Page 60 伴侶となる覚悟
「せ、セルケト様!?」
思わずメレーナは口を両手で覆い。ワダツミは驚きのあまり、咳込んでいる。
「そうじゃ!あの時の考えが間違っていると言うのならば!もう一度問う!ワタシと結婚するのじゃ!」
魔王もどうやら思ってもみない言葉が来たのでしばらく返答に困っている様子であった。それを見てセルケトは「やはりな」と肩を落とすのだった。
「ワタシと結婚はできぬと…そういうことじゃな。」
「いや、お主と結婚するのは構わんが…。今は…その…なんというか。」
「結婚するのか!?」
思わぬ答えにセルケトは椅子から立ち上がり机を叩く。
「ふむ。我は今、目的のため行動しておる。それ故、そちらを優先せねばならずお主に時間を割いてやれるかどうか…。」
「あの、勇者を作り出すという作戦のことなのじゃ?」
「うむ。我の悲願ゆえ、それを中止にすることは難しい。」
するとセルケトはあっけらかんと答える。
「ならばワタシも手を貸してやろう。千年もまったのじゃ。それくらい待ってやろう。それにお前に負けたことを根に持っておらぬと言えば嘘になるからな。少しはそれで憂さ晴らしもできるかもしれるのじゃ。」
不敵な笑みを浮かべるセルケトに魔王も笑って返す。ここに世界最強の夫婦が誕生したのだった。
「えっと…。つまりセルケトが俺たちの主の妻となるってことだよな?」
まだ状況が掴みきれていないワダツミが確認するように聞く。
「そうじゃな。しかし別に魔王相手にするように仰々しくする必要はないのじゃ。アタシに仕えてるわけでもないのじゃからな。今まで通りでかまわぬのじゃ。」
ワダツミはどこかホッとした様子で椅子に座り直す。一方でメレーナは依然として立ったまま両手で顔を覆い、その目には涙を溜めている。
「おめでとうございます!魔王様!セルケト様!このような場面に立ち会えるなどとはわたくし…とても感動しておりますわ。」
「ありがとうと言わせてもらうのじゃ。メレーナ、さっきはすまなかったのじゃ。」
「そんなこともうどうでもいいですわ!今日はなんと素晴らしい日なのでしょう!」
メレーナはセルケトに抱きつき、セルケトも恥ずかしそうに手を回した。
対して魔王もどこか満足そうに二人を見ている。
「セルケトよ。我の妻として我を支えてくれ。我も出来ることは全力でさせてもらう。」
「ほお。ならば全力で勇者が出てくるように精進するのだな。これも初めてのワタシとの共同作業じゃ。失敗は許さぬからな。」
セルケトの発破に魔王は大きく頷くのだった。




