Page 45 ワタシダケヲミツメテ
「これでやられたわけではあるまい。」
激しく激突し、力なく壁にもたれ掛かり、うつむくセルケトにゆっくりとワダツミが近づく。彼の周囲には二本の三叉の槍が水を纏いながら舞っている。
「ワダツミさん。気を抜かないでくださいね。」
メレーナはセルケトの体を観察し警戒を緩めない。
ワダツミがセルケトの目の前まで来ても彼女はピクリとも動かない。ワダツミは片手を挙げる。すると二本の舞っていた槍の矛先はセルケトを向けられ、再び纏わりつく水が螺旋を描く。
「このまま眠るがいい。」
挙げた手を下ろすとまっすぐセルケトに向かい二本の槍が放たれる。
「せっかちな男ね。」
セルケトの言葉が激突音でかき消される。しかしワダツミは手応えを感じなかった。
槍が放たれた場所に彼女の姿は無く、周囲を見渡すと。
「後ろです!」
メレーナの叫びに反応し後ろを振り返るとその横顔にセルケトの拳がヒットする。
「よそ見しちゃ駄目じゃないの。」
セルケトはニッと笑うとその鍛え上げられた拳を次から次へとワダツミに繰り出す。その一撃一撃をワダツミは槍で防ぐが拳と槍がぶつかるたびに轟音が鳴り響く。
「あら?思ってたより肉弾戦もイケるのね。どう?やっぱり私と組まない?」
「冗談を言っている暇があるのか?」
ワダツミの言葉が終わるとセルケトの動きが止まる。彼女が腕を見ると口だけの白蛇のようなものが噛みついていた。その先に視線をやると腕を変化させているメレーナの姿があった。
「セルケト様。私のこともお忘れなく。」
「あなた。言うようになったじゃない。」
セルケトがメレーナに感心しているとお腹に何かが刺さる感触が襲い、メレーナから自身のお腹に視線をやるとそこには槍が突き刺さっていた。
「よそ見をするなと言ったのは貴様のはずだが?」
ワダツミの槍を持つ手に力が入り、さらに深く刺さっていく。
セルケトはそれを抜こうと噛まれていない方の腕を動かそうとしたが、メレーナももう片方の腕を蛇に変化させ、伸ばし、噛みつきそれを止めた。
そしてついに槍はセルケトの身体を貫く。
「砕け散れ!!」
貫いた槍がワダツミの声に反応し回転を始める。それに伴い、槍の竜巻も大きくなりセルケトの身体を飲み込み始めた。
セルケトは抜こうにも両手をメレーナに封じれているため動くこともできずただただその光景を見つめるしかできなかった。
「セルケト様。これで終わりですわ!」
メレーナの言葉にセルケトは笑い、180度首を回して彼女を見る。
「まぁそう言わずにゆっくりしていきなさいよ。」
そう言うと使用人達がセルケトの周りに現れ、彼女の体に取り込まれていくのだった。




