Page 71 読み合い掛け合い
アレスの額に嫌な汗が流れた。
元々、こういった駆け引きが不得意な彼はすぐに表情に出てしまう。それをレイノルフは見逃さない。
「どうされましたか?アレス殿。あまり具合が良くない様子。まだ体調が戻っていないのか、はたまたここまで来るのに疲れましたかな?それとも…何かやましいことがあるのですかな?」
「い、いや。まさかそんなことは。だが、レイノルフの言う通り、疲れが出たやもしれません。なにせ病み上がりの身。お気遣い痛み入ります。」
アレスはこの場を切り抜ける方法を考える。このままではザルディンが魔王軍の者とバレるかもしれない。
「アレス殿は怪我が治ってすぐに出立されたゆえ、まだまだ本調子ではないようですじゃ。それにワシも出過ぎた真似をしましたかの。」
「それはそれは…。我ら同盟軍の総司令にして英雄アレス殿にはこれからも軍を率いて魔王軍に立ち向かってもらわねばなりませんからね。良ければエルフの里の湯に入っていってはどうだろうか?神木の加護により身体の回復を助けてくださいますよ。」
「それはありがたい。ではそうさせてもらおう。」
「ええ、部下に案内させましょう。その間、わたしはあなたの師匠とやらとお話しさせていただきたいのですが、かまいませんよね?」
その言葉にまたアレスは思考を巡らせるが、レイノルフは続けて話す。
「そうだ。こうやってアレス殿が無事に着いたということをガレオン王に報告しないといけませんね。慈悲深いガレオン王であればアレス殿の事を心配していることだろう。なに、エルフの魔法ですぐに交信できるのでな。」
(これは完全に疑っている!)
アレスには返す言葉がなかった。
「それは無理じゃな。このエルフの里を覆うように魔障壁を張らせてもらったのでな。」
ザルディンが穏やかにレイノルフに語る。
「魔障壁だと?なんだそれは?良ければこのわたしにも分かるように説明してもらいたいな。」
レイノルフも冷静に静かに問う。ホールの緊張感はさらに張り詰めた。
「そうじゃな。あくまで試作品じゃが、ある作戦に使おうと思っておっての。この範囲ならば十分使えるから使ったまでじゃ。簡単に説明すれば、この中からは外に向かっての魔法は使えぬということじゃよ。」
ここで口を開いたのはアレスだった。
「いつの間にそんなものを!?」
「うむ。軍勢の中から数名に隠密の魔法をかけて頼んでおったのじゃよ。これをエルフの里の中に置いてくれとな。里に入ってしまえば警戒心が薄くなり、注目もこちらに向くからの。それにあの数じゃ。数人消えても分からぬよ。」
そう言って懐から白い玉を取り出しザルディンは笑うのだった。




