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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第2章 誰かにとっての……

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第2話・確定された未来予想図 ~恨みの言葉は誰に向け~

第2章 誰かにとっての……



     第2話・確定された未来予想図 ~恨みの言葉は誰に向け~



「ジョーン皇子に残されている呪いと、アインの失明の原因は同じだ」


「……ぇ……?」



 淡々と続けられたシリウムの説明に、インスは軽く目を見開いた。



「眼球自体に傷はない。周囲もきれいなまま……一見すると、どこも悪いようには見えない……けれど、ジョーン皇子はお目覚めになられた時からずっと、両目を失明されたまま……その原因と思われるのが、五年前に魔族の襲撃を受けた際に奪われた『瞳の宝石』と言うものである可能性……ここまでは、皇子がお目覚めになられて、早い段階で我々にも共有されていた」


「……………」



 今、さりげなく国家機密を共有された?



 顔色を変えたインスを無視して、目だけが黙って聞けと強く伝えて、シリウムは話を続ける。



「アインに正体を見破られた魔族は、アインからその『瞳の宝石』を抜き取って、『コレがそうだ。』とわざわざジャネット皇女らに()()()()()らしい……」


「……っ!?」


「……その上で、バルバ島の城にある。と言い残して消えたそうだ……」



 そこまで聞いて、インスは思わず目を閉じた。



 確定だ。



 目標も、目的も、場所さえもはっきりしていて、ジャンヌが()()はずがない。



 だって、誰もそこに行って、取り戻そうとはしないのが分かり切っている。



 倒せるはずもない純魔族と戦って、多くの犠牲を出して、取り戻せるかもしれないのは皇子やアインの視力だけ。



 被害が大きすぎて許可を出せるはずがない。



 なら、どうするか?



 ジャンヌが勝手に向かう。


 皇孫皇女が、女神の巫女が、皇城を出奔して、一人でも行こうとしてしまう。



 結果は、良くて近くの町か村で確保。


 最悪、どこかで誘拐されたり、行き倒れて命を落とす。



 流石にそれは国として許容できない。



 ならどうするか?



 最低限の、精鋭と認められるような者を付けて、極秘の討伐隊として送り出す。


 そして、できることなら途中で諦めさせて帰らせる。


 最悪、バルバ島にあるという魔族の城まで進んだとしても、ジャンヌだけは脱出させて生き延びさせる。



 それが求められることだ。



(……つまり、その討伐隊に組み込まれた他の者には全員死ねと、言っているのと同じこと……しかも、それで確実に脱出させられる保証すらない……)



 皇女殿下の我儘で、死出の旅路に付き合わされる。



 その未来がほぼ確定……嫌なら出発する前に自害しろということだ。


 死んでしまえば、連れて行くことなどできなくなる。



 けれど、医務殿はそれを阻止するための場所。


 即死してしまえばどうすることもできないが、そうでなければ……可能性が僅かでもあるのならば生き延びさせるために全力を尽くす。



 今、意識を取り戻して、生き延びてしまった以上、退路は断たれたも同然。



 もし、万が一、ジャンヌが自分で動くことをやめてくれれば……



 ジョンとアイン、二人が視力を諦めれば。


 そして、自分とアインが、呪いを受け入れて、誤魔化しながら付き合って行けば。



 討伐隊が組まれることもなくなるだろう。



 ……ありえないが。



(……あれだけ、お話ししても、全く理解して下さらない皇女殿下に、いまさら何を期待しろと?)



 既に言葉は尽くした後。


 なのに、全く理解を得られない。



 なら、ジャンヌが止まる可能性に期待するのは無意味だ。



「分かったか? お前は早急に体を回復させ、旅にも呪いにも耐えられるだけの体力をつける必要がある……アインも、意識を取り戻せばそれを強いられる……」



 だからといって、治療の手を抜くことなどできない。



「……それでなくてもアインは、神剣に体を壊されたばかりだ……今後も使う可能性がある以上、体力を付けさせなければならない……」


「……は……?」



 続けられた言葉の意味が分からなくて、インスはポカンと口を開く。



「……アインは呪師長から魔族を引きはがすのに、その体内に入り込んで、使い手になることを強要している水の神剣の力を使ったようだ……」


「……からだを、こわされた……?」



 神剣の力を使ったことと、神剣に体を壊されたという話が結びつかなくて、頭の中が混乱する。


 神剣を使うと、身体が壊れる?


 そんなことは……



「……っ!?」



 不意に、呪師長室の箱の中で、アインが激高して水の魔力を解放した瞬間を思い出す。


 理由は分からない。


 けれど、凄まじい悪寒に襲われて、ダメだと、思ったことを。



「水の神剣は、制御機能が壊れているらしい……使い手の限界を超えて力を引き出せる代わりに、耐えきれなくなった身体が自壊する……アインはまだ子供だ……しかも、数日前まで、止血さえできなかった怪我を抱えていて、漸くまともな治療ができるようになってきたばかりだった……大きな力を使えるほど、健康な状態ではない……」



 そんな状態で、神の力が物質の形を取ったものと言われる神剣の、その力を解放した。



 結果はもちろん、器が耐えきれなくなっての自壊。


 全身をズタズタに引き裂かれ、のたうって血を吐いた。



 聞かされたインスは意識が遠のくのを感じる。



 まだ終わっていないぞと言われて何とか繋ぎ止めたが、まだこれ以上、何があるというのか……



「……お前はもちろん、アインもそんな状態だし、この後、聖木祭や新年参賀を控えている……だから、どれだけ早くても来月末前後にしか出発はできないだろう……その間に、ジャネット皇女の説得ができるかどうかが今、皇城側で行われていることだ……が……」



 言って、溜め息を吐いたシリウムも分かっている。


 もちろん、黙って話を聞いているラティスも、言われているインス自身も。



 つまり、引き延ばせても来月末頃までが限界だと、誰もが理解している。


 それまでに、調整を終えろと、暗に言われていることも。



「……よく、いままで……」



 口の中で囁いたインスの声を、シリウムもラティスも聞き取れない。



 聞き返した二人に、緩く頭を振ったインスも、それ以上は何も言わない。



 聞かせられるはずがない。



 女神に対する、悪態なんて。


第2章第2話をお読みいただきありがとうございます。


インスに対してさらに絶望的な「未来予想図」が突きつけられます。


ジョンの視力が失われている理由、そしてアインが左目を失明した理由が、魔族の最悪の「置き土産」によるものだと判明。


そして、その魔族が言い残した言葉によって、皇女殿下の行動は完全に決定づけられてしまいました。


インスがどれほど絶望しても、国の「仕組み」は皇女を守るために、インスやアインたちを容赦なく生還の保証のない討伐隊へと組み込んでいきます。


誰もが「最悪」だと分かっていながら、魔族の掌の上で踊らされるしかないこの息苦しさ……。


果たしてインスはここからどうこの「確定された未来」に向き合っていくのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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※本編シリーズはこちら!

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