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世界リセットなし。~死んだら別人生、それでも俺の歩いた道は残るVRMMO~  作者: ユミヒロ


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第12話 夜の音

夜中、音で起きた。

鐘。

一回。

二回。

三回。

宿の床で、俺は毛布から顔だけ出した。

「何時?」

隣から返事がない。

ミオはもういなかった。

速い。

外へ出ると、村の東側で火が動いていた。

松明。

人が走っている。

誰かが叫ぶ。

「柵!」

俺も走った。

寝起きで足がもつれる。

一回だけ壁へ手をついた。

見なかったことにする。

村の東の柵へ着く。

灰狼がいた。

一匹じゃない。

四。

いや、奥にもう二匹。

昨日まで戦ったのより大きい。

背中の毛が黒い。

【黒背灰狼 Lv6】

表示を見て、ちょっと目が覚めた。

俺、Lv2なんだけど。

「レン!」

エダンがいた。

弓を持っている。

自分のじゃない。

村人から借りたらしい。

構え方が危ない。

「撃てる?」

「子どもの頃に少し」

「その言い方、不安」

「今言う?」

一匹が柵へ体当たりした。

杭が鳴る。

村人が槍で追い返す。

別の一匹が横へ回る。

俺は短剣を抜いた。

届かない。

当たり前だ。

狼相手に短剣で柵の外へ出るほど、今日は寝ぼけていない。

「カイは?」

「北!」

「セナは?」

「屋根!」

上を見る。

いた。

食堂の屋根。

弓を引いている。

矢が飛ぶ。

狼の前足へ刺さった。

倒れない。

でも走り方が崩れる。

そこへカイが横から槍を入れた。

一匹目。

俺の出番がない。

いいことだ。

でも、柵の右端で音がした。

バキ。

古い杭が一本折れた。

隙間。

灰狼が頭を入れる。

村の子どもが、そのすぐ後ろにいる。

何でいる。

「下がれ!」

俺が走る。

狼が肩まで入る。

俺は短剣じゃなく、柵の横に立ててあった木槌を取った。

頭を殴る?

違う。

折れた杭の根元。

そこへ木槌を叩き込む。

土が崩れる。

杭の残りが傾く。

隙間が広がった。

「レン!」

怒鳴られた。

分かってる。

狼が入る。

俺は横へ下がる。

狼の前足が土へ落ちる。

昨日、炭車用に掘った排水溝。

浅い。

でも脚一本なら取れる。

身体補助が動く。

短剣を抜く。

首じゃない。

肩。

一回。

浅い。

狼が暴れる。

俺の腕が持っていかれる。

痛い。

二回目は無理。

「右!」

ミオの声。

反射で下がる。

鍬が飛んできた。

いや、飛んできたんじゃない。

村人が横から振った。

狼の鼻先を叩く。

俺はその隙に短剣を抜いた。

血。

少し。

怖い。

初めて灰狼を倒した時より、ずっと近い。

狼が俺を見る。

俺も見る。

動く。

先に来た。

噛みつき。

身体補助が逃がそうとする。

任せる。

途中で左足だけ逆へ踏む。

狼の顎が肩をかすめる。

痛みが走る。

でも横へ抜けた。

後ろからエダンの矢。

脇腹。

浅い。

「刺さった!」

「喜ぶな、まだ!」

「初めてなんだよ!」

言ってる場合か。

狼が向きを変える。

そこへセナの矢。

今度は首。

狼が倒れた。

静かにならない。

まだ五匹。

柵の外で吠えている。

一匹が逃げた。

二匹目も。

群れが崩れた?

違う。

奥を見る。

もっと大きい影。

いや。

狼じゃない。

灰狼たちが何かから逃げてきた?

一瞬だけ、そう思った。

でも影は森へ消えた。

見えないものを追う余裕はない。

「柵!」

兄の声。

村人が穴を塞ぐ。

俺も木を運ぶ。

カイが戻る。

「北、二匹」

「倒した?」

「追い返した」

「セナは?」

「矢、あと四本!」

屋根から返事。

ミオはどこだ。

探す。

柵の内側を走っていた。

戦ってない。

人を動かしている。

「そこ閉じて!」

「松明、右!」

「子ども下げて!」

地図係じゃない。

今は村の位置を一番見ている。

一匹が柵を越えた。

完全に。

村の中。

誰かが叫ぶ。

俺は走った。

狼は鶏小屋へ向かう。

違う。

その先。

人。

ネリ婆さん。

何で夜中にいる。

モグまでいる。

山羊は平然と草を食べている。

強い。

「婆さん、下がって!」

「誰が婆さんだ!」

そこ?

狼が跳ぶ。

ネリ婆さんが手に持っていた棒を振った。

ぱしん。

鼻へ当たる。

狼が一瞬止まる。

強い。

「レン!」

ミオ。

俺は狼へ入る。

短剣。

今度は身体補助へ逆らわない。

踏み込みだけ自分。

刃は補助に乗せる。

肩口。

深い。

狼が回る。

追わない。

カイの槍が来る。

反対側から兄の斧。

最後に俺じゃない。

三人で倒した。

【Lv 2 → 4】

表示が出た。

二つ上がった。

嬉しい。

でも今は邪魔。

閉じる。

残った灰狼は、しばらく柵の外を回ったあと森へ消えた。

追わなかった。

誰も追おうと言わなかった。

夜明けまで、柵を直した。

俺は肩へ布を巻かれた。

痛い。

エダンは矢が一本刺さっただけで、ずっと自慢している。

「俺の矢な」

「セナのが先に刺さってた」

「でも俺のも刺さった」

「浅かった」

「刺さった」

三回目。

もう止めない。

ミオは泥だらけの地図を乾かしている。

端が一枚、破れていた。

気づいたけど言わなかった。

朝。

村の広場へ人が集まった。

怪我人はいる。

重い人はいない。

鶏が二羽いなくなった。

ネリ婆さんのモグは無傷。

一番納得いかない。

村長がカイとセナを見る。

「昨夜、あんたらがいなかったら北が抜けてた」

二人は何も言わなかった。

今度は俺たちを見る。

「あの道で来たんだろ」

エダンが少し固くなる。

村長は続けた。

「道を知られたくない奴もいる」

何人かが頷く。

「でも、昨夜みたいな時に人が来られるなら助かる」

別の何人かが頷く。

「炭も売れる」

兄が言った。

「知らん奴も来る」

斧の男が言った。

「塩は安くなるかもしれん」

女将。

「ゴミ増える」

誰か。

「宿代取れる」

女将。

強い。

話がまとまらない。

俺は少し安心した。

全員が同じことを言う村より、こっちの方が信用できる。

村長が俺へ聞いた。

「レンはどう思う」

急に来た。

俺は答えかける。

やめた。

昨日までなら、たぶんすぐ言っていた。

道は使った方がいい。

便利だ。

人も来る。

でも。

俺は破れたミオの地図を見る。

エダンの兄。

ネリ婆さん。

塩。

炭。

昨夜の狼。

知らないプレイヤー。

全部、同じ道の話なのに、欲しいものが違う。

「……一個だけ決めるの、無理じゃない?」

村長が眉を寄せた。

「どういう意味だ」

ミオが顔を上げる。

俺もまだ分からない。

でも、口に出してみる。

「全部見せるか、全部隠すかじゃなくて」

そこまで言って。

俺は止まった。

エダンがこっちを見る。

「じゃあ、何を見せる?」

それは。

まだ、分からなかった。

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