェにいたはずが、気づけば獣人だけの世界へ。
この世界で“たった一人の人間”。
■ レオナ(ホワイトタイガー)
大胆で落ち着いた王子様系。冷静で頼れる存在。
蒼のことを興味深く見ている。
■ ルナ(狼)
元気でポジティブ、少し能天気。
人懐っこく、蒼に一番最初に話しかけた存在。
■ ガルド(ライオン)
フレンドリーで目立ちたがり。
強さにも自信があり、蒼を気に入っている。
■ シオン(黒豹)
クールで真面目。観察力が高い。
冷静に蒼のことを分析している。
■ モコ(熊)
無気力で子供っぽいマイペース系。
モフモフ好きで、蒼に興味津々。
個性豊かな獣人たちと、人間である蒼がどんな関係を築いていくのか——
ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!
柔らかい。
温かい。
ふわふわで、ずっと触っていたくなる。
ここは俺——結城蒼が一番好きな場所、猫カフェだ。
「……やっぱ最高だな、モフモフ」
膝の上で丸くなっている猫の喉が、ゴロゴロと小さく鳴る。その振動がじんわりと伝わってきて、思わず頬が緩んだ。
嫌なことも、不安も、全部どうでもよくなる。
こうして動物に囲まれている時間だけは、心から落ち着けた。
——その時だった。
ふいに、店内の空気が変わった。
「……え?」
さっきまでくつろいでいた猫たちが、ぴたりと動きを止める。
そして、一斉にこちらを見た。
次の瞬間。
視界が、白い光に包まれた。
気づいた時、俺は立っていた。
「……は?」
そこはもう、猫カフェじゃなかった。
見知らぬ教室。
見知らぬ景色。
そして——
「え、ちょ、なにこれ……」
周りにいるのは、人じゃない。
耳がある。尻尾がある。牙が見える。
……獣人?
夢かと思った。
でも、風の感触も、足元の感覚も、全部リアルすぎる。
「新入生、入ってきなさい」
低く落ち着いた声が、教室の前から響いた。
振り向くと、そこには——獣人の教師が立っていた。
逃げる間もなく、俺は教室へと足を踏み入れる。
ざわ……と、空気が揺れた。
全員の視線が、俺に突き刺さる。
「静かに」
教師が手を上げると、一瞬で教室は静まり返った。
「本日からこのクラスに加わる新入生だ」
そして、俺の方を見る。
「彼の名は——結城蒼」
小さく頷くしかなかった。
「そして……」
教室の空気が、少しだけ緊張する。
「この世界において、たった一人の——人間だ」
……え?
ざわっ、と今度はさっきより大きく教室が揺れる。
「人間!?」
「マジで!?」
「初めて見た……」
ひそひそ声が飛び交う。
俺の方が聞きたいんだけど。
「詳しい説明は後にする。ひとまず席に着きなさい」
教師に促され、指定された席へ向かう。
座った瞬間、視線がさらに集中した気がした。
「なぁなぁ!」
すぐに、声が飛んできた。
振り向くと、五人の獣人がこちらに集まっていた。
「人間って本当にいたんだな!」
最初に話しかけてきたのは、元気いっぱいの狼の獣人。
「俺、ルナ!よろしくな!」
「いやいや、落ち着けルナ」
隣でため息をつくのは、黒豹の獣人。
「私はシオン。騒がしくしてすまない」
落ち着いた声。クールな雰囲気だ。
「へぇ〜、人間かぁ。面白いじゃん」
ニヤッと笑ったのはライオンの獣人。
「ガルドだ。特別扱いしてくれてもいいぜ?」
「……別に特別扱いする必要はない」
淡々と言ったのは、ホワイトタイガーの獣人。
「私はレオナだ」
その立ち姿は、どこか王子のような余裕があった。
「……ねむい」
最後に、小さな声。
熊の獣人が机に突っ伏している。
「モコ……あとで話す……」
ゆるすぎる。
「すげぇな……」
思わず笑ってしまった。
さっきまでの不安が、少しずつ消えていく。
「怖くないのか?」
レオナがじっとこちらを見る。
「普通、驚くと思うが」
「いや……驚いてるけど」
正直に答える。
「でも——」
五人を見渡す。
「動物……好きだからさ」
一瞬、全員がきょとんとした。
そして——
「ぷっ、なんだそれ!」
ルナが笑い出す。
「変なやつだな、お前!」
「……だが、悪くない」
シオンが小さく呟いた。
「気に入ったぜ」
ガルドが肩を組んでくる。
「よろしくな、人間!」
気づけば、自然と笑っていた。
——こうして俺の、獣人だらけの学園生活が始まった。
昼休みのチャイムが鳴ると同時に、教室の空気が一気に緩んだ。
「蒼!昼メシ一緒に食おうぜ!」
ルナが勢いよく立ち上がり、俺の机を叩く。
「強引すぎるだろ……」
苦笑しながらも立ち上がると、自然と五人が集まってきた。
教室の端の方、窓際の席に移動する。
「ほら、ここ座れ」
ガルドが自分の隣をポンポンと叩く。
「ありがとう」
腰を下ろすと、それぞれが弁当を取り出し始めた。
「……でかっ」
思わず声が出た。
一番目を引いたのは——モコの弁当。
箱というより、もはや“塊”だった。
二段、三段どころじゃない。山みたいに積まれている。
「……これ、全部食べるのか?」
「……うん」
眠そうな顔のまま、こくりと頷くモコ。
「熊だからな」
レオナが淡々と補足する。
「エネルギー消費が違う」
「いや、レベルが違うだろ……」
「俺のも見てくれよ!」
ルナが自分の弁当を広げる。
中身は肉が多めだが、サイズは意外と普通。
「狼は動くからな!バランス重視だ!」
「なるほど……」
「俺はこれだ」
ガルドの弁当は見た目がやたら豪華だった。
肉、肉、肉。しかも全部大きい。
「主役は肉だろ?」
「確かにライオンっぽいな……」
「だろ?」
満足げに笑う。
「……私はこれ」
シオンの弁当は、見た目が整いすぎていた。
彩りも完璧で、無駄がない。
「栄養と効率を考えている」
「性格出てるな……」
「私はシンプルだ」
レオナの弁当は無駄がないが、どこか品がある。
肉と野菜のバランスも良い。
「過不足ない食事が一番だ」
「なんか……王子様みたいだな」
「……否定はしない」
少しだけ口元が緩んだ気がした。
「で、お前は?」
全員の視線が俺に集まる。
「俺はこれ」
コンビニで買った普通の弁当を出す。
一瞬の沈黙。
「……ちっさ」
ルナが率直すぎる感想を言った。
「少ないな」
レオナも頷く。
「足りるのか?」
シオンが真面目に聞いてくる。
「人間ってそんなもんなのか?」
ガルドが覗き込む。
「いや、普通だと思うけど……」
なんかちょっと恥ずかしくなってきた。
「なぁなぁ!」
ルナが身を乗り出す。
「人間ってさ、どんな生活してんの?」
「肉食うのか?狩りとかすんのか?」
ガルドも興味津々だ。
「狩りはしないな……」
「え、しないの!?」
「しない。店で買う」
「店!?」
反応がいちいち大きい。
「じゃあさじゃあさ!」
ルナが止まらない。
「走るの速いのか?」
「いや、普通」
「耳とか尻尾ないの不便じゃね?」
「それが普通なんだよ……」
「……匂いは?」
シオンが静かに聞く。
「人間は、感覚が鈍いと聞く」
「まぁ……たぶんそうだと思う」
「弱いのか?」
レオナの視線が真っ直ぐ向く。
少し考えてから、答えた。
「たぶん……ここでは弱いと思う」
一瞬、空気が止まる。
「でも」
すぐに続けた。
「だからって怖いとは思ってない」
「……ほう」
レオナの目がわずかに細くなる。
「だってさ」
笑って言う。
「みんな、普通に話してくれるし」
一拍。
「……変なやつだな、お前」
シオンが小さく呟く。
「ははっ!気に入った!」
ガルドが笑う。
「いいじゃんいいじゃん!」
ルナも笑う。
「……悪くない」
レオナが静かに言った。
「……もふもふ」
モコがいつの間にか俺の腕を触っていた。
「ちょ、なにしてんの!?」
「……人間、めずらしい……」
その一言で、全員の目が輝いた。
「ちょっと待て、俺も触る!」
「順番だろ」
「列作れ列!」
「いやちょっと待てって!!」
気づけば、囲まれていた。
でも——
嫌じゃなかった。
むしろ、少し嬉しかった。
ここは知らない世界で、俺は一人だけの人間で。
それでも——
「……悪くないな」
自然と、そう思えた。
第1話を読んでいただきありがとうございます!
異世界に来て、獣人たちと出会い、少しずつ馴染み始めた蒼。
ここからどんな学園生活が待っているのか——
次回は「授業回」です!




