Page 69 森の中、エルフに出会った。
「待たれよ。これよりエルフの里である。お見受けしたところ同盟軍の方々と思われるがどういった要件で来られたのか?」
動きやすそうな鎧を着たエルフの青年が問いかける。本来エルフの里は開かれた場所なのでこういった門兵などは置いていないのだが、戦時下ということもあり警備を厚くしていた。
この問いに困ったのはアレスである。なにせザルディンからはなにも聞かされないままここまで来たのだから答えようがない。むしろこちらが聞きたいくらいである。
アレスが困っているとザルディンが三歩ほど前に出た。
「我らはガレオン八世の使者として参ったのじゃ。こちらは同盟軍総司令のアレス殿である。」
「アレス殿…?おおお!確かにアレス殿である!!ドラゴンの群れと戦い死んだと聞いていたが…。」
「あ、ああ。何とか生き延びることができてな。」
やはりザルディンの睨んだ通り、アレスの知名度は抜群の効果があった。門兵は小さな宝石を取り出し、そこに何かを確認するような事を話すとその石から詳細は分からないが言葉が聞こえたかと思うと一行を快くエルフの里へと招き入れた。
「さすがアレス殿ですな。自信があったとは言えエルフの里にまでその名が轟いているとは。これでかなり楽ができましたぞ。」
ザルディンは顔を前に向けたままボソッとアレスにだけ聞こえるような小声で感謝を述べる。
「総司令だからな。色々と表舞台に立つ機会は多かったってだけだ。それにしてもあっさり入れたな。」
同じようにアレスも小声で応える。
「我らが本物の人族であることはこの森に入ってからエルフらの魔力感知で判明してるからの。その上でアレス殿という信頼に足る人物がいればこういった結果が得られるのじゃよ。」
ザルディンが人の兵士を欲した理由がここにあった。エルフは魔力の扱いに長けた種族。それ故、魔族が人族に変身したとしても簡単に見破られるからこそ本物の人族の兵士を欲したのである。そこに地位の高い者がいればなおさら警戒心を解くのが容易くなる。
「なるほどな。だが、さすがに三万の兵士は多すぎたんじゃないか?」
「それに関しては次の作戦の為のじゃよ。」
門をくぐると広い道が奥にある一際大きな木まで続いており、その沿道には木製の家屋が建てられて一階部分は店になっており賑わっているのだった。
「すまぬが、里長の屋敷にこの人数は多すぎるのでアレス殿と数名以外はあちらにあるエルフ軍の宿舎で休まれてはどうだろうか?」
「気遣い痛み入りますのじゃ。ではそうさせてもらおうかの。」
アレスとザルディン、その他数名の兵士はエルフに連れられ里長の屋敷へと向かうのだった。




