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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第1章 愉悦の闇が残す傷痕

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第4話・それは悪辣な仕掛け ~相互に苦痛を与える呪い~

第1章 愉悦の闇が残す傷痕



      第4話・それは悪辣な仕掛け ~相互に苦痛を与える呪い~



 アインに会わせて欲しい。


 そう告げたインスに対し、はっきりと拒絶を告げたシリウムの言葉に、インスは頭が白くなるのを感じる。



「「……っ……!?」」



 直後、ゾワリと走った悪寒にシリウムとラティスはすぐさま呪文を唱え始めた。


 けれど……



「……っ!? ぐ……っ!?」



 魔法を使おうとしたインスが、突然びくりと体を跳ねさせ、そのまま意識を失う。



「「……………」」



 何が起きたのかと、唖然としてシリウムとラティスは気絶したインスを見つめる。



「ゾナール神官長!!」



 そこに、五十代に入ったくらいの外見をした男性の神官呪師(しんかんじゅし)、チェスパス=インゼラが慌てた様子で駆けこんできた。



 グレーに近い銀の髪は襟足が長めで、横髪も顎につくくらいの長さ。紫みを帯びた青い瞳を持つ、主神殿全体を統括する大神官位に就くチェスパスは、医学を専門とする医呪神官(いじゅしんかん)でもある。



 アインの容体を見守る役割を任せていたのだが、恐らくは何かがあった。



「アインが突然痙攣し、心肺停止の状態に陥った……すぐに蘇生はしたが……」


「「……な……っ!?」」



 報告に、シリウムだけではなくラティスも驚きに絶句する。



 アインが心肺停止し、ほぼ同時にインスもひきつけを起こして気絶した、などと……普通に考えてありえない。



 驚きながらも、すぐにインスとアイン、双方の容体確認と処置が開始された。



 一旦報告だけして、すぐにチェスパスはアインを収容している病室に戻り、インスがいるこの病室にはラティスと入れ替わりで部屋の外に出していた神官呪師らを呼び戻す。



 手早く容体が確認されて行き……



「……特に悪化している個所は無し、か……」



 直前の検査結果と、それほど大差のない結果が出て首を傾げる。



「こちらもだな……一時的に危険な状態には陥ったが、それだけだ……」



 アインの方の処置を終えたのだろう、チェスパスが再び報告にやってきて、居合わせたラティスと共に情報交換を行う。



 正直、判別(はんべつ)神官であるラティスができることはないのだが、医呪神官では気づけない視点があればと、まだインスから話を聞き終わっていないため、残っていた。



「……お二人がそれぞれに処置をされている間に、わたくしなりに検討してみたのですが……」



 その期待通り、ラティスは医呪神官の二人が見落としていたピースを口にする。



「……あの二人には、確か、相互に呪いがかけられていると、報告されていました……」


「「……っ……!?」」



 ウスニーが主神殿をわざわざ訪れ、最上層部が招集されて聞かされた情報の中に、確かにそれがあった。



 魔族が、撤退する前に、インスと、アイン。双方に呪いを刻んでいった。


 それも、魔法を使おうと、魔力を動かすと……相手が苦痛に襲われる呪い。



 その意味することは……



「……つまり、相手というのは、インスが使おうとするとアインが、アインが使おうとするとインスが、ということか……」


「……今のアインが、今以上の苦痛に襲われれば……心肺停止に陥っても確かに不思議はない……」



 シリウムが言語化し、チェスパスが腕を組んで唸る。



「……だが、その理屈で行くと、インスも苦痛に襲われた理由はなんだ?」


「これは、可能性のお話でしかありませんが……」



 首を傾げるシリウムに、またしてもピースを提示したのはラティスだった。



「……苦痛に襲われる相手が限界を超えた時、魔法を使おうと、魔力を動かした方へと、その苦痛が()()()()とすれば?」


「「……っ……!!」」



 つまり、苦痛に相手が耐えられる間は良くても、耐えきれなくなった時には自分自身も苦痛に襲われ、その時には、相手は意識を失ってしまったか……最悪、命を落としかけているということ。



 そしておそらくは、気絶が条件だろう。


 かの魔族の悪辣さからして、そう簡単に命を奪うことはないと、嫌な意味で確信できる。



 即ち、徹底的に甚振り、苦しめること。


 そう簡単に、死んでしまっては()()()()()、そんな歪んだ愉悦でその状態を作り出したに違いない。



「……今回の場合、アインはもともと意識がなかった……だから、ラント呪師が魔法を使おうとし、その呪いの効果で苦痛に襲われた際に、極わずかの間心肺停止し、呪いの苦痛はラント呪師を襲ったということか……」



 話をまとめるように言ったチェスパスに、シリウムもラティスも無言で頷く。



 そうとしか考えられないし、そうだとすれば納得できてしまう。



「……厄介、なんてものではないな……」



 重い溜め息を吐くチェスパスに、シリウムも頭を抱え、表情を一切動かさないながらも、ラティスもまた複雑な思いを抱く。



「……早急に、インスには言い聞かす……多少、脅すような物言いにならざるを得なくなるかもしれないがな……」



 表情を引き締めて宣言したシリウムに、チェスパスもラティスも深く頷き返す。



 そう、話を聞かずに、魔法を使おうと魔力を動かせば……インスが「護りたい。」と思っているアインを、インス自身が苦しめることになってしまう。



 だから、早急に、最初に、言って聞かせなければならない。



 話がまとまったところで、シリウムとラティスはインスの病室に、チェスパスはアインの病室へと戻った。


第1章第4話をお読みいただきありがとうございます。


いきなりアインの心肺停止、そしてインスの気絶という、心臓に悪い展開からのスタートです!


医療のスペシャリストであるシリウムやチェスパスでさえ頭を抱える異常事態の中、判別神官長ラティスの冷静な分析により、魔族が二人に残した『最悪の置き土産』の正体が浮かび上がります。


ただの拷問ではなく、心を折るためだけに緻密に計算されたその呪いの悪辣な仕様……。


この真実を、目を覚ましたインスにどう伝えるのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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