Page 68 監視されし者
三万の規模の行軍となると本来は目立つのだが、ザルディンの魔法により誰にも見つかることなく予定していたエルフの里がある森の入り口まで来ることが出来た。
「ザルディン殿、わざわざ行軍などしなくともここで我らを復活させてから合流すればよかったのではないのか?」
アレスがいぶかしがりながらザルディンに問う。なにせ、3時間もかけて来たのだからアレスの言い分ももっともである。
「それじゃとエルフに気づかれるからじゃよ。三万の軍勢が急に現れでもしたら魔力探知に優れる彼らは警戒するじゃろうからな。」
ザルディンは笑いながら森へ入っていき、アレス達もそれに続く。
このあたりの森は本の地図でも森だったので、修整地区には含まず表面上は平穏を保っている。
「ザルディン殿…気のせいかと思うが…なんだか嫌な感じがするんだが…。」
穏やかな森の中とは打って変わりアレスや兵たちは何故か、違和感のようなものが付きまとっていた。
「そりゃ、そうじゃ。森に入ってからずっと見られているからの。」
「見られている!?」
「声が大きいのお。ワシの耳はまだ遠くなっておらんぞ?恐らく魔法による監視と…ほれ、あの辺に一人とあの辺にもう一人くらいこちらを見ているものがいるのじゃ。」
ザルディンが指差した方向を見るとその姿を見ることは出来なかったが、一瞬不自然な木の揺らぎをアレスは確認した。
「こちらがどういう意図で来たのか分からぬゆえ、どうしたものかと見張っておるのじゃよ。我らが人間であるということは向こうは分かっていおるからのお。下手に手出しできんのじゃ。エルフと人族は同盟関係にあるかの。」
「たしかに…ここに魔族がいれば向こうは排除しに来るが、なまじ魔力感知とやらで我らが全員人であると分かる為に様子を見ているということか。」
「そういうことじゃ。わざわざオールハイドなどというエルフには効かぬ魔法を使ってこちらの正体を教えているのじゃからな。しかも我らも手は出しておらぬゆえ、対処に困っている頃じゃろうなぁ。ハッハッハ。」
アレスは苦笑いするしかなかったが、この先一体何をこの老人はするつもりなのか皆目見当もつかなかった。
道中、何度か聞いたもののついにここまでその答えを聞き出せずにいたが、一つだけヒントのような言葉は引き出すことに成功した。
「まぁ、そうじゃの。アレス殿がいてくれて助かったわい。これでこの作戦の成功率が一気に上がったからの。」
(俺がいることで成功する…)
アレスは軍を率いながらその真意を汲み取ろうとしたが、もうタイムアップのようだ。
「ほれ、ついたようじゃぞ。ここがエルフの里じゃよ。」
目の前に大きな木の門が突然、軍勢の前に立ちはだかるのだった。




