Page 55 真の作戦
屋敷があった場所にたどり着くと一見変わった所のない何の変哲もないただの丘であった。
それでもメレーネは一点を凝視する。
「そこになにかあるのか?」
ワダツミもその周辺に目をやり問う。
「はい。私の魔力探知に間違いがなければですけど。」
「なら試す他あるまい。」
ワダツミはゆっくりと槍を構え、突進する。すると見えない壁にぶつかったようにその一辺の景色が揺れる。
「間違いありませんでしたわね。」
揺れが収まるとベールが剥がれるように一軒の小屋が現れる。
「セルケトよ!もうどこにも隠れる場所はないぞ!姿を現せ!!」
ワダツミの轟音のような声に森にいた鳥たちは飛び立つが返事は一向にない。
再びワダツミが構え、2度目の攻撃を加えようとすると周りの空気が一変する。
二人は身構えると地面からまたセルケトが姿を現す。
「セルケト様。無駄な抵抗は辞めて下さい。」
メレーナが降伏を迫る言葉を続けようとすると地面からまた一人、また一人とセルケトが現れ、丘を埋め尽くす程になった。
「メレーナ。ワタシも本気を出すしかないようね。ワタシたち、良い友達になれると思ったのに残念だわ。」
何十人ものセルケトが二人に襲いかかろうとそれぞれ構える。
「メレーナよ。毒でどうにかなるか?」
「さすがに厳しいですわね。あの毒は直接流し込まないと意味がないのでこれだけの数を相手にというのは…」
「だよな。さすがにこんだけを相手にするのは骨が折れるぜ。」
ワダツミはまた少年の姿に戻ってやれやれと座り込む。
「あら?諦めたの?そうね。それが賢明だわ。そのままこの島から出ていってちょうだい。命までは取らないわ。でもこのことは絶対に内緒よ?」
「いやぁ。まぁ諦めたってことには違いないけどな?二人でこの島を取るってことを諦めただけなんだわ。」
「それってどういう意味かしら?」
セルケトが不服そうな顔で二人を見つめる。
「ええ。そうですわね。私たちだけでこの島を取れば魔王様のお手を煩わせずに済んだというのに。」
メレーナは胸の間から一枚の紙を取り出し天へと投げた。そしてその紙は光を放ち、天へと昇る柱となった。
「な、なんなのよ!!」
全セルケトが手で目を覆いながら光の先を確認するとそこには忘れたくても忘れられない影が姿を見せる。
「お、お前は…!!」
「メレーナ、ワダツミ、遅いではないか。我の出番が無いかと冷や冷やしたぞ?。」
天からゆっくりと地に降りったのはセルケトが出会った数百年前と変わらぬ姿をした魔王であった。




