Page 63 魔王は抑えが効きません
「おいおい、冗談だろ?そんな種類の文字なんて使いこなせるのかよ?」
ワダツミが呆れながら言葉を漏らす。
「そのようですね。私も伝え聞いたものではありますが、普段はその10分の1程度で事足りていたようです。私が読み書きできる、「ひら文字」と「かな文字」と呼ばれる神代文字の内、この二種類だけでも文を作れますからね。」
その答えにオルはホッとする。
「驚きました。では、普段はその二種類を使っていたということですよね?本の解読もそれなら容易いのでは?」
「そういうわけにはいきません。この本にはもう一つの文字種にして最も数が多く、読み方も複雑な「かん文字」が使われております。こちらの文字は私は50程度しか読むことができません。それに文法もありますし、私の知識だけでこの本を完全に読み解くことはまだ難しいかと。」
落ち込むオルを他所に魔王の目は輝いているのであった。そして更に魔王を喜ばせる報告をゴウグが行うのであった。
「しかし魔王様。誠に勝手ではありますが、トルアーラにこの本を見せたところ、この世界の魔族はモンスターと呼ばれているそうで、その他、魔法や道具、街の名前などはひら文字やかな文字が使われていることが多かった為、その名称が判明しました。」
「うむ…モンスターと読むのはザルディンからも教えてもらっておる。つまりその者の言う事は正しいのであろう。構わぬ。皆のものもこの本の解読に繋がると思うことがあれば、我の許し無く利用することを許可する!」
魔王はもう興奮を抑えきれない。立ち上がり、トルアーラの横に歩み寄り、本を開く。
トルアーラも少し慣れたのか、気圧されることは無く、その本に視線を落とす。
「た、例えばですが、この宝箱の蓋が口になっている魔獣、いえ、モンスターですね。これは【ミミック】と読みます。そしてこちらの黒い子供の悪魔は「リトルデビル」と書いています。」
「この挿絵の魔獣はミミックというのか!まさか名前まで同じとな!」
読めないモンスターの名前はちらほらあるものの、一つ一つ読み上げられていく未知のモンスターの名前に魔王は心が弾んだ。そして…
「そしてこちらの最後に描かれているモンスター。一文字目は読めませんが、二文字目の「王」は「おう」と読みます。意味はそのまま王様と言う意味です。もしかしたら一文字目の「魔」は「ま」と読むかもしれません。そうするとこのモンスターの名前は【魔王ウォルザーク】となります。」
「こやつが異世界の魔王だというわけか。そういえば挿絵にこやつが討たれているものがあったが、それはやはり勇者が魔王を討伐した際の勇姿を描いたものであったか…」
魔王が本を眺めながら考えをまとめていく。そして一つの思いつきを宣言する。
「決めたぞ。我の名はこれよりウォルザークと名乗る。」
その宣言に一同はざわめくのだった。




