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「我の不意をつくとは…しかしこの程度の攻撃では我を倒すことなどできぬ。さあ、姿を表すがいい!」
魔王は片手を空に向け投擲物と思われるものを握り、森中に響き渡る大声で叫んだ。
その叫びでレッドゴブリンやら毒蛇の王は失神するがその問いに答える者は現れない。
「ふん、まぁ不意打ちをするような者だ。もう逃げたかもしれんな。」
周りの荒れ果てた状況とは対照的に魔王の身体や鎧にはホコリ一つついていない綺麗なままである。
「やれやれ。」と落胆する気持ちを抑えつつ、ふと掲げた手の中のモノが柔らかいことに気付く。
「一体、我は何を投げつけられたのだ?」
腕を降ろし、手の中のモノを確認するとそこには一冊の分厚い書物が握られていたのだった。
「本…だと?我は本を投げつけられたのか?……本。」
魔王は何故か悲しい気持ちになったが、すぐさまその本の奇妙さに気を取られた。
「なんだこの本は、全く読めんではないか。」
表紙にはきらびやから鎧を纏い、立派な剣を掲げた人間の絵が描かれているが、肝心の題名が見たこともない文字で描かれている。
そして本を開き、観察すると紙自体も妙にツルツルと滑らかでイラストや文字も色鮮やかである。
「なんだこの本は…」
魔王は本が落ちてきた空を見上げるとそこには小さな穴のようなものがありそれはすぐに収束し消え去るところであった。
「あれから攻撃…いや、落ちてきたのか?」
魔王は改めて本を開く。もしかしたら我を呪い殺す魔術書のようなものかとも思ったが、自分にはあらゆる呪いに耐性があることを思い出し、躊躇なく読んでみることにする。
「うむ…なるほど。なるほど。…うん。よくわからぬ。」
弁明しておくと、魔王は字が読めないわけではない。むしろ戦闘を楽しむ為、戦術書などを読む為にあらゆる種族の字を学び、習得している。にも関わらず、ここに書かれている文字魔王が初めて目にする文字であった。
「子どもが遊びで書いたのか?それにしてはこの紙やインクの素材は一体何なのだ。」
魔王は読めないながらも挿絵からこの本を読む解くことに切り替えた。挿絵には世界地図のようなものや街並、それに見たこともない魔獣のようなモノまで描かれている。
「これは辞典なのか?このような街は知らぬな。それに魔獣も知っているものに似ているようなものもあるが…」
魔王は本の考察をしているうちに城に辿り着いた。しかし魔王はそれに気づかず、城を通り過ぎ、侍従たちは慌てて魔王を追いかけた。




