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黄泉の国は別名【常夜の国】と呼ばれる場所で平時ならば静寂が支配するどちらかというと寂しい印象を受けるのだが、今はそこかしこで大騒ぎが起きる。いま一番ホットなスポットであった。
魔王、ザルディン、オルの三人は冥界の門の前までたどり着いた。
「ま、魔王様!?」
鎧を着た鬼の門番が驚きのあまり尻もちをつく。
「すまないな。今日は急用ゆえ、事前に連絡を入れておらぬ。許せ。そしてカシミラに用があるのだが、通してもらってもかまわないか?」
魔王の申し出を断ることなどできるはずもなく、門番はあわてて巨大な門を開ける。
普段なら冷たい空気と静寂の包むはずなのだが…。
「第8区画のエルフとヘルハウンドを一緒に入れた奴はどいつだ!!?ヘルハウンドがエルフのことおもちゃだと思って振り回してるぞ!」
「第12区画はもういっぱいだって言ってるだろ!第32区画のほうへ回れ!!」
「こっちに氷牢玉をくれ!ドワーフ達が暇だからってそのへんの資材を使ってよくわからんものを作り始めてるんだ!!」
門を開けた先は黄泉の国とは思わえないほど怒号が入り混じり、活気に満ちていた。
「ほほほっ。思ったよりもカシミラ様は大変なようじゃな。さてさて…魔王様?いかがいたしましょう。」
元凶を作った張本人とは思えないひと言にオルは少し人間性を疑ったが当のザルディンは気にしない様子であった。
「うむ…。我らだけでカシミラのところへ行くとするか。二人とも我の身体にしがみつくが良い。」
ザルディンとオルが言われるがまま魔王の身体にしがみつくと普段は折りたたんでいる大きな翼を広げ、一度だけ羽ばたかせるとあっという間に上空に移動する。
そしてカシミラの住む黄泉の館を確認すると魔王はとてつもない速さで向かった。
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「カシミラ様。第9区画と第16区画より氷牢玉の要請が来ていますがいかがいたしましょう!?」
「第32.33区画が一気に埋まりました!もうそろそろ空きの区画がなくなりそうです!」
魔王がメルトリスという大都市を火山帯に変えた影響で黄泉の国は一層大賑わいの様相を呈し、カシミラはなんとか自国を崩壊させまいと奮闘している最中であった。
「カシミラ様!魔王様がお越しになられました!こちらにお呼びしてもよろしいでしょうか!?」
各区画からの情報の中に最優先しなければならない報告が来たのをカシミラは逃さなかった。
「ま、魔王様が!?ええ。いいわ。お通しして。」
カシミラはボサボサになった髪を手直ししながら待っていると魔王達一行が姿を現した。
そして一行を出迎え、いつもは自分が座る玉座に魔王を案内し、カシミラはザルディンの横に並び、跪くのだった。




