第382話 杭の話は、俺たちより先に港へ戻ってきた
【本文】
二つ目の岬を越えた次の日も、その次の日も、俺たちは海へ出なかった。
一日目は魚籠を洗った。
二日目は、倉の前で割れた木箱から使える板だけを外した。
海へ出る仕事を一度覚えると、港の仕事が急に地味になった――ということはなかった。
釘は曲がるし、箱板は思った方向に外れないし、濡れた魚籠は普通に臭い。
何より、手を止めればマルクに見つかる。
ティムは二日目の昼前までに三回、港口を見た。
三回目で俺が言う。
「さっきから海ばっかり見てるけど、何か来る予定あったっけ」
ティムは釘抜きを板へ当てたまま、いかにも心外そうに眉を寄せた。
「海を見てるんじゃない。風向きとか、音とか、そういうのを確認してる。俺も一回は舟に乗ったんだから、そのくらい見るだろ」
「今、箱の陰にいたから風は見えてないぞ」
「じゃあ音だよ。海の音」
横で布を畳んでいたハナが顔を上げる。
「海の音を聞く前に、その釘抜いて。二人とも昼ご飯遅くなるよ」
ティムは何も言わず作業へ戻った。
俺も笑ったけど、似たようなものだった。
浅い湾へまた行けるかは分からない。
向こうには空魚箱が二つ残っている。
「次に来るなら長い杭二本があれば」とも言われた。
でも、それだけで俺たちが行く理由にはならない。
箱は向こうにあって困らない。
杭も、使える木がなければ話が始まらない。
舟がなければ運べない。
潮が合わなければ湾へ入れない。
そこまでは分かっている。
分かっていても、港口で帆が動けば目だけは勝手にそっちを向く。
昼を少し過ぎたころ、小舟が一艘入ってきた。
セイラの舟ではない。
ガルの舟でもない。
船縁に細い籠を三つ積み、前には見覚えのある男が座っている。
浅い湾で「魚に予定を聞け」と言った、頬の赤い男だった。
舟が岸へ寄る前に、ティムが俺の袖を引いた。
「レン、あれ。浅い湾の……ほら、靴の時に笑ってた人」
「お前の記憶、そこなんだな」
「顔より覚えやすいだろ」
本人に聞こえたらしい。
男は岸へ上がるなり、真っ先にティムの足元を見た。
「今日は靴、両方あるな。前に沈んだ方も」
ティムが一瞬だけ口を閉じる。
「あります。あれ一回だけですからね。浅い湾へ行くたびに片方なくす人みたいに言わないでください」
「一回でなくす奴もいる。残ったなら上出来だ」
「励まされてる感じがしない」
男は笑いながら、肩に掛けていた縄束を下ろした。
魚を持ってきたわけではないらしい。
細い綱を買い足しに来た、とマルクへ話している。
それとは別に、脇へ抱えていた短い木片を地面へ置いた。
ぱき、と折れた跡がある。
海水を吸って色が濃くなり、端は毛羽立っていた。
俺は木片を見てから、男を見る。
「この前言ってた杭?」
「先だけ。一本は前から割れてたろ。昨日見たら、その隣も縦に入ってた。まだ網は張れるし、今すぐ仕事が止まるほどじゃない。ただ、次に外が荒れたあとで慌てるより、替えられるなら先に替えたい」
急ぎではない。
でも、放っておいてもいい話ではない。
こういう仕事が、最近少し分かるようになってきた。
男は腰から細い縄を出した。
何か所か結び目がある。
「長さはこれ。太さは、この折れたところより細いと嫌だ。まっすぐじゃなくてもいいが、途中でぐずぐずになってるのは困る」
マルクは木より先に縄の結び目を見た。
「二本とも同じ長さでいいのか」
「だいたいでいい。並べて使うから、片方だけ極端に短いのは嫌だな」
「こっちで買うなら、金は持ってきた?」
男が小さな革袋を指で叩く。
「そこまで頼りに来たわけじゃない。木があれば買う」
話を横で聞いていたティムが、修理場の壁を指した。
「港の横に長い木、三本あるじゃん。あれなら長さは足りそうだけど」
全員の目が同じ方向へ向いた。
細長い木が三本、壁へ立て掛けてある。
俺も少し思っていた。
マルクが一本ずつ指す。
「左は舟の予備。真ん中は屋根の梁。右はうちのじゃない」
ティムの指がそのまま止まった。
「全部使えないじゃん」
「使う予定があるから置いてあるんだよ。長い木が見えたら全部余り物だと思うな」
頬の赤い男が声を出して笑う。
ティムは指を下ろし、三本をもう一度眺めた。
「長い木って、あるだけじゃ駄目なんだな」
マルクが木箱を足で寄せる。
「他人の物はだいたいそうだ。で、釘抜き終わったのか」
「今そっち戻す?」
「戻す」
ティムは渋々しゃがんだ。
俺は折れた杭の端を見た。
前なら、木があるか、ないかだけ見ていた気がする。
今は違う。
誰の物か。
長さは足りるか。
途中が傷んでいないか。
金を払う人はいるか。
運べる舟があるか。
条件が一つ増えるたび、簡単そうだった仕事が少しずつ形を変える。
「南から材木の荷が来る予定はある」
マルクが結び目の縄を男へ返した。
「今日か明日。屋根材が主だから、長い余りが乗ってるかは荷を見ないと分からん。あっても持ち主が売るとは限らない。それでよければ待て」
頬の赤い男は、迷うより先に頷いた。
「待つよ。綱もいるし。帰りの舟も今は決めてない」
「寝床まで面倒は見ないぞ」
「そこまで頼んでない」
二人とも言い方はそっけないのに、話は終わっていた。
ティムが俺の横へ少し寄る。
「これ、もう仕事になったと思う?」
「杭は本当に必要になった。でも、俺らの仕事はまだないな」
「木が来たら運ぶくらいはあるだろ」
「来ればな」
ティムは不満そうに鼻を鳴らしたが、そのまま釘抜きへ戻った。
三歩で振り返る。
「材木来たら、誰かちゃんと呼んでよ。俺、昼寝してても起きるから」
ハナが畳んだ布を抱えて通り過ぎる。
「昼寝する前提なんだ」
「例えです」
その日の夕方、材木の荷車は来なかった。
ティムは四回目の港口を見た。
俺は数えないことにした。
第383話 長い木は、長いだけじゃ杭にならなかった
【本文】
材木の荷車が来たのは、翌日の昼だった。
海側ではなく、南道から土埃を連れてきた。
荷台には板材が重なり、その上へ細長い丸木が何本か縛られている。
ティムは荷車が止まり切る前から、声に出さず指だけ動かしていた。
俺が横から見ると、六本数えたところで口元が緩む。
「昨日の話、もう忘れた?」
「忘れてない。全部使えるとは思ってない。ただ、六本あったら二本くらい当たりがあるかもしれないだろ」
「木をくじ引きみたいに言うなよ」
「選ぶんだから似たようなもんじゃない?」
似ていない気がする。
頬の赤い男もすぐ出てきた。
昨日買った細綱を肩へ掛け、結び目のある縄を腰へ挟んでいる。
荷車の男とマルクが先に話をした。
板材。
補修用の短い角材。
細い丸木。
荷を一つずつ降ろす間、俺たちは勝手に長い方へ触らなかった。
ティムも昨日の「他人の物」を覚えていたらしく、見るだけで我慢している。
最後に、荷車の男が荷台へ残った六本を手の甲で叩いた。
「これは向こうで使わなかった分。返すより、こっちで欲しい奴がいるなら売っていい。どのくらい要る?」
頬の赤い男が縄を広げる。
「この結び目からここまで。二本。太さは、この折れたやつより細くなければいい。湾の泥へ打つから、見た目がきれいかはどうでもいい」
そこから先は、俺たちが決める仕事じゃなかった。
一本目は一番長かった。
ティムが少し期待した顔をする。
荷車の男が地面へ下ろし、裏返した瞬間、真ん中近くに深い割れが見えた。
頬の赤い男は割れへ指を入れようともせず、首を振った。
「これは今の杭より先に開きそうだな。長さは十分だけど、替える意味が薄い」
「そこ切って短くしたら?」
ティムが聞くと、男は結び目の縄を当ててみせた。
「切ったら足りない。俺も長いだけで選べるなら楽なんだけどな」
二本目は、逆に少し短かった。
縄の最後の結び目まで、手のひら一つ分くらい届かない。
ティムが木の先と縄を見比べる。
「泥に入れる分を浅くすれば、上は同じくらい出せない?」
「出せるよ。その代わり、浅く立てた杭から倒れる。網ごと持っていかれたら、木一本けちった方が高くつく」
ティムは「ああ、それは嫌だ」と素直に引いた。
三本目。
長さは足りる。
太さも折れた杭より少し太い。
荷車の男が地面へ置いて、足でゆっくり転がした。
ころ、と回る。
二度目で節が引っ掛かって止まった。
頬の赤い男は節の周りを親指で押す。
「ここだけ落とせる?」
「落とせる。中まで傷んでなければな」
荷車の男が小刀で表面を少し削った。
薄い木屑が落ちる。
俺とティムは横から覗いた。
見ても、正直よく分からない。
色が違うと言われれば違う気もする。
匂いを嗅いでも、木の匂いしかしない。
頬の赤い男は削った場所を指でなぞり、最後に木全体を見た。
「これ一本」
決めるまで、思ったより早かった。
ティムは四本目へ目を向ける。
それは六本の中で一番まっすぐだった。
「今度こそ、これじゃない? 曲がってないし、長さもありそう」
荷車の男が片端を持ち上げ、俺へ反対側を示した。
「ちょっと持ってくれ。落とすなよ」
俺は両手で抱える。
重い。
長いからだと思った。
男は真ん中を拳で二度叩き、それから俺の側の端を靴先で軽く蹴った。
表面の一部が、ぼろ、と落ちた。
中が少し黒い。
頬の赤い男は何も言わず、俺へ下げろと手で示した。
ティムが首を傾げる。
「見た目、一番いいのに駄目?」
「長いし、まっすぐだよ。でも中がこれなら、海へ持ってってから困る。杭は飾るわけじゃない」
「人も木も見た目じゃ分からないってことか」
俺が笑う。
「急に人生の話にするな」
ティムはまっすぐな木へ小さく手を振った。
「惜しかったな」
荷車の男が吹き出した。
「木に慰める奴、初めて見た」
五本目は太すぎた。
二人で持つだけなら持てるが、浅い湾の男が「打つ前に腕が終わる」と断った。
六本目は少し曲がっていた。
ティムはもう期待していない顔で見ている。
頬の赤い男は、逆にそこで足を止めた。
縄を当てる。
長さは足りる。
曲がりは真ん中より上にある。
荷車の男が木を転がし、何か所か手で押した。
「打つ側をこっちにして、先を少し落とす。節も一つ取る。それでいいなら使えると思う」
頬の赤い男も同じ場所を確かめる。
「湾の泥なら、このくらい曲がってても困らん。これでいい」
二本目が決まった。
ティムが俺の肘を小さく突く。
「まっすぐなやつが落ちて、曲がってる方が残った」
「昨日、長ければいいわけじゃないって言われたばっかりだろ」
「港、毎日一個ずつ俺の常識壊してくるな」
「お前の常識、たぶん壊れやすいんだよ」
頬の赤い男が聞いていたらしく、肩を揺らして笑った。
代金は男が自分で払った。
マルクは横で受け渡しだけ見ていたが、値段を決めもしなければ立て替えもしなかった。
買った二本は、その場で邪魔な節だけ落としてもらう。
俺とティムは木を押さえた。
荷車の男が刃物を入れる前に、俺の手元を顎で示す。
「兄ちゃん、指そこだと刃が抜けた時に近い。もう少し向こうへ」
俺はすぐ手をずらした。
ティムが隣で口元を押さえる。
「今の、俺だったら絶対『またティムが』って顔されたやつだ」
「俺も普通に注意されてるだろ」
「声が静かだったから、ちょっと格好よく見えた」
荷車の男が作業を止めないまま言う。
「二人とも聞こえてるぞ。格好よくても指は切れるから黙って押さえてろ」
二人で黙った。
数秒後、頬の赤い男が吹き出した。
夕方までに、二本の丸木は港の屋根下へ並んだ。
長さを示す縄も、その上へ置かれている。
昨日まで「使える木があるかどうか」だった物が、今日は本当に二本ある。
だからといって、浅い湾へ届いたわけじゃない。
ティムは二本を交互に見ながら、急に言った。
「運ぶ時、右のやつとか曲がってるやつとか呼ぶの面倒だな。名前付ける?」
頬の赤い男は一拍も置かなかった。
「杭一と杭二でいい」
「それ名前じゃなくて番号じゃん」
「杭に何を求めてるんだ」
俺は笑った。
たぶん、本当にそれで十分だった。
第384話 二本そろっても、海が運ばせてくれるとは限らない
【本文】
杭一と杭二は、翌朝も屋根の下にいた。
ティムが朝飯の前に見に行って、わざわざ報告へ戻ってきた。
「まだいる。誰も勝手に浅い湾へ持ってってない」
ハナが椀へ温かい汁をよそいながら、呆れたようにティムを見る。
「夜中に木が歩くと思ってたなら、先にご飯食べな。朝から変なこと言ってると冷めるよ」
「そういう意味じゃないって。舟が来たら早く積むかもしれないだろ」
「舟が来たら、その時走ればいいでしょ」
正しい。
朝の港には舟が三艘いた。
でも、浅い湾へ行く舟は一艘もなかった。
一艘は南へ魚を運ぶ。
一艘は北入り江まで。
もう一艘は帆を外して修理中だった。
頬の赤い男は焦っていなかった。
杭の横で硬いパンをちぎり、昨日買った綱を膝に置いている。
ティムが隣へしゃがんだ。
「昨日のうちに木まで揃ったのに、今日行けなくても大丈夫なんですか。俺ならちょっと落ち着かないけど」
男はパンを飲み込んでから答えた。
「今日じゃないと困るなら、昨日もっと金出して舟を探してる。今は網が張れてるし、一本も倒れてない。ただ、早い方がいいのは確かだ。だから俺がここに残ってる」
「急ぎじゃないけど、急がないわけでもない?」
「お前、昨日から面倒な言い方覚えたな」
ティムは少し考えてから、「でも合ってる」と自分で頷いた。
俺は杭の先を見る。
削った部分は乾いて、昨日より色が明るくなっている。
木はある。
持ち主も決まった。
金も払った。
残っているのは舟だった。
昼前、セイラの舟が港へ入ってきた。
ティムの顔が分かりやすく上がる。
俺もたぶん、似た顔をした。
セイラは岸へ上がると、俺たちより先に頬の赤い男を見つけた。
「まだいたの。昨日帰る舟、なかった?」
「木が昨日来た。これ平棚まで積めるか」
男が杭を指す。
そこで俺たちは黙った。
浅い湾まで、ではなかった。
セイラは二本の横へしゃがみ、片方の端を持ち上げる。
ロウも反対側へ回り、二人で少しだけ浮かせた。
長さを見る。
重さを見る。
舟の方を見る。
「外に縛るなら平棚まで。今日は湾へは入らん」
頬の赤い男が、理由を聞く前に港口を見た。
セイラが続ける。
「こっちを出る頃には水が落ちる。次の水まで待てば入れるかもしれないけど、今日は別の荷がある。平棚へ網束と樽二つを置いて戻る」
「杭だけなら?」
「長いの二本を外へ出すから、いつもより曲がりにくい。浅い湾の入口で余計なことしたくない。平棚までなら持っていく」
頬の赤い男は一度だけ杭を見て、短く頷いた。
「それでいい。向こうで湾へ回る舟があれば頼む。なければ杭と待つ」
決まった。
俺とティムは顔を見合わせる。
ティムの口が開く。
たぶん、俺と同じことを聞こうとしている。
俺が先に小声で言った。
「俺らは乗れない感じだな」
「いや、聞くだけ聞こう。聞くのは無料だろ」
セイラには普通に聞こえていた。
「二人とも乗らんよ。ロウとこいつで足りる。木が外へ二本出る日に人を増やしても、動く場所が減るだけ」
ティムの肩が落ちた。
「木に負けた……。昨日からずっと待ってたのに」
頬の赤い男が残っていたパンを口へ放り込む。
「杭と勝負するな。向こうは文句も言わず働くぞ」
「それ言われると、俺かなり不利じゃない?」
俺は笑った。
でも、少しだけ残念だった。
浅い湾の仕事が動く。
自分たちが行かなくても。
それは当たり前なのに、前よりはっきり見えるようになった。
積む作業だけは手伝った。
杭を一本ずつ舟の外側へ当てる。
木が長いので、持つ位置を揃えないと片方がすぐ下がる。
「レン、もう半歩前。ティムはそのまま。せーので上げる」
ロウの声に合わせ、四人で持ち上げる。
船縁へ当たる直前に、セイラが手のひらを出した。
「止めて。先が綱に乗ってる」
全員の動きが止まる。
ロウが綱を足で外す。
「今」
二本目まで置くと、舟の形が少し変わって見えた。
船縁から長い木が前後へ伸びる。
いつもの荷より、ずっと邪魔そうだ。
ロウが縄を回す。
一周。
二周。
締めたあと、木を強く揺すった。
ティムも反対側を触ろうとしたが、ロウに手首を軽く払われた。
「今確認した。触って緩めるな」
「俺も確認しようとしただけ。仕事に参加してる感が欲しかった」
「積む時いたろ」
「そこはもう終わった」
「仕事って終わったら次に行くんだよ」
ロウの返しが早かった。
ティムは俺を見る。
「今日、全体的に扱いが雑じゃない?」
「たぶん昨日から同じだぞ」
頬の赤い男が笑う。
セイラは出る直前まで、外へ縛った二本を何度も見た。
「平棚で一回締め直す。こすれてたら結び直す」
ロウが頷く。
頬の赤い男は舟の前へ座った。
ティムは岸から最後に聞いた。
「平棚に湾へ行く舟がいたら、今日中に持ってくんですか?」
男は肩をすくめる。
「舟がいて、水があって、長いの二本積んでもいいって言えばな。どれか駄目なら今日は平棚。木は逃げない」
「魚は予定聞けないけど、木は待てるんだ」
「やっと分かったか」
舟が岸を離れる。
俺たちは乗らない。
二本の木だけが、俺たちより先に北へ行く。
ティムはしばらく黙って見ていた。
「変な感じするな。俺らが見つけた場所じゃないけど、一回行った場所の仕事が、俺ら抜きで先へ進んでく」
「元から進んでたんだろ。俺らが知らなかっただけで」
「それはそうなんだけどさ。ゲームなら、自分が受けてない仕事って見えないところで止まってる感じするじゃん」
俺も舟を見る。
浅い湾へ着くかは分からない。
平棚で止まるかもしれない。
明日まで、頬の赤い男が杭二本と一緒に待つかもしれない。
でも、俺たちが乗っていなくても、そろった条件の分だけ先へ進む。
「見送り終わったら、干し網七束。西の棚」
背中からマルクの声が飛んだ。
ティムが振り返る。
「七束? 杭は二本だったのに、急に数増えすぎじゃない?」
「杭と網は関係ない。嫌なら八束にするぞ」
「七でお願いします」
返事だけは早かった。
俺はもう西の棚へ歩き出していた。
ティムが追いつき、まだ港口を一度だけ振り返る。
目の前には海がある。
なのに、北へ行く道は俺たちが乗る時だけ開くわけじゃない。
その方が、少し面白かった。
第385話 届いた証拠は、報告じゃなく折れた杭だった
【本文】
杭一と杭二の結果が分かったのは、誰かが報告に来たからじゃなかった。
二日後の昼、北側から入ってきた小舟の先に、短く切られた古い木が四本くくり付けてあった。
その後ろには、見覚えのある空魚箱が二つ。浅い湾の作業小屋の屋根下へ残してきたやつだった。
ティムが先に気づいた。魚籠を洗っていた手を止め、泡のついた指のまま舟を指す。
「レン。あれ、杭じゃない? 新しい方じゃなくて、前のボロいやつ」
「たぶん。長さが全然ないけど」
「切ったんだろ。あんなの一本のまま舟に積んだら、また木に場所負けするし」
自分が杭に負けた話を、もう他人事みたいに使っている。立ち直りは早い。
舟が着くと、乗っていたのは頬の赤い男ではなかった。平棚で一度見かけた、鼻の横に白い傷のある中年の男だ。
男は綱を岸へ投げ、俺たちが結ぶのを待ってから古い木を見た。
「これ、どこへ置けばいい。浅い湾のやつが、鴎泊へ戻すならついでに持ってけって」
マルクが近づき、木より先に空箱を見た。
「その二箱も?」
「屋根下にあったやつ。次の魚を入れるか分からんから、場所を空けたいってさ。持ってきたのは俺。誰の箱かまでは知らん」
分からないところを、分からないまま言う。最近、それが妙に信用できる。
古い杭は、短くなっても軽くはなかった。ティムが端を片手で持ち上げようとして、すぐ両手に変える。
「切ったら軽くなると思ったのに、まだ重いな」
白い傷の男が鼻で笑った。
「二日前まで海の泥に刺さってた木だぞ。水吸ってる。服だって濡れたら重くなるだろ」
ティムは納得した顔で木を下ろし、それから自分の袖をつまんだ。
「俺の服は、魚の匂いも増える」
「それは重さに関係ない」
俺が言うと、男がまた笑った。
一本の表面には、縄が当たっていたらしい浅い溝が残っていた。俺は指先でなぞりかけて、触る前に男へ目を向ける。
「これ、割れた原因?」
「知らん。波で擦れた跡かもしれんし、前からあったかもしれん。俺が杭を立てたわけじゃない」
そこで終わる。溝があることと、割れた理由は別だ。
ティムは古い杭の一本を覗き込んだ。海水で黒ずみ、割れたところから中の木が毛羽立っている。
「じゃあ、新しい二本は着いたんですか?」
男は舟の中から濡れた布袋を持ち上げながら答えた。
「俺が見た時には一本立ってた。もう一本は朝の水で入れたって聞いた。抜いた古いのが邪魔だから、半分にして、そのまた半分。ほら四本」
「両方、替わった?」
「そう聞いた。俺は二本目を打ってるところは見てない」
ティムが一度口を開き、少し考えて閉じた。
たぶん、「本当に?」と聞きかけたんだと思う。聞いた本人が見ていないなら、それ以上は増えない。
俺は四本の古い杭を見比べた。二本とも縦に割れていたはずだけど、切られてしまうと、どれがどっちだったのか分からない。
「杭一と杭二、どっちが先に折れてたか分かる?」
ティムが真面目な顔で男へ聞いた。
男は俺たちを見る。
「杭に番号書いてあったか?」
「書いてないです」
「じゃあ俺にも分からん」
「ですよね」
ティムは素直に引いた。杭一と杭二という呼び方は、鴎泊から一歩も出ていなかったらしい。
ハナが空箱の中を確かめ、底に張りついた乾いた鱗を指で弾いた。
「これ、洗い直さないと使えないね。二人とも、今の魚籠終わったらこっちも」
ティムの顔が露骨に曇る。
「杭の結果が分かった直後に、仕事増えるんですか」
「箱が二つ戻ったからね」
「世界が進んだ分だけ仕事増えてない?」
「たぶん逆。仕事してるから世界が進むんだろ」
俺が言うと、ティムは泡だらけの手を見た。
「格好よく言ってるけど、今やってるの魚臭い籠洗いだよ」
「知ってる」
マルクは古い杭を蹴らない程度に足先で転がし、濡れ具合を見た。
「薪にするならまだ乾かす。勝手に燃やすなよ。浅い湾の持ち物だったなら、捨てていいかも聞いてない」
ティムがまた止まる。
「折れて戻ってきても、まだ他人の物?」
「折れたら所有者が消えると思うな」
「港、物に厳しいな……」
「お前が雑なんだよ」
白い傷の男が笑い、舟から最後の袋を担いだ。
浅い湾へ行っていない俺たちのところへ、古い杭と空箱だけが帰ってきた。
それで十分だった。少なくとも、新しい二本は向こうへ進み、古い二本は役目を終えたらしい。
何日に替えたのか。二本を同じ水位で打ったのか。前の穴を使ったのか。そこまでは分からない。
でも、俺たちが知る必要のある範囲も、今はそこまでだった。網がまだ張れていて、替えたい杭が二本あり、木が届き、古い方が戻ってきた。
途中を全部見ていなくても、仕事はちゃんと先へ進んでいる。
俺たちが追いかけなくても、結果は別の荷物に混じって戻ってくる。
「見終わったなら、その箱二つ洗え」
マルクの声が飛ぶ。
ティムが空箱を一つ持ち上げ、鼻をしかめた。
「結果、魚臭いな」
俺も反対側を持った。
「浅い湾らしくていいんじゃないか」
「俺、浅い湾の思い出が靴と魚臭さしか増えてないんだけど」
それはたぶん、自分で増やしている。
第386話 知らないプレイヤーは、折れた杭を見てクエストだと思った
【本文】
その日の午後、折れた杭を見て目を輝かせる男が現れた。
俺でもティムでもない。南道から歩いてきた、革帽子の若い男だ。
背には短い槍。腰の袋は旅人にしては小さい。港へ入ってから、魚より舟より先に古い杭を見た。
「あった。これか」
いきなり言われて、ティムが俺を見る。
俺も知らない。
男は杭の前へしゃがみ、割れ目を覗いてから、少し期待した顔で周りを見た。
「これ触ると何か出る?」
マルクが木箱を抱えたまま通り過ぎる。
「木屑なら出る」
「いや、そうじゃなくて。依頼とか」
「誰から?」
男はそこでようやく顔を上げた。
一拍。
「……誰からなんだろうな」
ティムが小声で俺へ寄る。
「レン。この人、俺より先走ってない?」
「たぶん、お前より種類が違う」
男は立ち上がると、少し気まずそうに帽子を直した。
「南の掲示板で見たんだよ。鴎泊の北で、変わった魚が高く売れるとか、潮が引くと道が消えるとか、壊れた杭を直す仕事が続いてるとか。隠しの連続依頼じゃないかって」
「誰が書いたんだ、それ」
俺が聞くと、男は首を振った。
「最初の書き込みは知らない。俺が見た時には、別々の話が一つの流れみたいにまとめられてた。『青い魚を拾う』『消える道を抜ける』『杭を直す』で三段階じゃないか、とか」
「拾ってないし、道も抜けてないし、杭も俺ら直してないよ」
ティムが指を三本立て、一本ずつ折った。
「全部ちょっとずつ違うじゃん」
「だから確認しに来たんだよ」
男は悪びれずに言った。
その言い方だけは、少し好きだった。噂を本物だと決めて金を突っ込むより、自分で見に来たらしい。
俺とティムは同時に黙った。
ヒサギ。浅い湾。杭。
一個ずつなら、だいたい合っている。まとめると、ほとんど違う。
「変わった魚って、青黒くて細いやつ?」
ティムが聞く。
男の目がまた明るくなる。
「それ。知ってるのか?」
「ヒサギ。高く売れた日もあったけど、十二匹来た日は別に高くなかった」
「え」
「潮で道が消えるっていうのも?」
「浅い湾の入口が浅くなって、来た時と同じ通り方できなかっただけ。道が丸ごと消えるわけじゃない」
俺が続けると、男の顔から少しずつ「隠し」の色が抜けていく。
最後に古い杭を指した。
「杭は?」
ティムが胸を張りかけた。
俺は嫌な予感がした。
「杭一と杭二が――」
「その名前、向こうじゃ通じなかったぞ」
さっきの白い傷の男が、舟から聞いて笑った。
ティムの胸が戻る。
革帽子の男は、ますます分からない顔になった。
「つまり、連続依頼じゃない?」
「少なくとも俺は、そんな表示見てない」
俺が言うと、男は今度こそ完全に困った顔をした。
その反応で分かった。こいつもプレイヤーだ。
名前はネドといった。南側で採取と護衛を半々にやっていて、掲示板で北の話を見つけ、二日かけて来たらしい。
攻略組というほど先を急いでいるわけではなく、珍しい採取場所や、まだ人の少ない道を見つけるのが好きだという。
「人が百人いる場所で一番になるより、五人しか知らない場所を十番目くらいに歩く方が好きなんだよ」
ネドが言う。
俺は少しだけ笑った。
「十番目でいいんだ」
「一番目はだいたい危ないからな」
ティムが真顔で俺を見る。
「レン、聞いた?」
「聞いた」
「何で俺見るの」
「一番目好きそうだから」
否定できなかった。
「二日歩いて、木屑か……」
ネドが呟く。
マルクが、さっきから抱えていた木箱を地面へ置いた。
「仕事探してるなら、木屑じゃないのがあるぞ」
ネドが振り向く。
「北の?」
「東の屋根下まで魚箱八。空だから軽い」
「依頼名は?」
「箱運び」
「報酬は?」
「八箱運んだら払う」
「受注条件は?」
マルクはしばらくネドを見た。
「箱を落とさない」
ティムが横を向いた。肩が震えている。
俺も危なかった。
ネドは笑われたことに気づいて、少し赤くなる。
「いや、普通の仕事なのは分かった。でも、こう……あるだろ。誰に話したら北へつながるとか」
「あったら俺らも知りたい」
ティムが即答した。
「舟に人が足りなきゃ声かかるし、荷がなきゃ出ないし、潮が悪けりゃ行かない。昨日まで杭がどうなるかも分からなかった」
そこまで言ってから、ティムは少し得意そうに俺を見る。
「今の俺、かなり分かってる人っぽくなかった?」
「最後の一言で全部戻った」
ネドが吹き出した。
そのあと本当に魚箱を運び始めた。
最初の二箱は両手に一つずつ。三往復目から重ねて三つ持とうとして、上の箱を落としかけた。
落ちる直前、ティムが横から肘で支えた。
「三つは無理だって。俺も一回やった」
「先に言えよ」
「今思い出した」
「絶対うそだろ」
二人で箱を戻す。ネドは悔しそうだったが、次からは二つずつ運んだ。
その切り替えは早い。失敗を誤魔化してまた三つ持つタイプではないらしい。
ハナが屋根下から声を飛ばす。
「軽い箱ほど風でずれるよ。無理に格好つけない」
ネドは二つへ戻した。
「掲示板には、ここまで書いてなかったな」
「何て書いてあったんだ?」
俺が聞く。
ネドは箱を抱え直しながら、少し笑った。
「『北で隠し漁場らしき場所を見つけたやつがいる』。あと、『浅瀬で靴片方持ってかれた間抜けがいた』」
ティムの足が止まった。
俺はネドを見る。
ネドもティムを見る。
ティムがゆっくり自分を指した。
「それ、俺かもしれない」
ネドは箱を落としそうになった。
第387話 クエストが出ない港で、そいつは日当をもらった
【本文】
ネドは結局、魚箱を八つ運び切った。
最後の二箱を屋根下へ置いたあと、しばらくその場で手を開いたり閉じたりしていた。
「軽いって聞いたんだけどな」
「一個ずつは軽いよ」
ハナが答える。
「八個分の距離は軽くならない」
「それ、先に聞きたかった」
「聞かれなかったから」
ネドは何か言い返そうとして、やめた。
その顔を見てティムが笑う。昨日まで自分が同じことを何度もやっていたのは、たぶん忘れている。
マルクは約束どおり日当を渡した。
ネドは硬貨を受け取り、手のひらで一度だけ転がす。
何か出るのを待っているようにも見えた。
出ない。
少なくとも、俺の目には何も見えなかった。
ネドは自分の視界の端を確かめるように目を動かしたあと、肩をすくめた。
「特別な表示、なし」
「普通に働いて普通に金もらったんだから、十分じゃない?」
ティムが言う。
「昨日までお前が北へ行く仕事待ってた時と、だいぶ言うこと違うな」
俺が返すと、ティムは少し黙った。
「……人の時は分かるんだよ」
「便利だな」
ネドが笑う。
「終わり?」
ネドが聞く。
「箱はな」
マルクはもう別の縄束を見ていた。
ネドが俺の方へ来る。
「本当に、これだけ?」
「金もらっただろ」
「いや、もらったけど。達成とか、評判とか……」
「上がってても俺には分からないな」
「雑だなあ」
「ここに来て三日で、それ言える?」
俺が返すと、ネドは少し笑った。
南の掲示板では、誰かが見つけたものを「情報」にして並べる。
ここでは魚が来て、箱が要って、杭が割れて、舟が出たり出なかったりする。
どっちもクロノヴェルムだ。
でも、同じ出来事を見ている感じがしなかった。
ネドの話では、掲示板には「北はまだ情報が薄いから、今のうち」という書き込みもあったらしい。
薄いのは情報だけで、人がいないわけじゃない。浅い湾にも平棚にも、俺たちが来る前から働いている人がいた。
その違いを、掲示板の一行だけで伝えるのは難しいんだろう。
「俺が戻ったら、少なくとも隠しクエストじゃなかったとは書いとくよ」
ネドが言う。
ティムがすぐ振り向いた。
「靴の話も消せる?」
「俺が書いたんじゃないから無理」
「掲示板、急に嫌いになってきた」
「レン、ネド」
ティムが港口から呼ぶ。
「北入り江の舟、来た。前に帆縫ってた人のとこじゃない?」
見ると、小さな舟が岸へ寄せている。船縁には畳んだ網。前に一度見た若い船員が立っていた。
舟が着くなり、船員はマルクへ声を掛けた。
「帰り、手ひとつ空いてる奴いない? 北入り江まで。網束下ろして、空籠積んで戻る。日が落ちる前にはこっちへ戻したい」
ティムの顔が上がった。
俺も反射で舟を見る。
でも、船員が必要としているのは一人だけだった。
往きは畳んだ網が二束。帰りは空籠を積む予定で、二人増やすほどの仕事ではないらしい。
「一人で足りる。二人乗ると、その分荷を寄せる」
若い船員が言った。
ティムは口を開きかけて、閉じた。人数が多い方が安全とは限らないのを、最近ようやく覚え始めている。
マルクは俺たちではなく、さっき日当を受け取ったネドへ顎を向ける。
「仕事探してるの、あいつ」
ネドが自分を指した。
「俺?」
若い船員は槍より先に、ネドの手と靴を見た。
「舟、乗ったことある?」
「川舟なら。海はない」
「吐く?」
「たぶん吐かない」
後ろでティムが小さく鼻を鳴らす。
俺には聞こえた。たぶん「俺もそう思ってた」だ。
船員は続ける。
「網持てる?」
ネドが畳んだ網束へ近づき、勝手に持ち上げず手を添えるだけで重さを見た。
「これくらいなら」
「じゃあ来る? 見物じゃなく働くなら」
ネドは一瞬だけ俺を見た。
たぶん、南で聞いた「北へつながる何か」が、思っていたより普通の形で目の前に来た。
「行く」
「なら、槍は背負ったままにするな。転んだ時に網へ刺す」
船員に言われ、ネドはすぐ腰を落とした。
革紐を外して槍を横へ寝かせる。舟の内側で邪魔にならない位置を聞き、そこへ固定した。
ティムがその手元を見ながら、小声で俺へ言う。
「箱は三つ持てなかったのに、こういうのはちゃんとしてるな」
「得意なこと違うんだろ」
「ちょっと悔しい」
「何に勝とうとしてるんだよ」
返事は早かった。
ティムが俺の横へ来る。
「俺らじゃなくて、今日来たやつが乗るんだ」
「今日は俺らに用がないんだろ」
「分かってる。分かってるけど、ちょっと悔しい」
声が本気で、俺は笑わなかった。
俺も少しだけ同じだったからだ。
ネドは槍を舟の邪魔にならない場所へ縛り直し、革袋を小さく畳んだ。動きは思ったより手慣れている。
箱を三つ重ねて落としかけた男と同じには見えない。
得意なことと、知らないことが違うだけだ。
出る前、ネドがティムへ声を掛けた。
「掲示板の靴の話、消せないけど、俺は追記しないでおく」
ティムが真顔で頷く。
「頼む。北で俺の名前聞かれても知らないって言って」
「名前、そもそも書かれてなかった」
「それはそれでちょっと寂しいな」
「どっちなんだよ」
ネドが笑った。
舟が岸を離れる。
昨日は杭だけが俺たちより先に北へ行った。今日は、知らないプレイヤーが行く。
俺たちが先に見つけた場所でも、俺たちだけの場所にはならない。
その感じが、嫌ではなかった。
むしろ少し、ぞくっとした。
俺が見ていない北入り江を、あいつは見るかもしれない。
俺とは違うものを面白がり、俺なら聞かないことを聞くかもしれない。
それが後で戻ってくるかどうかも分からない。
「見送ったなら、古い杭の下へ板かませろ。地面に直置きで腐らせるな」
マルクの声が背中へ飛ぶ。
ティムが振り返った。
「あれ、まだ置くんですか? 薪でもないのに」
「持ち主確認がまだだ」
「ほんと物に厳しいな、この港」
「お前に厳しいんだよ」
俺は笑いながら板を取りに行った。
クエストの窓は、最後まで出なかった。
ティムは古い杭の下へ板を差し込みながら、もう一度だけ港口を見た。
「帰ってきたら、何見たか聞こう」
「帰ってきたらな」
「靴の話以外で」
俺は笑って、板の端を足で押し込んだ。ネドの舟はもう港口を抜けていた。




