↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第1章 愉悦の闇が残す傷痕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/32

第5話・突き付けられた残酷な ~己の立場を思い知る~

第1章 愉悦の闇が残す傷痕



      第5話・突き付けられた残酷な ~己の立場を思い知る~



 首筋に、チクリとした痛みを感じて、インスはゆっくり目を開く。



「……っ……!?」



 見下ろす男女の姿を目にし、それがシリウムとラティスだと理解した瞬間、飛び起きようとして……動けなかった。



 拘束されていることを思いだすが、それだけではなく、また口を封じられている。



「魔法は使うな。魔力を動かすな。アインが苦しむ」



 不満げに声を上げようとしたインスに対し、シリウムが冷徹に、有無を言わさぬ強い口調で告げた。



「………?」



 意味が分からなくて、インスは微かに首を傾げる。



「お前たち二人には、魔族によって呪いが刻まれている」


「……っ……!?」



 淡々と、感情を押し殺した声での説明に……思い出す。


 胸に手を沈められ、心臓と、精神体の全身に刻み込まれた呪紋(じゅもん)のことを。


 まさか、同じことをアインもされた?



「お前が魔法を使おうとして魔力を動かせば、アインが苦痛に襲われる」


「っ!!??」



 目を見開いたインスに、言い聞かせるようにシリウムは話を続ける。


 落ち着かせて、話を聞き出すには、先に今、分かっていることを伝えて、理解させないとダメだと判断したためだった。



「逆もまた然りだ。そして、相手側が限界を超えると、今度は魔法を使おうとした側が苦痛に襲われることになるのだろう……先ほど、お前がいきなり気絶したのは、急に苦痛に襲われたからだろう?」


「…………」



 聞くうちに、インスの顔から血の気が引いていく。



「アインは呪師長(じゅしちょう)室でお前を発見した後、神剣の力を使って呪師長に憑依していた魔族を引きはがそうとしたらしい。折悪く、ジャネット皇女らが、お前が行方不明になる直前に会った呪師長に話を聞きに来て……指導者、監督者不在の状態で『皇宮呪師長(こうぐうじゅしちょう)を魔法で攻撃している』アインを見つけた」



 それは違う! と思わず叫びそうになったが、くぐもった音が不満げに漏れるだけ、シリウムとラティスも無言で頷くことで、それが間違った認識であったことを認める。



「真実は違う。けれど、そう見えたことは確かで、当然、呪師長の救出に周囲は動く……まあ、護衛官らが動くよりも早く、ファン卿がアインの魔法を神剣で斬って呪師長を解放した……魔族は呪師長の体内に憑依し続けられなくなって姿を現し、お前とアインに呪いを刻んだ」



 まだ他にもあるが、今すぐ理解させる必要があるのはこの辺りか……



「……分かったか? お前は絶対に魔法を使うな。魔力を動かすな。最低でも、アインが意識を取り戻すまでは……」


「……っ……!?」



 それはつまり、アインは今、意識がない状態ということ。


 もしかして、先ほど自分が、不用意に魔法を使おうとしたせいで?



 青ざめて、震え始めたインスが何か誤解をしていそうな雰囲気は感じたが、今は事情聴取が先。


 話を聞ける状態にしたのなら、それ以上の説明や誤解を解くのは後だ。



「分かったら、事情聴取の続きだ……話せるか?」


「…………」



 シリウムに問われ、インスはぎこちなく頷く。



 インスもまた、シリウムやラティスの様子から、すべての話が終わってはいないことを感じ取っていた。



 再び、ラティスが宣誓を行い、インスの口を封じる布が取り除かれる。



「……アイン、くんが……血まみれで、痙攣、しているのを……魔族が……」



 医務殿で目を覚ます直前の、記憶が途切れる直前の光景を、震える声を絞り出して、何とか言葉にした。



「……つ……かまえ、て……いて、そ……っ、れを、みました……」



 そこで途切れています。



 無造作に吊り上げていたとは、どうしても言えなくて、嘘ではないけれども正確ではない言い方になってしまったが、意味としては同じであるため、宣誓に引っかかることもなく語り終える。




 青ざめた顔で、息を吐くインスを見ながら、薬を投与しておいて正解だったな……と、シリウムは内心でこっそりと呟く。



 気絶したインスを起こすだけならば、普通に気付けの薬を飲ませればいいだけ。


 けれども今回、シリウムは心を落ち着かせる薬をセットにして首筋に刺して目を覚まさせた。



 正直、使いどころや分量の判断を間違うと副作用が強すぎるので、普段使うことはない。


 けれど、今回は早急に事実確認と……何より、この後の情報開示でインスが混乱し過ぎるのを防がなければならない。


 そう判断してのことだったが、それ以前の問題で、薬を投与しても目にしたアインの惨状を口に出すのを厭う様子を見れば、使っていなければ話が進まなかった可能性が高かった。



 発言に間違いや問題がないことを宣言したラティスが魔法を解き、一瞬、病室に沈黙が落ちる。


 少し乱れたインスの呼吸音だけが微かに響いていて、見下ろすシリウムとラティスは、どうしたものかと微かに躊躇う。



「……アイン君は……無事、なんですか……?」



 けれど、苦し気にしたまま、目だけが真剣に二人を見据えたインスの問いかけに、答えない方が問題だろうと判断する。



「……さっきも言ったが、生きている。ただ、無事、と言い切れる状況ではない……」


「……っ!」



 予想は、していた。


 けれどもはっきりと認められてしまって、息を飲んだインスは思わず起き上がろうとする。



「じっとしていろ……これもさっきも言ったが、会わせることはできない」


「っ。どうしてですか……?」



 きっぱりと言い切るシリウムを睨むように見て、問い詰めたインスに対し。



「アインの宣誓が済んでいないからです」


「……ぇ……?」



 答えを告げたのはラティスの方だった。


第1章第5話をお読みいただきありがとうございます。


目を覚ましたインスを待っていたのは、安堵とは程遠い残酷な真実。


なぜ自分が気絶したのか、なぜ魔法を使ってはいけないのか。


シリウムの口から語られる魔族の呪いの仕様は、インスにとって「自分がアイン君を傷つけてしまった」という最悪の事実を突きつけるもの。


それでも、ただアインの無事を確認したい、会いたいと願うインスですが、ここでも神殿の『宣誓』という厳格な仕組みが立ち塞がります。


お互いを想い合うことすら許されないような魔族の悪意と、情状酌量のない国家のルールの狭間で、もがき苦しむインスの焦燥と絶望。


彼らの過酷な運命は、まだ始まったばかりです。


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。