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世界リセットなし。~死んだら別人生、それでも俺の歩いた道は残るVRMMO~  作者: ユミヒロ


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第199話 壺が空いた時、俺はそこにいなかった


【本文】


二つ目の油壺が空いたのは、俺が北方の受取場にいない時だった。


その朝、俺はティムと一緒に赤崖へ上がっていた。


前日の雨で、曲がり角の少し上だけ土が柔らかくなっていたからだ。


麦袋を二つ積んだ荷駄を通す予定はない。今日は空荷で歩いて、足場だけ確かめる。


そう決めたのに、ティムは坂の途中で木の枝を一本拾った。


「これ、杖にしたら楽じゃない?」


前を歩いていたバースが振り返りもしないで言った。


「その長さなら三歩で邪魔になる」


「まだ使ってもないのに」


「使ってから捨てると、拾いに戻るだろ」


ティムは二歩だけ使った。


三歩目で枝の先を岩に引っ掛けた。


何も言わず、道の端へ置く。


「……今のは試験です」


俺は笑った。


バースは聞かなかったことにしたらしい。


赤崖の曲がりへ着くと、昨日まで乾いていた外側の土が靴底一枚ぶん崩れていた。


大きな崩れじゃない。


でも、荷を積んだ獣が外へ一歩逃げたら、その一歩が少し深くなる。


俺はしゃがんで土を握った。


表面は乾いている。指を少し入れると冷たい。


前の身体なら、見た瞬間に踏み場所を決められた気がする。


今の身体では、そういう「分かる」がまだ信用できない。


左足を置く。


重さをかける。


少し戻す。


もう一度。


バースが荷縄を肩へ掛けたまま、俺の足元を見ていた。


「そこ、踏めるか」


「人なら。荷駄は……外へ逃げたくなると思います」


「俺もそう思う」


それだけ言って、バースは曲がりの内側へ回った。


正解を当てたというより、同じ場所が気になったらしい。


ティムが後ろで靴をこすっている。


「俺はどこ踏めばいい?」


「今いるところ」


「動けないじゃん」


「じゃあ動くな」


バースの声が平らすぎて、俺はまた笑った。


ティムは何か言い返しかけて、やめた。


足場を削るほどの工事はしない。


細い石を二つどけて、荷駄が内側へ寄れる幅だけ確かめる。


その程度で一刻近く使った。


帰りに炭窯の方から煙が上がっていたが、モーグたちの姿は見えなかった。


仕事が始まっているのか、終わったのか、それだけでは分からない。


俺たちはそのまま北へ戻った。


受取場へ着いた時、いつも壁際に置かれていた油壺が一つ消えていた。


俺は足を止めた。


エルナのところへ行ったのかと思った。


でも、もう一つの壺は床の端にある。


口には布が掛けてある。


中身はまだ残っている方だ。


「壺、どこです?」


受取場の男は、麦袋の口を縛り直していた。


俺の方を見ずに、縄を歯で引いてから答えた。


「下りたぞ」


「……下りた?」


横でティムが先に反応した。


「誰が?」


「ネド」


俺は一度、空いた床を見る。


もう一度、男を見る。


「ネド、今日は北へ来てたんですか」


「朝、頼まれた荷を一包み上げてきた。帰りは空だって言うからな」


男は結び目を親指で押した。


「エルナが壺持ってきたの、その少し後だ。あいつ、ここに置いて帰ろうとしたから、ちょうどいいだろって話になった」


「俺、聞いてない」


ティムが言った。


男はようやく顔を上げた。


「お前に聞く話か?」


「いや、たぶん違うけど」


ティムは素直に引いた。


俺は壁を見る。


前回使った預かり札が、釘に掛かったまま残っていた。


二壺ぶんの札。


一壺返却済みの印がある。


それがここにあるということは、ネドは持っていっていない。


「札は?」


「置いた」


男が麦袋を押しながら言った。


「壺運ぶだけのやつに、二壺ぶんの札ごと持たせるの嫌だったんだよ。一つ返して、一つまだ使ってる。途中で何かあったら説明が面倒だ」


「じゃあ、麦津で返金は」


「させない」


返事だけは速かった。


男は壁の下に置いてあった小さな木片を顎で示した。


手のひら半分ほどの薄い板。


炭で、短く書いてある。


《空壺一》

 《麦津》

 《銭受取らず》


下に、丸が一つ。


「これと同じのを壺に結んだ。ネドには、鴎泊まで。そこから先は、行くやつがいたら一銅貨までで頼め。いなきゃ置くな、持って戻れって言った」


「一銅貨」


「俺が立てた」


男は少し嫌そうな顔をした。


「書いたぞ。ほら」


帳面の端に、《立替一》とだけある。


ティムが覗き込んだ。


「字、少ないな」


「お前が読むために書いてない」


「今日はよく刺される日だな……」


誰も慰めなかった。


俺は壁の札と、帳面と、空いた床を見た。


壺が空いた。


エルナが持ってきた。


受取場の男が判断した。


ネドが南へ持って下りた。


俺はそのどこにもいなかった。


「止めた方がよかったか?」


男が聞いた。


縄を切る小刀を持ったままだ。


俺はすぐには答えなかった。


壺が割れたわけじゃない。


札まで渡して銭の権限を混ぜたわけでもない。


運賃も上限を決めている。


ただ、俺が知らなかった。


それだけだ。


「……いえ」


俺は壁の預かり札を指で触った。


「ここに残したの、いいと思います。たぶん」


「たぶんか」


「まだ壺見てないので」


男が鼻で笑った。


「それならネドに言え。お前が見ないと壺が壺じゃないらしいぞ」


「そういう意味じゃないです」


ティムが横から口を挟む。


「でも、ちょっとそういう顔してる」


「してない」


「してる」


「麦袋持って」


「話変えた」


変えた。


二人で袋を壁際へ寄せる。


昨日なら、壺を返す話は俺が全部聞いて、全部決めて、たぶん全部ついていった。


今日は、戻ってきた時にはもう一工程終わっていた。


嬉しい、でいいのかはまだ分からない。


少しだけ、置いていかれた感じもした。


でも、それは悪い感じではなかった。


空いた床だけが、妙に広く見えた。


第200話 空壺だけは、俺なしで海を渡った

【本文】


翌朝、俺は鴎泊へ向かった。


壺を追いかけるため――と言い切ると、少し格好が悪い。


でも半分はそうだった。


もう半分は、赤崖の昨日の足場が夜の冷えでどう変わったか見たかった。


ティムは最初から壺しか気にしていなかった。


「割れてたら、音で分かるかな」


「離れてたら分からないだろ」


「いや、気持ちの話」


「もっと分からない」


ネドが荷駄の腹帯を締めながら言った。


今日は北へ上げる荷はない。


俺たちは一頭だけ連れ、鞍の擦れと足場を見るために赤崖を下る。


昨日柔らかかった外側は、表面だけ少し締まっていた。


俺がそこへ足を出すと、ネドが荷駄の鼻先を軽く引いた。


「人の足で決めるなよ」


「分かってます」


「昨日も言った顔だな」


「顔で判定するの流行ってるんですか」


後ろでティムが笑った。


「俺は前からやってる」


ネドは無視した。


荷駄は俺が踏んだ場所より半歩内側を選んだ。


耳を動かし、前足を一度置いて、すぐ引く。


次に、もっと硬いところへ置いた。


「そっちか」


俺が言うと、ネドが腹帯へ手を添えたまま答える。


「昨日の跡が嫌なんだろ。理由は本人に聞け」


「聞いて分かるなら聞きます」


「俺も聞く」


ティムが荷駄の横へ寄ろうとして、尻尾で顔を払われた。


「嫌われてる」


「今のは質問が悪い」


俺は笑った。


荷駄の選んだ足場を覚えて、そのまま下りる。


曲がりを抜けたところで、炭籠の細かな黒い欠片が道端に残っていた。


昨日の午後か、今朝かは分からない。


人はいない。


だから、それ以上は決めない。


鴎泊へ着いたのは昼前だった。


最初に目へ入ったのは、ハナの背中だった。


桟橋脇で網糸を張り直している。


こちらに気づいても、手を止めなかった。


「壺ならないよ」


挨拶より先だった。


ティムが口を開けたまま止まる。


「俺、まだ聞いてないんだけど」


「顔が聞いてる」


「やっぱ流行ってる!」


ハナは糸を歯で引いた。


「うるさい。ずれる」


ティムは本当に黙った。


俺は浜を見回した。


ネドの姿はない。


空壺もない。


ロウナは少し離れたところで小魚を籠へ移している。


こっちを見ないまま言った。


「朝、ネドが持ってきた。置くなって言うから、置いてない」


「じゃあ?」


俺が聞くと、ロウナは魚を一匹逃がした。


足元へ落ちた魚を追いかけながら、顎だけ沖へ向ける。


「あの傷の船」


「頬に傷のある船頭?」


「たぶん顔。船にも傷あるけど」


そこはどっちでもよかった。


ハナが網の目を一つ数え直してから口を挟む。


「麦津行くって言うから、ネドが聞いた。一銅貨なら持つって」


「もう出た?」


「見れば分かるでしょ」


沖を見る。


小舟が一艘、岬の向こうへ消えかけていた。


帆の端だけが見える。


白い。


前なら、あの白を見て船を呼んだ。


今日は、もう呼ぶ必要がない。


「札は?」


俺が言うと、ハナの手が一瞬止まった。


「何の札」


「油壺の預かり札」


「知らない」


ロウナが魚籠の蓋を押さえながら言った。


「木は付いてた」


俺は少し安心した。


「《銭受取らず》ってやつ?」


「字までは読んでない。ネドが、壺だけ返す、銭いらんって船頭に言ってた」


「いらん、じゃないんだけどな」


ティムが小さく言った。


ハナが横から返す。


「じゃあ追いかけて言い直してきな」


「泳げって?」


「嫌なら黙ってな」


ティムはまた黙った。


今日はよく黙る日らしい。


俺は桟橋の端まで行った。


船はもう小さい。


もし今ここで俺が叫んでも、聞こえない。


走って岬を回っても追いつかない。


壺は、俺が何もしなくても海へ出た。


「ネドは?」


「戻った」


ロウナが答えた。


「空荷で来たんじゃなかったの?」


「帰りに塩袋一つ頼まれた。南じゃなくて東。だから船待たずに行った」


俺は思わず笑った。


ネドまで、壺の続きを待っていなかった。


「みんな自分の仕事あるな」


ティムが言う。


ハナの指が止まる。


俺もティムを見る。


「何」


「いや、変なこと言った?」


「今日はまともだったから」


「ひどくない?」


ハナが笑うかと思ったが、笑わなかった。


網の結び目をやり直している。


その方が大事らしい。


ロウナは魚籠を持ち上げた。


「それ、運ばないならどいて。日陰なくなる」


俺たちは桟橋の端から二歩ずれた。


壺の話をしている間も、魚は乾くし、網は直さないといけない。


それでいい。


俺は改めて沖を見た。


問題は残っている。


預かり札は北にある。


麦津の油屋が、札なしで壺だけ受け取るかは分からない。


受け取っても、銭を誰かへ渡していいかは別の話だ。


でも、そこは俺が今ここで答えることじゃない。


船頭が麦津で止まるかもしれない。


壺を持ち帰るかもしれない。


それなら、それでいい。


「戻る?」


ティムが聞いた。


俺は少し考えた。


「いや。せっかく下りたから、赤崖の下側も見ます」


「壺、待たないの?」


「待っても船は早くならない」


「おお」


ティムが感心した顔をする。


俺が見ると、すぐ付け足した。


「いや、前なら待ってそうだなって」


否定できなかった。


俺たちは浜を離れた。


背中の方で、ハナがロウナに魚の値段を聞いていた。


ロウナは「網直してから来い」と返していた。


何の関係もない話だった。


でも、その声が聞こえる浜を歩きながら、少しだけ思った。


道が使われ始めるって、俺の知らないところで人が勝手に動くことなのかもしれない。


その考えも、まだ帳面には書かなかった。


第201話 壺は帰った。銭は止まった

【本文】


壺の結果が分かったのは、その日の夕方だった。


俺たちは赤崖の下側で、荷駄を一度だけ曲がらせていた。


荷はない。


なのに、ネドは鞍へ空の籠を左右一つずつ掛けた。


「空でも幅はある」


俺が籠を見ると、ネドはそれだけ言った。


ティムが右の籠を押す。


「軽いなら平気じゃない?」


「お前、空壺で何学んだ」


「あ」


「忘れるの早いな」


「覚えてた。今、出てこなかっただけ」


それを忘れたと言うんじゃないだろうか。


曲がりへ入る。


空籠は岩へ当たらない。


ただ、荷駄が首を振った瞬間に外側の籠が少し跳ねた。


ネドが縄を一本短くする。


俺は反対側から籠を押さえた。


ほんの少しの差なのに、揺れ方が変わる。


こういうのは、前の人生の知識だけじゃ戻ってこない。


手で持って、歩いて、失敗しそうになって、やっと身体へ入る。


二度目を通そうとしたところで、下から声がした。


「おーい!」


ティムが先に身を乗り出す。


「誰?」


「落ちるぞ」


俺が襟をつかむ。


「見えた方が早いって」


「落ちたら遅い」


坂の下から上がってきたのは、鴎泊で何度か見た、頬に白い傷のある船頭だった。


肩に小さな板をぶら下げている。


壺はない。


船頭は俺たちのところまで上がってくると、息を整える前に板を俺へ押し付けた。


「置いてきた」


「壺?」


「他に何がある」


板を見る。


朝、壺へ結んでいたのと同じくらいの大きさだ。


片面には《空壺一》《麦津》《銭受取らず》。その下に、黒い丸が二つ増えていた。


「油屋の印?」


「知らん。あいつが炭つけて丸した」


船頭は腰へ手を当てた。


「壺は見て、口も見て、割れてないって言った。で、銭は出さなかった」


ティムが俺の肩越しから板を覗く。


「銭受取らずって書いてあるから?」


「それもある。札どこだって聞かれた」


俺は頷いた。


「北です」


「俺に言うな。もう聞いた」


船頭は面倒そうに手を振った。


「二壺の札なら、一つ返した印と残り一つの話があるんだろ。知らんやつに銭渡せんってさ。俺もいらん。壺置くまでが一銅貨だ」


「一銅貨、受け取りました?」


「ネドから」


「それ、北の受取場の男の立替です」


「だから俺に言うな」


今日は二回目だった。


ティムが口元を押さえて笑っている。


船頭はそれに気づいた。


「何だ」


「いや、この人、ずっと説明されてるなって」


「お前もだろ」


「俺は横で聞いてるだけ」


「一番楽なやつだな」


ティムが少し嬉しそうな顔をした。


褒めてはいない。


船頭はそのまま赤崖を上ろうとした。


「鴎泊へ戻るんですか?」


俺が聞く。


「船置いて山へ帰る。明日は海出ない」


「風?」


「畑」


それだけ言って行った。


海の話だと思った俺が悪い。


ティムが船頭の背中を見送る。


「船頭も畑やるんだ」


「そりゃ食うだろ」


ネドが籠の縄を締めながら返した。


「いや、船で魚食ってる感じが」


「どういう感じだ」


ティムは答えを探していたが、見つからなかったらしい。


俺たちは二度目の通過をやめた。


壺が麦津へ着いた。


その結果を北へ持ち帰った方が、今は先だ。


とはいえ走るほどではない。


荷駄の足を洗い、籠の縄を戻し、ネドが鞍の擦れを確かめるのを待った。


ティムは途中で水を飲みすぎて腹を押さえていた。


「急ぐんじゃなかったの?」


「急いでない。帰るだけ」


「じゃあ待って」


「待ってる」


「優しい」


ネドが先に歩き出した。


優しくはなかったらしい。


北の受取場へ戻ると、男はまだ帳面を閉じていなかった。


俺が小さな板を置く。


「壺、麦津まで帰りました」


男の指が止まる。


「割れたか」


「割れてない。油屋も受け取った。でも、銭は返してない」


「そりゃそうだろ」


返事が早い。


ティムが椅子へ座りかけて、端に置いてあった縄束を見てやめた。


「え、失敗じゃないの?」


男がティムではなく、壁の預かり札を見た。


「何が」


「銭、戻ってない」


「知らんやつに勝手に渡される方が困る」


男は壁から札を外さず、指先で一度揺らした。


「壺は帰った。銭はここで止まってる。なら、どこから先が決まってないか分かる」


俺は帳面を開いた。


前の行の下に書く。


《空壺二 麦津返却》


少し間を空ける。


《返送 レン同行なし》


もう一行。


《預かり銭 未返》


ティムが横から覗き込んだ。


「俺も同行してないけど?」


「書く?」


「いや、俺は別にいい」


「じゃあ聞くなよ」


受取場の男が呆れた声を出す。


俺は笑って、帳面を閉じかけた。


「立替一銅貨は残ってます」


「残ってる」


「次、返金戻ったらそこから返します?」


「次があるならな」


男は小刀の鞘を直した。


「今決めるな。札持って下るやつが先に出るかもしれんし、油をまた買うなら話が変わるかもしれん」


「はい」


俺は帳面を閉じた。


そこへエルナが来た。


片手に、片方だけ踵の剥がれた靴を持っている。


「油、まだ残ってるよ」


誰も聞いていないのに言った。


受取場の男が顔をしかめる。


「何の話だ」


「また買うならって聞こえたから。急がなくていいって話」


エルナは靴を卓へ置いた。


「それより細い釘、誰か持ってない? これ、糸だけじゃ無理」


ティムがすぐ俺を見る。


俺は見返さなかった。


靴の剥がれた踵だけを見る。


細い釘。


北方で前にも出た話だ。


でも今は、油壺の銭さえ帰っていない。


「今日は壺の話だけにしよう」


俺が言うと、エルナはもう靴底を剥がしかけていた。


「別に頼んでないよ。あるか聞いただけ」


「……はい」


ティムが吹き出した。


俺は帳面を閉じた。


札はまだ壁にぶら下がっている。


壺だけは、俺がいなくても麦津まで帰った。


銭は、誰かが勝手に持ってこなかった。


前なら、止まったところを失敗だと思ったかもしれない。


今日は、壁に残った札を見ても、そこまで焦らなかった。


次に触る場所が、ちゃんとそこに残っていた。


第202話 止まった銭より、靴底の方が先に困っていた

【本文】


翌朝も、預かり札は壁にあった。


昨日と同じ釘に掛かって、昨日と同じ向きで揺れている。


壺はもう麦津に着いている。


銭だけが、まだ向こう側だ。


俺は受取場の卓へ肘をつきかけて、やめた。


卓の端で、男が麦の見本を指で潰していたからだ。


「返金の札、今日誰か南へ――」


「これ、同じのない?」


後ろからエルナの声が入った。


返事より先に、卓の上へ何かが落ちる。


ち、と小さな音がした。


曲がった釘だった。


親指の爪より少し長い。


頭は平たく、軸は細い。途中で一度曲がって、先だけまだ尖っている。


ティムがつまみ上げる。


「釘?」


「見れば分かるだろ」


受取場の男が麦を潰したまま言った。


ティムは釘を指の間で回した。


「いや、昨日まで壺の話だったから」


「昨日の話で今日の靴は直らないよ」


エルナは片方の靴を脇に挟んでいた。


踵の革が半分浮いている。


もう片方の手には、荷駄の腹帯らしい厚い革。


端に穴が三つ。二つは糸で塞いであり、一つだけ釘の頭が残っていた。


「糸じゃ駄目なんですか」


俺が聞くと、エルナは靴ではなく腹帯の方を卓へ置いた。


「駄目じゃないよ。今までも糸で持たせてる」


そこで一度、革を折った。


縫い目の横が白くなる。


「でも、ここは引っ張る。糸だけだとまた裂ける。細い釘で革を留めて、その上から縫いたい」


ティムが手の釘を見る。


「太いのならある?」


「ある。太いの打って靴底割っていいならね」


「やめときます」


自分の靴じゃないのに、返事だけは早かった。


エルナは卓の釘を取り返した。


「別に今すぐ買って来いって言ってない。南へ行く人がいたら、同じのあるか聞いてほしいだけ」


「何本くらい?」


俺が聞く。


エルナの眉が少し寄った。


「だから、まだあるか聞く話だって」


「あるとして」


「……二十本ならすぐ使う。三十あれば、次に一本曲がっても腹立たない。百本はいらない」


ティムが笑う。


「腹立つ基準なんだ」


「仕事道具なんてだいたいそうだよ」


受取場の男が、潰した麦を紙の上へ戻した。


「三十本なら、荷ってほどでもないな」


「軽いですしね」


ティムがまた言った。


エルナは曲がった釘を、ティムの掌の真ん中へ置いた。


「じゃあ落としてみな」


「え?」


「軽いから。床に落として、麦一袋みたいに見つけられるなら簡単だよ」


ティムは落とさなかった。


その代わり、急に握り込む。


「刺さる」


「それもある」


俺は少し笑った。


軽い。


小さい。


尖っている。


麦袋とも、炉晶箱とも、油壺とも違う。


「見本、これ一つしかない?」


「曲がったのならもう一本ある」


「曲がってないのは」


「使ってる」


当たり前だった。


エルナは小屋へ戻り、少しして薄い木片を一枚持ってきた。


曲がった釘を木片へ当てる。


釘の長さのところへ傷を一本。


頭の幅のところへ、もう一本。


「同じって言っても、だいたいこれ。頭が大きすぎるのは要らない。太いのも要らない」


「鉄の硬さは?」


ティムが聞いた。


エルナの手が止まった。


「それを南で聞いて分かる人が行くなら聞いて」


「俺は行かない方がいいね」


「今のところは」


ティムが少し傷ついた顔をした。


俺は壁の預かり札を見た。


札を麦津へ返したい。


釘の見本も南へ出したい。


小さい物が二つ。


だから同じ人へ渡せばいい、と一瞬思った。


受取場の男が、俺より先に首を振った。


「一緒にする顔するな」


「まだ何も言ってないです」


「昨日からその顔見てる」


また顔で判定された。


男は壁の札を指で弾いた。


「こっちは銭になる。そっちは釘を買う話だ。落とした時に、どっちの責任か分からなくするな」


エルナが曲がった釘を木片ごと布へ包む。


「私の方は、なくしたら釘が来ないだけだよ」


「それで靴が止まるんだろ」


男が言う。


「止まるのは一足。町全部じゃない」


「お前はそういう言い方する」


「本当だからね」


二人はそれ以上続けなかった。


俺は札へ手を伸ばす。


男が小刀の鞘で、俺の手の甲を軽く押した。


「誰に持たせる」


止まる。


「……まだ決めてません」


「なら置いとけ」


「でも返金が」


「銭は腐らん」


エルナがすぐ横から言った。


「靴は破れる」


男が嫌そうな顔をした。


ティムが小声で笑う。


俺も、今はそっちだと思った。


返金は止まっている。


でも、止まった場所は分かっている。


細い釘の方は、今まで道に載せたこともない。


「鴎泊まで見本を持って下ります」


「今日?」


ティムが聞く。


「赤崖の確認が終わってから」


「俺も?」


「嫌なら残ってていい」


「行く」


返事が速い。


エルナが包みを俺へ渡しかけて、引っ込めた。


「待って」


布を開く。


曲がった釘の先を、もう一枚の革切れでくるむ。


それから包み直した。


「今ので何が変わったんです?」


「お前の指」


ティムが自分の指を見た。


「まだ刺さってないけど」


「刺さってから直す話じゃない」


今度は俺が笑った。


昼前。


赤崖へ向かう俺の腰袋には、麦も油も入っていなかった。


曲がった釘一本と、傷をつけた木片だけ。


重さはほとんどない。


なのに、なくしたら今日の仕事は終わる。


小さい荷ほど、軽く扱っていいわけじゃなかった。


第203話 札と釘見本は、同じ袋に入れなかった

【本文】


赤崖を下りた時、俺は腰袋を二回触った。


一回目は曲がりを抜けたところ。


二回目は鴎泊の浜が見えたところ。


ティムが横を歩きながら言う。


「ある?」


「あります」


「さっきもあった?」


「あった」


「じゃあ聞かなくてよくない?」


「聞いたのそっちだろ」


「確認しただけ」


自分で言って、少し得意そうだった。


鴎泊では、ハナが網を干していた。


今日は座っていない。


柱と柱の間を行ったり来たりしながら、濡れた網を高い位置へ掛け直している。


俺たちが浜へ下りると、ハナは網越しに言った。


「麦、今日はないよ」


「今日は釘です」


ティムが答えた。


ハナの手が止まる。


「……何しに来たの」


「だから釘」


「海で?」


ティムが俺を見る。


俺も一瞬、説明の順番を失った。


「麦津に行く人がいたら、見本を持っていってもらえないかと思って」


「ああ」


ハナはそれだけ言って、また網を持ち上げた。


「傷の人なら行くよ」


ティムの顔が明るくなる。


「ちょうどいい」


「聞こえてるぞ」


背後から声がした。


頬に白い傷のある船頭が、小舟の脇で櫂の先を削っていた。


ティムが固まる。


「傷の人って、ハナさんが」


「言い訳に人使うな」


「すみません」


船頭は削り屑を吹いた。


「で、何」


俺は腰袋から包みを出した。


開かず、そのまま見せる。


「麦津の鍛冶屋へ、これと同じ細い釘があるか見てもらいたくて」


「鍛冶屋なら行く」


思ったより早かった。


ティムがまた明るい顔になる。


船頭はそっちを見ない。


「俺の網鉤、曲がった。直す」


自分の用事だった。


「見せるだけなら?」


俺が聞く。


「持ってく。買うなら金も持ってく。数えるのは嫌だ」


「数えないんですか」


「鍛冶屋が三十って渡した袋を、俺が浜で三十一本ずつ数えるのか?」


「……それは」


「嫌だ」


はっきりしていた。


ハナが網の向こうから口を挟む。


「足りなかったら鍛冶屋に言いな。船頭に釘作らせる気?」


「作れん」


「知ってる」


船頭は少しだけ笑った。


俺はエルナから預かった買い付け分の銅貨を、別の小袋へ入れてある。


釘見本の包みと、銭袋。


二つを並べる。


「一緒に結びます?」


ティムが言った。


俺が答える前に、船頭が櫂を置いた。


「結ぶな」


「今日それ二回目」


「一回目は俺じゃないだろ」


「でも同じこと言われた」


「じゃあ覚えろ」


ティムが黙った。


少しずつ黙るのが早くなっている。


船頭は釘見本を自分の腰袋へ。


買い付けの銭は、首から下げた小さな革袋へ入れた。


「別なの?」


「落とした時、どっち落としたか分かる」


「落とす前提?」


「海だぞ」


それで終わった。


俺は一銅貨を渡した。


船頭が掌を見る。


「これは?」


「釘の用事分」


「帰りも持つならもう一枚」


「帰りに釘がなかったら?」


「一枚」


「見本は?」


「返す」


細かい。


でも分かりやすい。


そこへ、ロウナが魚籠を抱えて通った。


「今日、釘売るの?」


「売らん」


船頭が答える。


「じゃあ何してるの」


「釘運ぶ」


「同じじゃない?」


誰も説明しなかった。


ロウナも気にせず行った。


俺は船頭へもう一銅貨を渡した。


「三十本あったら買ってください。太さと頭は見本と同じくらい。違いすぎたら買わなくていいです」


「値段は」


「この中まで」


買い付け袋を指す。


船頭は中を開けず、重さだけ確かめた。


「余った銭は返す」


「お願いします」


これで釘の話は終わった。


終わったはずだった。


船頭が櫂へ戻る。


俺の目が、浜の向こうを見た。


朝まで壁に掛かっていた預かり札が頭へ浮かぶ。


昨日、この船頭は空壺を麦津の油屋まで持っていった。


油屋とも話している。


今から、同じ麦津へ行く。


「もう一つ、頼んでいいですか」


船頭が削る手を止めない。


「先に物見せろ」


「今、北にあります」


「じゃあないじゃん」


その通りだった。


ティムが俺を見る。


「札?」


「うん」


ハナが網を引っ張りながら言う。


「取りに戻るの?」


赤崖を見た。


今から北へ戻って、札を持って、また下りる。


できなくはない。


でも、船は潮を待ってくれない。


船頭がようやくこっちを見る。


「何の札」


「昨日の空壺の預かり札。原札が北に残ってて、返金が止まってます」


「ああ」


船頭はすぐ分かった。


「持ってくれば油屋には寄る」


「今日の出る時間は?」


「もうすぐ」


無理だった。


俺が息を吐くと、ハナが網の端を柱へ結んだ。


「ネド、上にいたよ」


「え?」


「さっき塩袋下ろして、また北へ戻るって言ってた」


ティムが赤崖を見る。


「取ってきてもらう?」


俺はすぐ答えなかった。


ネドは運送屋で、俺たちの小間使いじゃない。


たまたま北へ戻るからと言って、札を取って往復してくれは違う。


「今日はやめます」


そう言うと、船頭は何も言わず櫂を削り続けた。


ティムだけが少し不満そうだった。


「せっかく同じ麦津なのに」


「札はまた動かせる」


「釘は?」


「今動いた」


ハナが横から言った。


「一回に全部片付けないと死ぬ病気?」


ティムが首を振る。


「レンに聞いて」


「俺も違います」


「今、ちょっと治った顔してる」


顔の話が増えている。


小舟が出る前、船頭が釘見本の包みを腰袋から一度出した。


「これ、先尖ってるな」


「革で巻いてあります」


「布、破れたら嫌だからこっち入れる」


小さな木箱へ移す。


網鉤と砥石と、何かの金具が入っていた。


自分の道具箱だった。


「帰りは釘、何に入れます?」


ティムが聞く。


船頭は舟へ乗った。


「鍛冶屋に聞け」


「船頭なのに?」


「だからだよ」


最後まで説明しなかった。


小舟が浜を離れる。


今日、麦津へ出たのは曲がった釘一本だった。


預かり札は、まだ北の壁にある。


同じ目的地でも、同じ日に行く必要はなかった。


第204話 三十本の釘は帰った。麦の数はまだ空欄だった

【本文】


釘が戻ったのは二日後だった。


俺はその朝、赤崖の北側でバースと石をどけていた。


雨で落ちた石ではない。


荷駄が蹴ったらしい、拳より少し小さい石が二つ。


「これくらいなら端へやっていい?」


俺が聞くと、バースは一つを靴先で転がした。


「道の外へ落とすなよ。下に人いたら、お前より先に着く」


「石が?」


「石が」


ティムなら何か言いそうだった。


今日はネドと一緒に鴎泊へ下りている。


俺は石を山側へ寄せた。


前より足が迷わない。


でも、迷わないことと雑に歩くことは別だった。


右足を置く。


地面を一度踏む。


次へ出る。


何度も通ったせいで、身体が先に知っている場所が少し増えた。


Lv3の表示は変わらない。


変わらなくていい。


昼前、下からティムの声がした。


「レンー!」


バースが眉をしかめる。


「でかい」


「何かあった?」


俺が曲がりの内側へ寄る。


ティムが息を切らしながら上がってきた。


「釘、来た」


「割れた?」


言ってから、自分で変だと思った。


ティムも一瞬止まる。


「釘は割れない」


「壺の癖が残ってる」


バースが石をもう一つ動かした。


「刺さったか」


「まだ」


「まだって何」


聞くと、ティムは腰を押さえた。


「袋から一本、先が出てた」


俺とバースが同時に黙った。


「刺さってないよ」


「先にそれ言え」


俺は立ち上がった。


鴎泊へ下りる。


浜では、頬に白い傷のある船頭が小舟の水を掻き出していた。


ハナは少し離れたところで網を畳んでいる。


ネドは荷駄の鞍を外していた。


そして仮荷台の端に、小さな布袋が置いてある。


見た目だけなら、豆でも入っていそうだった。


布の横から、鈍い鉄色の先がほんの少し出ている。


ハナがこちらを見ずに言った。


「触るなら上から掴むな」


「一本出てるんですね」


「一本見えてる」


嫌な言い方だった。


船頭が舟から降りる。


「鍛冶屋は三十入れたって言った。俺は数えてない」


前に言った通りだ。


「返金の札は?」


ティムが聞く。


船頭が顔をしかめる。


「持ってきてないだろ」


「いや、なんとなく」


「なんとなくで銭は出ん」


ティムは頷いた。


少しだけ賢くなっている。


俺は釘袋の紐をほどいた。


「ここで開けるの?」


ハナが言う。


手が止まる。


足元は板。


隙間がある。


「……浜でやります」


砂の上へ移る。


古い木板を一枚敷き、その上へ布袋を逆さにした。


から、から、と乾いた音がする。


小さな釘が落ちる。


二十本を越えたところで、ティムが数を見失った。


「今二十三?」


「十九」


ネドが言う。


「嘘」


「知らん」


「やめてください」


最初から数え直した。


今度は十本ずつ三列。


三十本。


一本も減っていない。


ただ、布は一か所だけ小さく裂けていた。


「帰りの船で開いた?」


俺が聞くと、船頭は首を振った。


「知らん。鍛冶屋が入れた時かもしれん。舟で荷の下には置いてない」


責任を押し付けているわけではない。


分からないものを、分からないと言っている。


ネドが一本つまむ。


「これ荷駄に掛ける?」


「三十本だけです」


「だから?」


「軽いし」


言った瞬間、ティムが俺を見た。


俺も気づいた。


「今のなし」


ネドの口元が少し動いた。


「覚えてるならいい」


釘を布へ戻すのはやめた。


浜にあった薄い板切れを二枚借りる。


ハナが言う。


「それ、網の浮き板切った残り。使うなら返さなくていい」


二枚の板の間へ、釘の軸を揃えて挟む。


先と頭が外へ出ないように少しずらし、革紐で三か所を縛る。


小さな平たい束になった。


「これなら荷駄?」


ティムが聞く。


ネドは首を横に振った。


「人が持てる物まで荷駄にぶら下げるな」


「でも荷物だよ」


「お前も荷物持つだろ」


「持ちます」


「じゃあ持て」


ティムへ渡した。


「俺?」


「今、自分で言った」


ティムは板束を腰袋へ入れようとして、やめた。


「これ、角ある」


「学ぶなあ」


俺が言うと、少し得意そうになる。


結局、胸の前へ斜めに掛けた小さな布鞄へ入れた。


ネドは荷駄一頭を北へ向ける。


「俺、これ上げる。ティムも来い」


ティムが俺を見る。


「レンは?」


俺が答える前に、バースが赤崖の上から声を落とした。


「こっち終わってないぞ」


よく聞こえたらしい。


「俺はバースさんと残ります」


「釘、先行くよ?」


「どうぞ」


「見なくていいの?」


一瞬だけ、前の俺なら追ったかもしれないと思った。


「三十本あるのは見た」


「エルナさんに渡すとこは?」


「ネドが北まで行くなら、俺がいる意味ない」


ネドが荷駄を歩かせる。


「最初からそう言え」


ティムが慌てて追った。


二人と一頭が赤崖へ入っていく。


俺はその背中を見送ってから、バースのところへ戻った。


午後。


北側の受取場へ戻ると、エルナはもう釘を四本使っていた。


片方の靴の踵が、さっきより低くまとまっている。


ティムが得意そうに言った。


「三十本、無傷で届けました」


エルナが靴底を叩く。


「二十六本」


「え?」


「四本ここ」


「そういう意味?」


「他に何がある」


どこかで聞いた返しだった。


エルナは新しい釘の頭を指で撫でた。


「少し柔らかいけど、使える。次があるなら同じ鍛冶屋でもいい」


「次も三十?」


俺が聞く。


「まだ決めない」


「ですよね」


「今あるんだから、今使う」


それで話は終わった。


定期注文にはならない。


三十本が一度届いただけだ。


受取場の男が帳面の横を指で叩く。


「で、壺の銭」


壁には、まだ原預かり札が掛かっている。


俺は見た。


「次、傷の船頭が麦津へ行く時に持っていけるか聞きます」


「それでいい。急がん」


昨日と同じだった。


銭は腐らない。


その時、入口で誰かが咳をした。


マルクだった。


紙を一枚持っている。


ティムが椅子から立ち上がる。


「何か来た?」


「来ない話」


マルクは卓へ紙を置いた。


ゼンの字ではない。


東河港から回ってきた連絡らしい。


俺は最初の二行だけ読む。


川の水位が、また下がった。


次の穀物便は、予定どおりの量を上げられない可能性がある。


数字の欄は空白だった。


「どれくらい減るんです?」


俺が聞く。


マルクは首を横に振った。


「まだ来てない」


ティムが紙へ顔を近づける。


「じゃあ、何袋こっちで――」


「まだ決めるな」


俺とマルクがほとんど同時に言った。


ティムが口を閉じる。


マルクが俺を見る。


「お前も言うようになったな」


「最近、言われるので」


「誰に」


多すぎて選べなかった。


エルナはもう次の靴へ釘を当てている。


壁の預かり札は残ったまま。


卓の上には、数字の入っていない麦の紙。


小さい釘は届いた。


止まった銭は、まだ止まっている。


そして今度は、もっと大きい荷が動くかもしれなかった。


空欄の方が、妙に重く見えた。


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