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「人族の言語は不肖の身ながらこのザルディン、全て網羅していると自負しております。」
ザルディンはレラから謎の本を受け取り、ゆっくりと読め始める。
「そのザルディンが読めぬと言うのだから、我としてもお手上げなのだが?」
魔王は半ば諦めたような顔でザルディンを眺めている。
「そこなのですよ。今、この場にはあらゆる言語に精通した魔族、魔獣、獣人がいるにも関わらず、誰一人としてこの文字を知らないというのが不自然なのです。」
ザルディンの熱のこもった言葉に思わず、魔王は希望の色を見せ始めるが、そこへレラがひと言水を差す。
「でも結局、子供のいたずらとかどっかの物好きが自分の妄想を本にした!とかそんなんじゃないの?ほら、いかにも俺が最強!みたいに魔獣を倒してる人の絵が描かれているし?」
「その線も考えたが、子どものイタズラにしては出来が良すぎる。それに物好きの自己陶酔に作ったものならわざわざ森になんて持っていったりしないだろう。自宅にこっそりと隠すはずだ。例えば自室のクローゼットの奥の方とか。ああそれは間違いない!」
「やけに具体的だね。ザルディン。」
レラがジトッとした目線を送る中、魔王は少し言いづらそうに言葉を発した。
「いやぁ、それ…空から降ってきたのだ。すごいスピードで。すまぬ。それを先に言ってしまうとお主たちは我が狙われたと思ってその周辺を焦土と化すだろう?」
呆れた顔で聞くザルディンを尻目にレラを始めとした魔王軍配下は殺気立ち始めるのであった。
「それは本当ですか魔王様?それならばこの魔王軍直轄第三近衛兵団アマゾネス司令官レラ、全軍を持ってその森と周囲を徹底的に殲滅します。…行くぞ!!我ら魔王軍の恐ろしさを知らしめてやるぞ!!!」
魔王の願いが果たされない原因の一つがこの配下たちの異常なまでの忠誠心にあった。
戦いを望む魔王に対して、配下達は主に危険が及ぶことがないよう注意を払っている。
先の自称勇者との戦いもたまたま散歩に出かけた時にエンカウントしたという幸運によるものだった。
「落ち着くのだレラ、そしてそこ、極大魔法の準備はしないように。魔王様が言わなかったということは危険が無かったと言うことじゃ。しかし魔王様もそのような大切なことは言ってくだされ。他に言っていないことはございますかな?」
ザルディンが配下達をたしなめながら魔王に問うとまた何かを思い出したように答えた。
「そういえば…空に穴が開いていたな。」
「穴…ですか。空に穴。不思議な本…知らない言語。ふむ…もしやこれは異世界からの漂流物かもしれませんな。」
「漂流物?ザルディンよ!何か知っておるのか!?」
魔王は聞き慣れない単語に再び心を躍らせ始めた。




