Page 80 和平締結
レイノルフの告白後、しばらく沈黙が続いたがここでザルディンが口を開く。
「では…わだかまりも解消されたのじゃ。どうですかな?我々と和平を結ぶというのは?」
これにはレイノルフも難しい顔をする。
少し考えを巡らせてから自分の考えを伝え始めた。
「そうだな…。我々の間はそうかも知れないが、民衆がそれを良しとするかは別の問題だ。もちろんわたしとしてはもう戦う理由もないわけだが…。」
「レイノルフの言うこともわかるよ。こっちだってどう思うかわからないし。」
レラも同じく難しい顔をしている。普段天真爛漫な彼女がこんか顔をするのだから問題は根深いようだ。
「あのう。俺が口を出すのも何だとは思うのだが…。それではいつまで経ってもお互いの溝は深まらないのでは?」
アレスが少し申し訳なさそうに二人に問いかける。
「いや…。二人はこうやって理解できたんだからもう少し、自分たちの一族を…その…信じてもいいのではと。もちろん問題は起きるかもしれないが、トップが手を取り合っていけば、いずれエルフもダークエルフも以前のように良好な関係を結べるのではないかと…。」
だんだんと声が小さくなるアレスに対して二人の長は顔を見合わせる。そして納得したかのように顔の表情を緩めた。
「確かに…。そうかもしれないな。アレス殿。さすが英雄と言われるだけありますね。わたしは業を背負うと言っておきながら、それに縛られ、過保護になってしまっていたのかもしれない。」
「そうだね。私たちが信じて行動しなきゃ何も始まらない。魔王様もそうやって今、動いえるんだから。」
そして二人は体ごと向き合った。
そこへザルディンが向き合う二人の中間ほどへ移動し問いかける。
「では改めて…。エルフの長、レイノルフ。ダークエルフの長、レラ。両者はお互いの一族を代表してここに和解することを誓うか?」
「「はい。」」
「よろしい。ではこの魔王軍相談役、ザルディン・ロードがこの和平の証人となろう。」
二人は手を取り合い、周りも拍手や歓声、エルフの戦士は泣きながら笑う者もいた。
ここに長きにわたる軋轢が確実に修復に向かうことになった。
レイノルフはレラから手を離し、ザルディンに視線を向け、一つの疑問をぶつけた。
「ところでザルディン殿。連れてきた兵達はわたしの目を欺く為だけに連れてこられたのか?」
それに対してザルディンは笑いながら答える。
「さすがエルフの長じゃ。確かにもう一つ連れて来た意味はある。それはの、和平締結後の復興の手伝いじゃよ。」
「復興の手伝い?」
「ああ、そうじゃ。そちらはこの戦いでだいぶ疲弊しておると思っての。実際ここへ来てからも働き盛りの者は門兵とそこにおる者たちくらいじゃ。それに兵舎があるというのに我らの軍をそこで休ませることができるほど空いとるということは…手が足りておらぬのではないかの?」
「では…初めからこの交渉がうまくいくという前提で来られたということか?」
「さぁ…。それはどうじゃろうな?」
やれやれといった表情でレイノルフは老人を穏やかな目つきで見つめた。




