Page 51 女の子の嘘
「どうした?先ほどまでの威勢はどこへ行ったのだ。」
ワダツミの声が森の中に響く。
蹴り飛ばされた後、セルケトとワダツミは格闘戦を繰り返しながらこの森までたどり着いたのだが、セルケトは攻撃の時以外、身を隠したままであった。
何度かメレーナの方へ行こうとするとそれを阻まれ、反撃しようとするとすぐに姿を消すのであった。
「さすがに分身体で半減したワタシもあなたと真っ向からやり合うのは得策じゃないからね。ここでじっくり料理してあげるわ。」
姿なき声の主をワダツミは探すがどこにも見当たらない。しかし注意を怠ると…
「油断しちゃだめよ。」
突然現れたセルケトがワダツミに殴りかかる。ギリギリで避け、反撃しようと構えるとすでに姿を消していた。
恐らく分裂したことにより力が半減したことにより、連撃を防いだり水の槌による攻撃を耐えた時の強さは持っていないのだろう。だから森を隠れ蓑にし、海辺から遠ざけることで自分をこの場に釘付けにし、メレーナを倒してから再び全力で自分と戦うつもりなのだろうとワダツミは考えた。
メレーナも五皇臣として名を連ねるこの世界の強者ではあるが、格闘戦には不向き。殴り合いとなればいくら半減しているとは言えセルケトに軍配は上がるだろう。
「こんなことをしている場合ではないな。」
ワダツミは槍を構え、水平に薙ぎ払った。すると木々は切り倒され、視界が開ける。
少し手間ではあるが、これを繰り返していけばセルケトは身を隠すものがないので邪魔することもないであろう。
ワダツミは来た方向に向かって歩き出し、薙ぎ祓いを繰り返して道を作る。
もうすぐで森を抜けるところまでやってきたがセルケトは攻撃してくる様子がなかった。
(やはりな。森を抜けてすぐに駆けつければ半身となったセルケトであれば二人ですぐに制圧できる。)
そんな思考がよぎった時、セルケトが飛び出し殴りかかってきた。
(森を抜けられそうになり仕方なく現れたというわけか。半身なら容易い。ここで屠ってやろう。)
セルケトの拳を避けようとした瞬間、その速度は増してワダツミの横顔を完璧に撃ち抜き、その勢いはここまで作った道の始まりまで彼を吹き飛ばすほどだった。
フラフラになりながらも立ち上がるワダツミ。その拳の威力は一人で二人を相手に戦っていた時と同威力のものであった。
「油断は命取りよ。それとも女に嘘をつかれたのは初めてかしら?」
その言葉にワダツミは相変わらず無表情であるもののニヤッと心中で笑うのだった。




