Page 54 反撃くらいしますわよ
ワダツミは一瞬、動きが完全に止まったセルケトに対し、罠かもしれないとは思ったものの、これが最大のチャンスと感じた己の第六感を信じ六本の槍の連撃を繰り出した。
「しまっ…」
セルケトの意識が戻り言葉が終わる前に最初の一撃がセルケトを襲う。防御しようにもとき既に遅く、次々と彼女の身体を貫いた。
「これで終わりだ。」
ワダツミは穴だらけになりなんとか形を保っているセルケトに対し、大きく振り被って最大の一撃を加えた。
真っ二つに割れたセルケトはまるで溶けるようにその身体は形を崩し、やがて最初から何もなかったかのように痕跡も残さず消え去ったのであった。
「あっけないものだな。……メレーナの元に行くとするか。」
そして魔法による衝突音が鳴っていた方向に向かって駆け出した。
一方…
メレーナの方もセルケトの正体が分かり、次の手を講じている最中であった。
「メレーナ…。あなた、知っちゃいけないことを知っちゃったわね。」
「そんなに秘密にしたいことにしてはあまりに迂闊でしたわね。」
「そんなことないわよ。ここであなたを消しちゃえばいいんだから。」
さっきまで余裕のあったセルケトとは打ってかわり低い声でまるで脅すようにメレーナと対峙する。そして先に仕掛けたのはセルケトの方であった。
魔法ではなく今度は一足飛びでメレーナとの距離を詰め、拳を振るう。メレーナも一瞬、遅れを取り、拳が顔を掠め白い肌に赤い血が滲む。
メレーナはそれを狙っていた。
“ガブッ”
メレーナは顔の横にあった腕に思い切り噛みついた。セルケトは思い切り振り払い、メレーナは地面を転がった。
「そんな攻撃でワタシを倒せるとでも思ったわけ?せめて魔法で…あら?」
追い打ちをかけようとするセルケトの足が止まる。足だけでなく腕にも力が入らなくなり、その場に崩れ落ちる。
「焦ってしまわれたのですか?」
起き上がったメレーナが膝立ちのまま動けないセルケトに近づく。
「あ…あな…た。何…を…。」
口にも力が入らなくなっているのか言葉を話すことも困難になっている。
「そうですわね。教えて差し上げますわ。私たちナーガ族は毒の扱いに長けた一族。分析さえできれば有効な新たな毒を作ることもできますわ。そしてセルケト様のこのお人形はマナでできてますのでマナの操作を麻痺させる毒を使わせていただきましたわ。」
それを聞いてセルケトは音を立ててその場に倒れ込む。
「むやみに近づくなんて…迂闊でしたわね。」
そこへワダツミも到着し。メレーナは事の次第を説明した。
「なるほど。では…今度こそセルケトに会いに行くとするか。」
「ええ。今度こそ決着ですわ。」
二人は屋敷のあった場所へと向かうのだった。




