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「うらやましい…。実にその異世界の魔王がうらやましい!!きっと死力を尽くしたのだろう。おお…我もいつか全力で戦える相手を…。」
「そんな忌々しい本など今すぐ消し炭にしましょう。魔王様。」
恍惚の表情で本を持つ魔王に対してレラ一同は不機嫌を具現化したようなオーラを纏い、本を睨みつけている。
魔王は本を配下からの脅威から守ろうと我が子のように抱え、身を挺するような構えを見せる。
「これは我が宝とするのだ!我が願いが叶わぬというのなら、この本を読むことで少しでも気持ちを…」
魔王の懇願の最中、ザルディンが一つ咳を入れ、思いがけない言葉を放った。
「魔王様。恐れながら申し上げてもよろしいですかな?その本があれば魔王を倒すような勇者を作り上げることができるのでは?」
その一言により、大広間は時間が止まったように静かになり、次の瞬間、魔王はまるでザルディンを救世主かのごとく眼差しで見つめた。
「その言葉…まことか?まことなのか?」
「確実というわけではありませぬ。なのでこれは老人の戯言とお聞きください。これが旅立ちから魔王討伐までをまとめたものとすれば同じような経験をさせれば良い戦士、勇者と呼ばれる者が現れるかもという妄想でございますじゃ。」
ザルディンの言葉はその場にいるものに様々な感情を抱かせたが、最も大きな衝撃を受けたのはその場に膝から崩れ落ち、涙を流す魔王であることは誰の目にも明らかであった。そしてゆっくりと立ち上がった。
「こうしてはおれぬ。もしかするとあの森にまだ何かが飛来しているやもしれぬな。我は今一度、あの森を捜索する。ハンターウルフを借りていくぞ!それとザルディンよ!この本の複製を作らせお前に託すゆえ、解読を任せたぞ!」
魔王はそう言い残し、魔王城を後にするのであった。残ったレラはザルディンに近づき、その怒りをぶつけるべく胸ぐらには届かないのでローブの袖を握りしめた。
「どういうことよザルディン…。まさかあなた、魔王様に謀反を…」
「落ち着くのじゃレラよ。お主は我らが魔王様を倒すような者が現れると本気で思っておるのか?」
その言葉にいっそう握る手に力が入る。
「ありえないわ。魔王様は絶対的なお方よ。」
「ワシもそう思っておるよ。じゃがな、魔王様の願いへの渇望は知っておろう。ワシも長年仕えてきたが、見るに堪えない時もある。ならば主の望みを手助けするのも我らが臣下の務めではないか?それに魔王軍配下の中には力を持て余している者も少なくない数がいる。ここらで何か手を打たなくては組織として崩壊の危険性もあるのじゃ。」
「それってつまりどういうことなのよ?」
握る力が少し緩み、ザルディンの言葉に耳を傾ける。
「まぁ、イベントみたいなものじゃ。息抜きじゃよ。変化がないとのお。それに万が一、危険分子が現れた時には我々が先に手を打てばいいだけのことじゃ。ハッハッハッ!」
ザルディンの大きな笑いが大広間に響くのだった。




