Page 85 魔王軍登城
ガレオン城内にある円卓の間…ここは人類史における重要な話し合いが行われてきた場所。そこにまた一つ、新たな歴史がこの日、刻まれる。
人と魔族の戦後の話し合いが行われようとしていた。
魔王軍からその知らせが来たのはガレオンが降伏を宣言し、ドワーフもそれに続いた1週間後のことであった。
「ガレオン様。魔王軍から連絡です。」
王の間に大臣の部下が片手に開けられた封書を手に入ってくる。
降伏宣言したとは言え、城内では警戒がまだ解けておらず、その知らせに部屋中が静まり返る。
「魔王はなんと寄越したのだ?」
王は玉座から少し前のめりになり問う。ここ数日…というより戦いが始まってからまともに睡眠など取っていなかったため、身体はやつれ、目の下にくまがはっきり浮かんでいる。
「ハッ!魔王軍と同盟軍で戦後の話し合いを行いたいとのそちらに出向きたいと。日取りはこちらの都合に合わせると…。」
「なるほど…。そうか。ならば1週間後にと返事をしてくれ。」
勝者の余裕か?わざわざ向こうが来てくれるなとどは。まったく。
王は静かに天井を見上げた。
この先の人類の未来を憂いながら、そして自らの無力を嘆きながら。
人類の王がそんな悲嘆に暮れているとはつゆ知らず、魔王達は1週間後。つまり今日、ガレオン城に現れたのだった。
「これが…魔王軍か…。」
王は自室から城門に目をやると圧倒される。
空を覆い尽くすほどのドラゴンの群れにありとあらゆる魔獣の群れ、そして一糸乱れぬ隊列を組む獣人や亜人の兵士。そしてその中央に佇む一人の魔人…。
そんな中、その軍の一番前にいた禍々しい鎧を身に着けた頭の両から角を生やした牛頭の屈強な兵士が門の前で控えていた大臣に近寄った。
「遅くなってすまない。私は魔王軍直轄の第一近衛兵団を任されているアグリッパという。ガレオン王との戦後についての話し合いのため参った。」
「よ、ようこそおいでいただきました。こちらにございます。」
大臣が城門を開けるように兵士に指示すると重く軋んむ音を鳴らしながら扉は開いた。それに合わせるように魔王軍もその門から魔王がいるところまで道を作るように両脇に避け、片膝をつき、頭を下げる。
ガシャン、ガシャン…とこれだけ多くの生き物がいるはずなのに静まり返った空間で魔王が歩くたびに鳴る鎧の音だけが響いた。
王はその光景に息を呑む。
あれほど憎らしい相手であったはずなのに、ガレオンの心はただ歩いているだけの魔王に奪われていたのだった。




