第一章 エピローグ
その男が目を覚ますと、自身の前に置かれていた机の上に書簡が乗っかっていた。
周囲から響く、苦悶と悦楽と怨嗟と懇願には耳を傾けることなく、男はその書簡を手に取る。
そこには、懐かしい文字が並んでいた。
内容は以下の通り。
※ ※ ※
Fra.R.Dへ
五百年の眠りからの帰還、嬉しく思います。
ジュアヌス亡き今、貴方に匹敵する魔術師は居ないでしょう。
誰か適当な人材に其方を任せて、内陣へお上がりなさいな。
貴方ほどの魔術師が、一つの世界でのみ活動するのは勿体無い事ですよ。
とは言え、貴方は頑迷にもそれを拒むのでしょうね。
その信念は賞賛に値しますが、やはり頑迷と言わざる得ません。
……この話題は幾度と無く遣り取りしておりますから、今は自重致しましょう。
本題はあくまで貴方の帰還を祝う為の物ですから。
偉大なる首領を始めとして、多くの同志が貴方の帰還を喜んでおりますよ。
近いうちに、何方かが顔を見せに行くかも知れませんね。
私は、貴方の寝顔を拝見させていただきました。
相も変わらず可愛らしい。
貴方の周囲に散らばるオブジェは、少々趣味が悪いと言わざる得ませんでしたが。
書き記したい事は尽きませんが、まずはこのあたりで失礼致します。
それでは、貴方の計画が完遂される事を願っております。
Sor.V.Vより
追記
我等が首領が送りし者の取り敢えずの敵がアレでは面白みがありません。
私が彼の者に油を注いでおきましょう。
今よりはマシな動きをするでしょう。
お気に召さないようでしたら、消してしまっても構いませんよ。
※ ※ ※
そう記された書簡には姉弟子の魔法名の略称が書かれてある。
如何やら、男の姉弟子が訪問していたようだ。
男はその間も寝入っていたとは、間が抜けた話だと苦笑いを浮かべた。
そして、小さく息を吐き出し呟くのだ。
「ソロール・ヴィア・ウェリタス、如何様に梃入れを行うのか拝見させてもらおう。」
と。




