Page 77 エルフの遺恨
被害は小さくはなかった。
たまたまその村の近くにいたレラの側近達が騒動を聞きつけ駆けつけた時には村は半壊。命を落とした者もいた。側近達は魔道具で襲いかかってきた人間に苦戦したものの何とか捕縛。
そして魔道具がエルフの協力により製作されているとその人間達から聞き出したのだった。
レラはダークエルフの族長として激怒した。
エルフが人族やドワーフ達と交流し、魔道具を作った。そしてそれを持ってダークエルフを襲ったという事実だけでも彼女を怒らせるのには充分であったが、この村の存在をエルフ達から聞いたその襲撃者が語ったことでその怒りは頂点に達した。
レラはすぐさま当時のエルフの長であったダウスティンに抗議をしたが、自分達は開発に協力しただけでそれは預かり知らぬところと抗議は跳ね除けられた。それだけでなく、村を教えた事実などないとまで言い切ったのである。
レラは怒りに打ち震えながらその場を去り、エルフと袂を分かったのだった。そしてその後、レラ達は魔王軍に入った。
それが事の顛末であった。
「つまり、その確執さえ解決できれば和平は可能ということですかな?」
「そうだな。だが、そんなこと出来るとは到底思えないな。先代はその後、病で亡くなり、このわたしがエルフを率いることになった。当時どのようなやり取りが行われたかは分からぬがな。」
「では直接話してみてはいかがじゃろうか。」
そう言うとザルディンは立ち上がり、後ろに控えていた兵士の一人に近づき、手をかざした。
「【レリーズ】」
唱えたのは解除魔法。その瞬間、その兵士はまるで全身を覆っていたベールがめくれていくように姿を変える。そして姿を現したのはダークエルフのレラであった。
「バカな!どうやって我らの目を誤魔化したというのだ!?」
レイノルフがこれまでになく感情を表に出し、立ち上がった。
「一種の応用じゃよ。」
そう言って、ザルディンはレラの服の間から魔障壁の玉を取り出した。
「魔障壁で体を覆い、外から魔力を感知できなくした上で変身魔法をかけたのじゃよ。さらに眠らせて意識を無くし、自動行動の魔法をかけることで偽装の完成じゃ。まあこんなことは一人分しかできぬがな。」
「なんということだ…。」
ぬかった。
もちろんついてきた兵士にも注意は向けていたが、特段怪しい動きもなく、魔力が感知できなかったのも人族には魔力を持たない者が多いがゆえ、気にはしなかった。それよりもアレスが本物かどうかとその横を歩く、巨大な魔力の塊であるこのザルディンに集中していた。
そしてこの応接間に来てからも隠密で動いているという兵士の動向を探りながら、ザルディンの話や、その所作に注目していたがゆえ、兵士にまで気を回していなかったのだった。
レイノルフが動揺していると意識を取り戻したレラが目を開いた。
「久しぶりレイノルフ。ずいぶんと偉くなったみたいだね。」




