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世界リセットなし。~死んだら別人生、それでも俺の歩いた道は残るVRMMO~  作者: ユミヒロ


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18/97

第18話 二回目の道

帰り道で、灰色の紐を一本見落とした。

俺が言った。「ない」


ミオが言う。「ある」


俺は短く返した。「どこ」

ミオが短く返した。「左」

「どの左」

ミオが短く返した。「レンの左」

「今日は俺基準なんだ」

ミオが短く返した。「早く見て」

枝の奥。

低い位置。

本当にあった。

行きに自分で結んだのに、角度が変わるだけで見え方が違う。

「これ、夜なら無理だな」

エダンが言う。「だから夕方までに戻る」


兄の声みたいだった。

俺は少し笑った。

村へ戻る途中、ミオが何度も振り返った。

地図と景色を合わせている。

俺は空を見ていた。

白嶺は最後まで出てこなかった。

それなのに、昨日より近く感じた。

見えたからじゃない。

今日、山の端を一時間歩いたからだ。

宿へ戻ると、女将が時計を見る。

何も言わない。

エダンの兄も広場にいた。

何も言わない。

エダンが、

「間に合った」

と言った。

兄はそれだけ返した。「見れば分かる」


その日の夜。

机の上に、今日の地図を広げた。

短い。

町から村までの道よりずっと短い。

岩壁まで。

しかも途中は確定線じゃない。

点。

点。

点。

灰色の紐の場所。

雪。

風。

蹄跡。

俺が言う。「全然進んでないな」


ミオが聞く。「一日で?」


俺はうなずいた。「うん」

ミオが言った。「普通じゃない」

「ゲームだと、もうちょっと」

ミオが言った。「ゲームだけど」

そうだった。

エダンがパンをちぎる。

俺は答える前に肩を回した。「明日も行く?」


痛い。

朝より少し。

「明日は休む」

二人が止まった。

エダンが短く返した。「何」

俺は首を振った。「いや」

「レンが?」

俺はそう返した。「俺だって休む」

「誰に言われた?」

俺は短く返した。「肩」

説得力が強かった。

翌日は、本当に行かなかった。

その代わり、やることが増えた。

灰色の紐。

もっと見つけやすく、他人には道案内に見えないもの。

ミオは結び方を変えた。

二重。

片方だけ長く垂らす。

地図には向きも書く。

エダンは兄から古い革手袋を持ってきた。

俺は町で小さなランプを買った。

「穴入る気?」

店主に聞かれた。

店主が言った。「まだ穴か分からない」

「じゃあ何でランプ買うんだ」

「分からないから」

店主は少し考えて、

「冒険者って便利な客だな」

と言った。

褒められてない気がする。

二日後。

また北東へ入った。

荷物は前回より少ない。

ランプは増えた。

肩はだいぶまし。

灰色の紐は、帰り側から見える位置へ結び直しながら進んだ。

昨日の場所まで、前回の半分くらいの時間で着いた。

一度歩いただけで、こんなに違う。

同じ木。

同じ岩。

同じ雪。

でも迷いそうな場所が先に分かる。

俺が言う。「これ好きだな」


俺は短く返した。「何が」

ミオが短く返した。「二回目」

「珍しい」

ミオが言った。「一回目より速い」

「それが理由?」

ミオがうなずいた。「うん」

ゲームの攻略動画を見る時は、最短ルートにあまり興味がなかった。

自分で一回迷ったあとなら、たぶん別だ。

ここで曲がる。

ここは滑る。

この枝は顔に来る。

全部、自分の情報になる。

岩壁へ着く。

前回の窪み。

風は今日も弱い。

山羊の糞は増えていた。

「来てる」

エダンがしゃがむ。

エダンが聞き返した。「いつ?」

俺は短く返した。「分からん」

「そこは分からないんだ」

俺はそう返した。「何でも分かると思うな」

村代表として正しい。

俺はランプを出した。

火をつける。

窪みの奥へ近づく。

昨日は暗くて岩の影だと思っていた場所。

光を当てると、奥行きがある。

一メートル。

二メートル。

その先は、岩が狭くなっている。

人間が立っては入れない。

しゃがめば。

ミオが先に言う。「レン」


俺はそう返した。「今日は入らない」

「まだ言ってない」

「顔」

便利な言葉になってきた。

俺はランプを近づけるだけにする。

炎が揺れた。

外側へ。

エダンが言う。「風?」


もう一度。

ランプを奥へ近づける。

炎が、ほんの少しこちらへ倒れる。

中から空気が来ている。

強くない。

顔を近づける。

湿った石の匂い。

冷たい。

いや。

外より少しだけ、冷たくない?

「気のせいかな」

手を入れる。

岩は冷たい。

空気は。

俺が言う。「分からん」


ミオも手を入れる。

しばらく黙る。

俺はそう返した。「外よりは風がない」

ミオが聞き返した。「温度は?」

「測れない」

エダンも手を突っ込む。

三人で岩の隙間へ手を入れている。

知らない人が見たらかなり変だ。

俺が言う。「何してんだろ、俺ら」


エダンが言った。「レンが始めた」

「参加したじゃん」

エダンが急に手を引いた。

「何か触った」

全員止まる。

俺は短く返した。「何」

エダンが短く返した。「知らん」

「動いた?」

エダンが短く返した。「たぶん」

「生き物?」

エダンが短く返した。「知らんって」

俺はランプを奥へ向けた。

影。

石。

何もいない。

もう少し近づける。

奥で小さい音がした。

かさ。

エダンが一歩下がる。

俺も下がった。

ミオは動かなかった。

ミオが言った。「何でミオ下がらないの」

「二人が邪魔で下がれない」

すぐどく。

もう一度音。

今度は見えた。

小さい。

灰色。

ネズミみたいなものが、奥の隙間から出てきた。

口に枯れ草をくわえている。

俺たちを見る。

止まる。

戻る。

エダンが言った。「……ネズミ」


「たぶん」

ミオ。

「びびった?」

俺。

ミオが言った。「レンも下がっただろ」

俺は短く返した。「戦術的に」

「二歩」

見られていた。

ネズミはどうでもいい。

でも、奥から出てきた。

枯れ草まで持っている。

俺が言う。「奥、続いてる?」


ミオはすぐ答えない。

地図へ何も描かない。

俺はそう返した。「小さい生き物が通れる」

ミオが聞き返した。「人は?」

「まだ分からない」

それで終わり。

今日はそれでいい。

俺たちは窪みの外を調べた。

岩壁に沿って左右へ。

右は崩れた斜面で終わる。

左は木が密すぎる。

蹄跡は窪みへ集まる。

山羊が中へ入るのか。

ここで風を避けているだけなのか。

小さい抜け道があるのか。

分からない。

昼を食べる。

岩の窪みで。

外はまた風が強くなった。

枝が揺れる。

ここにはほとんど来ない。

パンを食べながら、俺は外を見る。

俺はそう返した。「これだけでも使えるな」

エダンが短く返した。「何が」

「避難場所」

エダンが頷く。

「雨も少し避けられそう」

ミオが地図へ初めて書いた。

《風弱い。三人休憩可》

穴、とは書かない。

「そこ書かないの?」

俺が奥を指す。

俺は短く返した。「未確認」

「ネズミ確認した」

「ネズミ用地図じゃない」

正しい。

帰る前に、窪みの入口をもう一度見る。

岩。

苔。

山羊の糞。

小さな隙間。

宝箱もない。

光る印もない。

クエストも出ない。

それでも、次に持ってくるものは決まっていた。

細い縄。

もう少し小さい灯り。

膝を守る布。

たぶん、着替えも。

エダンが聞く。「次、入る?」


エダンが短く返した。「入れるなら」

ミオが短く返した。「狭いぞ」

「痩せる?」

ミオが言った。「二日じゃ無理だろ」

ミオが地図をたたむ。

ミオが言った。「入る前に、外をもう一周」

エダンが短く返した。「慎重だな」

「二回目は好きなんでしょ」

言い返せなかった。

帰り道。

灰色の紐を、今日は一つも見落とさなかった。

村が見えたところで、俺は地図を開いた。

短い線。

岩壁。

その端に、小さな文字。

《風弱い。三人休憩可》

白嶺を越える道とは、どこにも書いていない。

でも。

次に行く場所としては、十分だった。


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