Page 49 大地を割る大技
メレーナは自分の目が信じられなかった。
目の前ではワダツミが両手の2本の槍と宙に浮かせていた4本の槍、計6本でセルケトに対し、高速の刺突を繰り出している。しかしそれを受けているセルケトはそれを上回る速度で両手の拳をすべての攻撃に当て、防いでいるのだから。
そして彼女を戦慄させたのは相変わらず無表情のワダツミに対して汗一つかかずに笑みを絶やさないセルケトの顔であった。
そして当事者のワダツミも無表情ながら焦りを感じ始めている。ただの連撃ではなく一つ一つが一撃の威力を秘めた刺突。それを雨のように浴びせているはずなのにその全てを拳で弾かれる。
しばらく目を奪われていたメレーナだったが我に返り、ワダツミを援護すべく準備に取り掛かった。
「坊や。いえ、ワダツミ。そろそろ違うことをしない?ワタシ飽きちゃったわよ?」
相変わらず余裕を崩さないセルケトに対してワダツミは突如、連撃を止め、距離を取る。
「ならば…これを受けてみよ。」
ワダツミが片方の槍を宙に浮かせ、残った1本を両手で持つ。すると残った槍たちが一直線に並び両手で持った槍の先に連結し一本の長い槍となった。
「ただ長くなっただけじゃない。それともまだ何かあるのかしら?」
その言葉通り、これで終わりではなかった。海水がうねりを上げ、何本もの竜巻となってその矛先に集まり始める。そして刃の形となり、とてつもなく巨大な水の槍へと姿を変えた。
「避けるなどという興が冷めることはせぬよな?」
その言葉に避けると言う選択肢は彼女のプライドが許さず、ワダツミはセルケトを縛ることに成功する。
刃の大きさだけでも数十mにはなろうかという槍をワダツミは大きく後ろに倒し、そして跳ぶ。
そしてセルケトに全力で振り下ろす。そして振り下ろされた瞬間、刃は巨大な立方体となって槍はセルケトを斬るのではなく叩き潰すための巨大なハンマーとなった。
これならば炎の壁で蒸発させられ消える間もなく質量によって押し潰せるはずである。
ワダツミの手にぶつかる感触が伝わる。彼は両手にさらに力を入れる。
地面には隕石のがぶつかったようなクレーターができ、そこに海水が溜まり始めている。
「もう驚きはせぬ。これくらいは耐えるであろうよ。」
ワダツミは水の鎚越しに両手で耐えているセルケトを見つめ、さらに力を込める。
「ワダツミさん!離れてください!」
その一言でワダツミが離れると水の塊はセルケトの上で弾けた。
ずぶ濡れになった彼女が見上げると何重もの魔法陣が浮かび上がり、そして…
「神雷」
メレーナがつぶやくと島中をまばゆい光が包むのであった。




