Page 75 ベストなタイミング
(いずれどちらかと交渉せねばとは思っておったが、別の目的が出来たとはいえ、エルフとこのタイミングで交渉できたのは上々じゃの。)
ザルディンはあの日の会議で自分が話したことを思い出しながら、目の前のエルフの里長、レイノルフと対峙する。
まだまだ疑いの目はかけられてはいるが、事実このように魔王の使いがエルフのトップと話していること自体が本来ならあり得ない。
通常なら、話すにしても魔王を連れて来いと言うくらいにはプライドの高い種族なのだから。
(それほど疲弊しているということじゃな。気の毒じゃが、これも作戦がうまくいった証というわけじゃ。)
現在、数字だけで見ると最も多くの被害を出しているのは人族であった。しかし割合でみると人族は街や人の被害は全体の五割ほどなのに対し、ドワーフは全体の七割、エルフに関しては八割を失っていた。
エルフの被害で言うと人口のうち兵士のうち七割を失い、現在は里の警備と同盟軍に魔導士軍として百名ほどしか戦える者は残っていなかった。
街に関してはこの里のほか、人やドワーフとの交易として栄えていた村や街は全て滅ぼされ残ったのはこの里だけである。
つまり、エルフは窮地に立たされているということになる。
「どうじゃろうか?和平を受け入れてもらえませんじゃろうか?」
「そうだな。一考の価値はあるが、まだ足りない。納得できる理由を教えてもらいたいな。なぜエルフと今さら和平など申し込まれるのか?魔王軍であればこの里を消し去ることなど容易いことではないか。それをわざわざ和平するとは…何か裏があると思わざるを得ない。」
レイノルフは率直に疑問をぶつけた。彼も腹の探りあいをして無駄に時間を使うよりその方がよっぽど有益だと判断したからだった。
「そうじゃの。もちろん理由はある。それはエルフとドワーフしか作れぬ魔道具の製作に協力してほしいのじゃ。」
「魔道具。たしかにそれは我らの協力が必要だ。だが、それを何のために使うのだろうか?そのようなものを使わずともそちらには優秀な魔道士もいるだろうに。」
「我々が使うのではないのじゃよ。魔王を討つ勇者が使うのじゃ。」
「話しが見えないな。魔王の使いのザルディン殿が魔王を討つための魔道具を作る協力をして欲しいと不思議なことを話される。」
そこでようやく、ここまでほとんど置物状態であったアレスが口を開いた。
「レイノルフ殿、信じてもらえぬかもしれんが、本当のことだ。魔王は自分と同等に戦える勇者の誕生を望んでいる。俺が直接魔王から聞いたことだ。間違いない。」
「魔王と…話しただと…?」




