Page 76 最後の課題
「魔王と戦った?アレス殿はドラゴン達と戦ったのではないか?」
「ああ、それに関してだが…俺達はその戦いで一度死んで黄泉の国にいたんだが…」
アレスはその後の経緯をレイノルフに話した。黄泉の国で保護されていたこと。そこで魔王と戦ったこと。魔王からこの侵攻の目的などその全てを偽りなく説明した。
「そんな馬鹿げた理由で世界を無茶苦茶にしたというのか…やはり魔王は魔王だな。」
レイノルフの語気が強まり、アレスは焦った。もしや自分が口を出したことで交渉が決裂してしまうのではないかと背中に嫌な汗が流れた。
「だが、確かにその説明ならばこれまでの侵攻の不可解さ、それに魔王軍が作っていると報告を受けている新たな街や村の説明もつくということか…。アレス殿、一つ聞きたいのだが、魔王は強かったか?」
「あれは強いなんてものじゃなかった。今の我々では同盟軍が束になっても足元にも及ばないと思う。俺達では魔王の力の底どころか氷山の一角すら見ることが叶わなかった。比べる秤が違いすぎる。」
「アレス殿にそこまで言わせるとは…。なるほど。」
レイノルフの何かを悟ったような諦めたようなため息をつき、眉間のシワも心なしか緩んだように見える。
「まだ不可解だと感じる部分はあるが、確かに和平を結ぶという理由の筋は通る。だが、魔王軍にはダークエルフがいるだろう。奴らがいる限り、エルフが協力することはできぬのだ。すまないな。」
ザルディンにとってエルフと和平を結ぶ為の最大の問題がエルフとダークエルフの間の不仲であると分かっていた。そしてそれ以外の問題がクリアした今ならばこの不仲を解決すれば和平への道は開かれるとザルディンは確信を得た。
「たしか…不仲になったのは四百年ほど前のことじゃったかな?」
「ああ、わたしが里長に就任するほんの前のことだ。」
ザルディンはレラとオルの二人から二つのエルフが不仲になった原因を聞き出していた。
理由は些細なことだったと言う。当時、まだ魔王軍の配下になる前のレラがダークエルフの長、そしてレイノルフの先代のエルフの長ダウスティンの間で意見が割れたことに端を発する。
それまではお互いそれなりに友好的であり交流もあったが、それが起きた。
エルフが森から出て他種族と交流することを選んだのだ。
ダークエルフ側は他種族との交流に反対的であったが、エルフ達は人やドワーフと繋がりを深めていった。それはエルフの持つ探究心の強さがそうさせたのだが、保守的なダークエルフはそれを良しとしなかった。それでもレラはエルフの取った道を理解はできなかったが、受け入れ、それぞれの道を歩めば良いと考えていた。
そして事件が起こった。
エルフの作った魔道具がダークエルフの村を襲ったのだ。




