Page 82 ドワーフの王
「よくぞ参られた。ビバロ王よ。」
「ああ、まったく。驚いたぞ。レイノルフ殿。」
門を隔て、二人の王が対峙する。
無骨をそのまま体現したような髭面の大柄な戦士。彼がドワーフの王ビバロである。
彼の周りの兵士も同じく屈強な体に飾り気のない鎧をまとっているが、ビバロに比べると一回りは小さい。
「おぬしに聞きたいことがあるのだ。あれは何の冗談だ?」
低く、怒気を含んだ声でエルフの長に凄む。門兵達はその圧に思わずたじろぐが、レイノルフは涼しい顔で受け流す。
「冗談?一体何のことをおっしゃっているのでしょうか。」
「しらばっくれるんじゃねえ!」
ビバロは手に持った大きな斧の柄を先を力強く地面に打ちつける。
「てめぇらエルフが魔王軍に降伏したなんて言うから俺が直々に来たのだ!これ以上、俺を愚弄すると言うのなら…お前から叩っ斬ってもかまわねぇんだぞ!」
「それは…困りますね。そう興奮されては落ち着いて話ができません。しかしその昂りを鎮めるのも難しいとは思いますので…どうでしょう?ここは一度全て吐き出してから話すというのは?」
あまりに涼しい表情でレイノルフが話すのでついにビバロの怒りは頂点に達した。
「ああ。そうだな…。もうこの斧は納められねぇなぁ。覚悟しろおおお!」
ビバロが斧を担ぎ上げ、レイノルフに襲いかかり、その刃を突き立てようと力一杯、振り下ろし当たるかと思った瞬間、金属がぶつかり合う音が森に鳴り響いた。
「戦うのは私の仕事なんだよね。ちょっと相手してよ。」
その小柄な身にはアンバランスな大剣でビバロの一撃を受け止めたのはレラだった。レラは振り払い、ビバロの刃は地面に刺さる。そして飛び上がって落ちる力を利用して大剣を振り下ろす。
ビバロは斧から手を離しバックステップすることでギリギリ、その一撃を避けたが、斧から距離ができてしまった。取りに行くにも隣には肩に大剣を担いだダークエルフの少女がこちらを見ている。
「あっ?もしかして警戒してる?そっか。じゃあこれ返すね。」
そう言って地面に刺さっている斧を片手で軽々と持ち上げ、ビバロに投げ返す。それを受け取ったビバロは少女がその見た目からは考えられないほどの戦士だと感じ取っている。その心には先ほどまでの怒りではなく。強者と戦いたいという戦士の純粋な欲求で満たされていた。
「悪いな嬢ちゃん。だが、ダークエルフがいるってことは本当にエルフは魔王と手を組んだってわけか…。そうかそうか。ならこの戦争はもう終いだろうなあ。」
ビバロは思わず口がニヤける。
「なら、もう難しいことは関係なく戦ってもいいってことだな!嬢ちゃん…。悪いがおじさんの相手してもらえるかい?」
「へえ〜。いいよ。」
「かたじけねぇな。」
ビバロは少女に斧を振り上げ、襲いかかった。




