Page 66 老人と兵団
「ホッホッ。ではアレス殿。しばしワシの護衛を頼んだのじゃぞ。」
「ああ、我ら同盟軍に…おっと、もう同盟軍ではなかったな。このアレスの名において任せてもらおう。」
「頼りにしてますぞ。アレス殿。」
ザルディンとアレスを指揮官とする元同盟軍3万はアイシュベルクの沿岸部、かつてアレスが命を落とした場所で合流した。
防衛軍の砦のあったエレノア岬はすでにその姿を変え、シュガールらにより新たな地形となっていた。
「改めて冷静になって考えると…我ら人類が敵う相手ではないな。」
アレスは当たりを見渡しながらつぶやく。他の兵士も同意見のようだった。
「そうじゃの。人類では魔王様どころか一頭のドラゴンですら壊滅的な被害を受けるからのお。」
「いや、本当にドラゴンのブレス受けた時は一瞬だったからなぁ。いや…本当にもう二度と受けたくねえな。……本当に魔王を倒せる人間なんて現れんのかねえ。」
アレスはどこか諦めが混じって声で悲観の言葉を漏らす。
「今のままでは無理じゃが、あの魔王様が信じているのじゃ。我らはそれに応えられるように力を尽くすだけじゃ。」
「その魔王が勇者を作り出すっていうのがそもそも変な話なんだが…。まぁいい。ではそろそろ行くとしようか。エルフの国に。」
「そうじゃな。では参ろうか。じゃがその前に…【オールハイド】」
ザルディンが手を空に掲げると軍勢を透明な幕が覆った。
「ザルディン殿。これは?」
「同盟軍に気付かれるわけにはいかんからの。いわゆる隠れ蓑というやつじゃよ。まぁ、エルフならば簡単に見破るかもしれんがな。」
かくして、ザルディン一行はエルフの住む国に向かって人知れず行軍を開始するのだった。
しばらく行軍しているとアレスが横を歩くザルディンに話しかける。
「それにしても、あんた歳の割には元気だな。この行軍に早さについてこれるなんて。」
「ん?それか。それならばこれじゃよ。」
ザルディンがアレスに向かって軽く指を振ると足の感覚が無くなっていくのを感じた。
「な、なんだこれは!?呪いか!?」
「落ち着くのじゃよ。ほれ。よく見るのじゃ。」
アレスが諭されると自分の足が勝手に動いているのに気づいた。まるで見えない椅子に座りながら移動しているような感覚である。
「ほれ?楽じゃろ?しかもこの魔法がかかってる間は魔力が尽きぬ限りは足は疲れぬしな!ハッハッハッ。」
「魔力が?うわっ!!」
アレスは急にその場で派手に転倒した。ほかの兵士は何事かと集まり、彼を抱き起こす。
「うむ…魔力はあまりないようじゃの。まあ、若者は自分の力で歩けということじゃな!」
ザルディンは赤くなった額を撫でながら立ち上がり、歩き始めるのだった。




