Page 67 語り語らせ
「一つ聞いてよいか?」
「良いとも。まだまだエルフの里まで時間があるからのお。」
行軍が始まって一時間ほど経ち、マルスがふと話しかける。幸い、ザルディンの魔法により元同盟軍は疲れにくい体を手に入れたため、案外余裕があった。
「なんの質問じゃ?魔王様の弱点か?それとも魔王城の裏口かの?はたまた…」
「いやいや、もう魔王の力は十分この身に染みた。ありゃあ人間がどうこうできる相手じゃない。そんなことよりだ。」
マルスがザルディンのほうを向く。その顔は真剣であった。
「ザルディン殿ははなんで魔王軍にいるのだ?あんたほどの魔導士ならかなりいい待遇で召し抱えられただろうに。」
その問いにザルディンは大声で笑った。
「ハッハッハ…。そんな事を気にしておったのか。そんな顔をするからはたまたどんな質問が来るかと冷や冷やしましたぞ?」
「茶化さないでくれ。まぁ、魔王と戦った後だから俺だって人間じゃなく魔王についたほうが良いとは思うが…。」
「なにやら腑に落ちない様子じゃな。」
「当たり前だ。人族と魔族は本来、相容れない関係…だからこうして俺達だって魔王軍と戦ったわけだからな。まぁ俺が今更言える立場ではないが。」
「マルス殿は魔王様をどう見られた?」
ザルディンが穏やかな表情を浮かべ答えを待つ。マルスはつい先日会ったばかりの魔王のことを思い返した。
「そりゃあ…まぁ…。そうだな。敵わねぇって思ったよ。力も器も。あんなにやられたっていうのに俺達と対等…かどうかはわかねぇが、ちゃんと話してくれたからな。」
「そうじゃな。魔王は決してワシも含め配下の者を見下したりはしないのじゃよ。それは強者の余裕というものも居よう。じゃがな…。」
「どうしたのだ?何か他に理由が?」
「そうじゃな…。ワシが魔王様に仕えてまだ90年ほどしか経っておらんのでこんなことを言うのもはばかれるのじゃが。魔王様は孤独なのじゃ。強すぎるがゆえ、同じ目線で対等に接する者がおらず、我らのように魔王様に忠誠を尽くし、心酔する者か…もしくは畏怖の対象として見る者しかおらぬ。だからこそあのような態度を取られるのじゃ。誰も離れていかぬように。これ以上、孤独にならないようにとな。まっ…ワシの考え過ぎかも知れんがな。」
「魔王が…孤独。」
「ワシはそんな魔王様が不憫でならんのじゃ。だからこそ力になりたいと思った。それが魔王様に仕えた理由じゃよ。じゃが、下の者にもあのような態度が取れるのはやはりマルス殿の言うように器が我らとは比べ物にならぬほど大きからかも知れんがな?」
思わぬ話しにマルスは言葉に詰まる。魔王が可哀想などという発想が出てくるわけもなかったからだ。しかしその言葉には十分な説得力があった。
「強すぎるっていうのも考えもんなんだなぁ…。ん?そういえば仕えて90年って言ったよな!?一体あんたはいくつなんだ!?」
「さて?いくつだったかの?もう忘れたわい。ハッハッハッ。」




