Page 57 幻島の主
「凄い威力だったね。」
「ええ。まともに食らってたら私達もカシミラにお世話になるところでしたわ。」
何重にも重ねがけした防壁呪文が解かれながら、二人は爆発点を確認する。
上空で爆発したにも関わらずその衝撃は島の陸地部分を大きくえぐり取っている。
二人は玉セルケトが現れた瞬間に咄嗟の判断で魔王にぶつかるまでの間にできるだけの魔法を展開したおかげでギリギリ間に合ったが、魔王はと言うと…
「素晴らしい…素晴らしいぞ!セルケトよ!!」
笑っている。それもまともに食らったはずなのにも関わらず、ところどころ擦り傷があるくらいで対したダメージを負っていないように思える。それどころか、みるみるうちにその傷も回復しているではないか。
「この我が…傷を負ったのはいつぶりだろうか…。セルケトよ!さあ!我ともっと戦おうではないか!!」
しかしそれに応える者はいない。なにせ、先程の爆発で全てのセルケトは消えてしまったのだから。
魔王の声に答えるのは爆発の衝撃から元に戻ろうとする大きな波音だけであった。
しばらく魔王は上空でセルケトの攻撃を待っていたが、一向にその気配はない。メレーナとワダツミも不自然なまでに動きのないセルケトを警戒するが何も起こらないまましばらくいた。すると波も次第にもとの穏やかさを取り戻したそんな時であった。
「降参じゃ。降参。」
聞き覚えのない小さな女の子のような声がどこからともなく聞こえてきた。魔王がその声に少し寂しそうな顔を浮かべつつ地に降りたち、メレーナ達も魔王の元に向かう。
「魔王様。此度は魔王様のお手を煩わせてしまい。申し訳ございません。」
「悪いね。俺達だけでやれると思ったんだけどさ。」
「良いのだ。初めからその予定であろう。お主たちが我をここへ来れるようにし、その後、この地を手に入れると…。もしやお主たちで終えてしまうのではないかと冷や冷やしたではないか。」
少し和やかな雰囲気になりつつある中、またあの声が響く。
「なんじゃ!?このワタシを無視するのか!?」
「あなたは一体だれなのです!?姿を現しなさい!!」
メレーナがその声の出どころを探るとそこにはあの、小屋があった。
そして三人がそちらに注目すると小屋の扉がゆっくりと開き、そこから眼鏡をかけた少女が不機嫌な顔をして出てくるところであった。
「お前一体だれ…」
ワダツミが声をかけようとすると後ろから魔王の思わぬ言葉が出る。
「おお!セルケトではないか!いやいや、久しいな!」
メレーナとワダツミはお互いの顔を合わせ、そして魔王がセルケトと呼ぶ少女に驚くのだった。




