Page 46 一人は寂しいじゃない?
「これは一体どういうことだ…」
槍から手を離したワダツミは後退しながら困惑する。ただでさえ体格の良かった彼女の身体は使用人達を吸収し、更に大きくなり貫いていた槍も取り込まれてしまった。
同じくメレーナもその様子を見つめることしかできていなかったが、ふと我に返った。
「ファイアボール!」
メレーナが手をかざすと複数の火球がセルケトを囲み、彼女に襲いかかる。爆発音とともに巨大な火柱が上がり、屋敷の天井に穴を空けた。
「この屋敷、ワタシ…気に入ってたのよ?」
炎の中から不気味な笑顔が浮かんだ。その瞬間、屋敷は光り、形を崩したかと思うとそれもセルケトへと吸収される。
そしてその元屋敷とともに炎も一緒にセルケトの体内へと消えていくのだった。
「やっぱりそういうことですか…。」
メレーナの確信めいた言葉に答えるように更に大きくなったセルケトがその姿を現す。
「さてと…これを返さなきゃいけないわね。」
セルケトがお腹に手を当てるとそこからワダツミの槍が引き出される。唯一吸収される前と違ったのはまとっていたのが水ではなく赤く燃える炎であることだった。そしてそれを手に取るとワダツミの方を見る。
「ちゃんと受け取ってね。」
綺麗なフォームから放たれた炎の槍は一瞬でワダツミに激突する。そして今度は逆にその衝撃によって彼は数m吹き飛ばされてしまった。
「あら。ちょっと強かったかしら。」
吹き飛ばした先を確認するとゆっくりと立ち上がるワダツミの姿があった。彼は当たる直前に水の障壁を作り、直撃を防いでいたのだった。
「ワダツミさん!大丈夫ですか!?」
メレーナの心配する声を他所にワダツミは更に槍の数を増やし六本の槍が彼の周りを浮遊していた。
「なるほど。さすが魔王様とやり合っただけはある。」
両手に槍を持ち、残りは宙に浮かせて戦闘態勢を取る。それとは対照的にセルケトはまだまだ余裕の構えを崩さない。
「セルケト様…私のこともお忘れなく。」
セルケトが振り返るとそこには下半身が蛇となり、同じくらい巨大化したメレーナの姿があった。
「あらあら。さすがに二人を相手にするのならあたしも本気にならないとね。」
セルケトが片手を空に上げるとビーチで騒いでいた魔族が光となり彼女に吸収された。
「メレーナよ。これはどういうことだ。」
ワダツミは相変わらず無表情のままメレーナに問う。
「この島に元々あったもの以外はセルケト様の魔力によって作り出されていたものと言うことになります。つまりこの島には最初からずっとセルケト様一人で生活されていたということになります。」
その言葉にワダツミは少し複雑な気持ちを抱くのだった。




