Page 84 賢い選択
「王!王!!」
何度か兵士が叫びながら気絶しているビバロの頬を叩くとようやく王はゆっくりと上体を起こす。
「お、おお…。俺は一体…。」
混濁する意識の中、ビバロはひとつひとつ記憶を整理し、自分に何が起きたかを思い起こす。
「そ、そうだ!俺は戦っていて、それで思い切り叩かれて…」
そこまで思い出して、大剣をぶつけられたお腹付近を確認するが、痛みはなかった。
「無断で申し訳ないが、傷は魔法で癒やしておきましたよ。ビバロ王。」
声の主はエルフの長、レイノルフ。そしてその横には自分を吹き飛ばしたあの少女が笑っていた。
「はぁ…やるな、お嬢ちゃん。見たところダークエルフで間違いなさそうだが…あんたが魔王の手下なのかい?」
「まぁ…そうなるのかな?私は魔王様の直轄近衛兵団の団長を務めているレラよ。」
その名前と強さからビバロは更に古い記憶が呼び起こされた。
「まさか…あんたがあの【殲剣】なのかい?」
「そうそう。なんだ。私のこと知ってたんじゃない。」
強さを是とするドワーフ達にとってその名は半ば伝説のような存在である。ビバロはすぐに姿勢を正し、その部下の兵士達も膝をつく。
「まさか、英雄といわれるレラ様と刃を交えることが出来るとは、このビバロ、恐悦至極に存じます。」
深々と頭を下げる彼らにレラは思わずたじろぐ。
「やめてよー。ねえ、レイノルフからもなんか言ってよ。」
「ビバロ王よ。少しお話を聞いていただけますか?」
「ああ。いいだろう。」
こうしてビバロ王達はあの屋敷に案内されることになる。
「では…改めてだか、なぜ魔王にくだることを選んだのだ?」
座るなり開口一番、ビバロは問いただす。レイノルフは机に置かれた飲み物に口をつけてから状況を説明をし始める。
一連の経緯を聞くとビバロは何とも言えない表情を浮かべた。
「なるほどな…。そうか。まぁ納得できる部分はあるが…。まぁ、お前たちが仲直りしたのはいいことなんだが…。いやあ…まあしかし。」
「ビバロ王よ。どうじゃ?ここはそなたたちも我々と和平を結ぶというのは?」
急に現れた老人にドワーフは驚き、思わず斧を手に取る。すぐにザルディンは頭を下げ、自己紹介を始めた。
「名乗るのが遅くなってすまぬ。ワシは魔王様の使いの者でザルディンと申す。先ほど説明があった通り、我々は魔道具がどうしても必要なのじゃ。」
「そうか。あんたがレイノルフ殿が言っていた…。本当に人間なのだな。」
斧をまた横に置いたもののまだその目は警戒心を解いていない様子である。
「魔王は本当に勇者を生み出し自分と戦わせるなどといっておるのか?」
「そうじゃ。じゃが…我々だけではこの願いを叶えることはできぬ。どうじゃ?我々と手を組むというのは?」
しばらくビバロは考えたが答えは出たようた。
「仕方ない。戦い続けるよりその提案に乗るほうが賢い選択のようだな。正式には国に持ち帰って議会と話さなければならぬが魔王の軍門にくだるとしよう。」
そう言ってビバロは国に戻り、ドワーフは同盟軍から撤退を宣言。同盟軍は瓦解する。そしてガレオン王が降伏した後にドワーフたちも魔王に降伏の意思を示すのだった。




