第35話 キュウエと雨降り
ご飯はメイドさんが届けてくれるとのことでやることがなくなったから、さっきまで王都行きの馬車のときと同じくルリと手遊びをして時間を潰してた、今はしてないけど
手伝うのはハンスさんに止められちゃった客に手伝いはさせられないって
マナさんの家でも同じことあった気がする
でも正直やること無いんだよね、ルリも手遊びに飽きて僕の膝の上でぐで~っとしてる、僕の知ってる手遊び「アルプス一万尺」と「おちゃらかほい」しか無いんだよね、2つしかないから飽きてもしょうがない
なにしようかな、そうだキュウエのこと調べよ
叡智さん、キュウエって魚に関して教えて
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『キュウエ』
釣り針の届かない水底に生息している高級魚
その鱗はワインのような色に光り、その美しさからワインの銘柄であるキュウエと名付けられた
生食には向いてないが焼くと脂が引き立つ
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美味しそうすぎて楽しみ、ていうかワインとの呼び分け大丈夫?同じ名前だけど
【基本的にキュウエといえば魚になります】
【理由としてそもそもワインのキュウエが幻の銘柄であり、滅多に市場に出回らないからです】
【また、値段が高すぎるため貴族用の市場にしか売られていないのも理由に含まれています】
片方が無さすぎて呼び分けに問題ないパターンか、ていうか市民用にはあんまりないのか、ザ・高級魚って感じだな
ていうか最近叡智さんのことをスマホとかに入ってるアシスタントみたいに思うようになってきた、音声入力っぽいよね、まぁ思考入力なんだけど
「お待たせいたしました、 こちら、根野菜のスープにキュウエ焼き、そして白パンでございます、どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
そんなこと考えてたらご飯ができたみたいだ
「ありがとうございます、ルリご飯来たよ」
ルリを揺さぶって起こす、いつの間にか寝ていたみたい
「ごはん〜…」
目を擦りながら起き上がる、その間にメリーさんが慣れた手つきで馬車に取り付けられたテーブルを開く、新幹線とかのテーブルのデカい版かな?
それはともかくルリと2人で手を合わせて
「「いただきます」」
食器はスプーンとナイフとフォーク、カトラリーの詳しい作法とかよくわかんないし3つだけなのはありがたい、ルリはフォークとスプーンで全部食べてる、持ち方とかマナーが良いとは言えないけどここには僕たちしかいないし今は別に何かを言う必要は無いな
まずは野菜スープからにしよう、具材はじゃがいもっぽいのと人参みたいなのと見たことない奴、スプーンで掬ってスープを飲むと野菜でとれた出汁の甘さが口に広がっていく、塩加減が絶妙で出汁の良さが際立っている、じゃがいもっぽい野菜はホロホロと口の中で崩れて芋の良い香りが鼻を通り抜けていく、人参はよく煮込まれていて果物のような上品な甘さを感じる
見たことない野菜はコリコリした食感で感覚的にはレンコンに似てる、スープの味がよく染み込んでいてとても美味しい、ルリはあんまり好きじゃなさそうに食べてる、野菜苦手?
白パンはまんま白パンなので特段言うことはないかな、フワフワしてたから、手でちぎりやすかったくらいかな?
さて、メインであるキュウエ焼き、見た目は焼き魚というよりアクアパッツァみたいで、身の部分に飾り包丁が入っている
フォークを身に刺すと一切の抵抗を感じずにスルッと入っていく、そのまま掬って食べるとプルプルとした脂が口で弾ける、脂味のはずなのに重さがなくいくらでも食べれそう
ルリも尻尾と耳をピンと立てて喜んで食べてる
……さっきから僕が手を付けたものしか食べてないな、偶然なら別に良いけど一応確認しとこう
「ルリ、別に僕が食べなきゃ同じ物食べれないわけじゃないよ?」
「でもまえまでこうしてましたよ?」
「そっか、じゃあ今後は好きな時に好きなものを食べて良いからね」
「わかりました」
やっぱ許可制みたいに思ってたか、最近はのびのびとしてきたと思ったけどまだ引きずってるな……
そう思いつつも冷めないうちにご飯を食べる
***
「ここ最近美味しいものしか食べてない気がする」
「るりもそうおもいます」
恒例の食後のお休み時間中、今勝手に恒例に決めたんだけどね
「失礼します、食器の片付けにお伺しました、今、よろしいでしょうか?」
「あ、メリーさん、大丈夫ですよありがとうございます」
「ありがとございます」
ルリも僕の真似をしてペコリと頭を下げる、そしてその姿を愛おしそうな目で見てるメリーさん
「それとこちら、食後の飲み物をご用意いたしました、お好きなものをどうぞご自由にお召し上がりくださいませ」
「ありがとうございます」
「ありがとございます」
飲み物はリンゴ・オレンジ・ぶどうそれぞれのジュース、それとお茶が3種、何茶?
【左から、鳥籠茶・金宣茶・紅茶です】
烏龍茶じゃなくて鳥籠茶かい、なんだその微妙な違いは
「ルリは何が良い?」
「じゃあ、りんごじゅーす」
「わかったよ、はいどうぞこぼさないようにね」
「ありがとございます」
クピクピと両手でコップを持って飲み始めるルリをハァハァ言いながら見つめるメリーさん、マジで事件起こしそうだし釘刺しておこうかな
「あの、メリーさん?」
「いえ、お構いなく」
「お構いなくじゃなくてですね、ないとは思いますけど手出したら怒りますからね?」
「はい、私は見守るのが趣味ですので問題ないです」
の割には息荒いけど?
「ルリが嫌がってたら手出した判定ですからね?」
「わかりました、肝に銘じておきます」
いきなりキリッとした顔になって頷く、僕は怖いよこの人が
ポツポツと雨が降り始めた
「あら、降ってきちゃいましたか、では私はこれで」
「めいどのおねえちゃん、ばいばい」
「グハッ!……はひ…ルリちゃん…!」
挨拶されるとは思ってなかったらしい、ふらふらとした足取りで先頭の馬車へ向かっていった
叡智さん、この雨で起こり得る影響は?
【この雨は明日深夜土の2時41分に止む予定です】
【しかし付近の道がぬかるむため、到着がが予定よりも大幅に遅れる可能性が高いです】
【また、領内で発見される毒草の内、ミズタイソウの発見が一般冒険者には困難になる可能性があります】
僕は叡智さんがいるから困難じゃないけど目視でしか探せない人からしたら迷惑だね
と、ルリが小声で話しかけてきた
「あの…ごしゅじんさま……おといれ、行きたいです」
「わかったよ、じゃあアルレシャさんにトイレの場所聞きに行こうか」
さすがに貴族の馬車でトイレの用意が無いなんてことありえんでしょ、教えてくれるはずだし、最悪叡智さんに妙案賜わろう
ルリのマントを被せて雨から守ってアルレシャさんの場所へ向かう
***
「お手洗いですね、でしたら魔道具で簡易トイレを作りましょうかハマル!あれをお願いしますね」
「おう、ちょっと待て」
そういって手のひらサイズの正方形の何かを作ってそれに自分の血を付着させる
「ちょうど手ぇ切ってたんだよな」
なんて言ってるけど普通に絵面が狂気的だな
「うし、こんくらいやれば30分はもつだろ、嬢ちゃん魔力をここに流せ」
「わかった」
僕には何もわからないけど、ルリが魔力を流したらしい
すると光ってルリが消えた
「え?どこ行ったの?」
【冒険者用トイレ・転移式の内部です】
「トイレだよ、魔力込めたらこの箱のなかに入っていけてな、そこがトイレになってんだよ」
叡智さんとハマルの両方から回答が来た、そんな物あるんだ、便利だけど高そうだな
「便利だね、でもお高いんでしょ?」
「お値段なんと、使い捨てタイプ1個1000リンだ」
「全然安いね?」
「普通に大量生産されてるからな、白金級冒険者だって使ってる必需品だぜ
ま、魔道具だから俺は無料で使い放題だけどな
ただ内部に誰かが入ると手放した判定になって消えちまうから維持しなきゃいけねぇけどな」
お金に余裕が出たら買おうかな、あのサイズなら全然持てるし、魔力流す必要あるから僕しばらく使えないけど




