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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第6章 破綻と瓦解の一線を

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第3話・唾棄する器の汚らわしさに ~神秘の瞳が視るものは~

第6章 破綻と瓦解の一線を



     第3話・唾棄する器の汚らわしさに ~神秘の瞳が視るものは~



 病室の前で寝ずの番をしていた看護要員の神官呪師(しんかんじゅし)は、室内の小さな騒ぎに気づいて眉を顰める。



(……ラント呪師(じゅし)は今日、特別な処置が必要になり、その結果、酷く疲弊していて、アインが添い寝する形で、二人ともを休ませることになった……筈ですが……)



 アインもまた、限界を超えてまで機能訓練を続けようとするから、少し強引にでも休ませる必要があると検討されていた最中。


 毎晩薬で眠らせるわけにもいかないので、二人を一緒に休ませれば落ち着いて休めるかとも思ったのだが……



(……何か、様子が……)



 おかしい。



 そう思って、少しだけ扉を開いて、中の様子を見る。



「っ!? ラント呪師!!」



 覗き込んだその瞬間、力の抜けたインスの身体がベッドの下に落ちて軽い音を立てた。



 驚いて声をかけ、扉を開く。



 常夜灯の明かりだけではすべてを見通せなくて、部屋の明かりをつける。



 そして……



「っ!!?? アイン!!」



 ベッドに横たえられたアインが、血を吐いて痙攣しているのにも気づいて悲鳴を上げた。



「……っ!」



 素早く歩み寄って、まずは床に倒れたインスの様子を見る。



「……っ!! 緊急対応!!」



 そして、即座に扉の外に向かって声を張り上げた。


 すぐにざわめきが遠くで起こる。



「……アイン!」



 続いて、ベッドに横たえられたアインの様子を見る。



 喘鳴を繰り返し、時折噎せるように血を吐くアインも意識はない。


 けれど、まだ呼吸も、鼓動もしっかりしていて、何が原因でこうなっているのかは分からないが、インスよりは多少、余裕がありそうだった。



「どうした!! インス!? アイン!?」



 先ほどの声で駆けつけたシリウムが、中を覗き込んで床に倒れたインスの姿と、ベッドの上の血まみれのアインの姿に目を剥く。



「神官長! ラント呪師は心肺停止の状態です! アインも重体!!」


「なっ!?」



 振り返った看護担当の神官呪師の報告に一瞬絶句する。



「蘇生処置! 急げ!! インゼラ大神官にお越しいただけ! アインをお任せする!! それまでつなげ!!」


「「「「はいっ!!」」」



 シリウムに続いて駆けつけた神官呪師らが素早く動き出す。


 一人がすぐさま踵を返し、別の一人がアインの処置のために部屋の準備に向かう。



「インスをベッドに上げる。アインは移動させろ」


「分かりました」



 部屋付きの神官呪師がアインを抱き上げ、入れ替わりでシリウムと、一緒に来た神官呪師の一人がインスをベッドに上げる。



 動かされたことで、ほんの少しだけ意識を取り戻したアインは……



(……いんすさま……?)



 ぼんやりとした視界の中で、虚ろな表情で()()()()()()()()()インスの姿を見た。



(……いんすさま、ぼくも……)



 重い腕に力を入れて、必死に手を伸ばす。



 それに気づいたように、()()の瞳をしたインスが、アインを見て軽く目を見開く。



(……ぼくの、ぜんぶを、あなたに……だから……)



 おいていかないで……



 いっしょに、つれていって……



(……あいんくん……)



 泣き笑いのような表情を浮かべた()()()が、囁くようにアインを呼ぶ。



(……それは、できませんよ……)



 それは……それだけは、許容できない。



 自分のせいで、この小さな子供が、失われるなんて……


 それだけは、何があっても許容できない。



 例え、この()()()が、どれほど穢れ、汚いものに成り下がっても……



(……それでも、いいのですか……?)


(? いんすさまは、いんすさまですよね?)



 汚れている。


 汚い。


 穢れたガラクタ。



 そんなものが、君に触れてはいけない。



 そう言うインスに、アインは不思議そうに瞬きする。



(……っ……!?)



 ああ、この子は……



(……なら、まだ、ダメですね……()()()()()()……)


(おいていかないで……いんすさま……)



 ふわりと微笑んだインスの、その微笑に、怖くなってアインは縋る。



(……ええ……君が、望んでくれる限りは……)



 部屋から連れ出されるアインの目に、そう応えて、紫色の瞳のインスが、ベッドに横たえられ、必死の蘇生処置を繰り返されるインスの中へと消えて行くのが映った。



「……ぃ……んす……さ、ま……?」



 唇が微かにその名を刻んで、アインの意識も再び闇の底へと落ちて行った。


第6章第3話をお読みいただきありがとうございます。


心肺停止にまで陥ったインスと、重体のアイン。


駆けつけたシリウムたち医療陣の必死の蘇生処置が始まります。


自らのからだを「穢れたガラクタ」と蔑んで捨ててしまおうとしていたインス。


しかし、生と死の境目のような深い意識の底で、彼を引き留めたのはアインの純粋で切実な願いでした。


そんなアインの想いが、自己嫌悪で壊れかけていたインスの心に、再び生きるための理由を与えます。


死の淵から舞い戻る決意をしたインスの魂は、再び過酷な現実へと帰還。


そして、再び意識を手放してしまったアイン。


果たしてこの先、彼らを待つものとは……?


次回も引き続きお付き合いいただけますと幸いです。


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


理不尽な暴力や悲痛なすれ違いが続き、読者の皆様にもお辛い思いをさせてしまっているかもしれません。


しかし、この深い絶望と傷跡の先に、彼らが必ず見出していくものがあると信じております。


どうかその過程を最後まで見届けていただけますと幸いです。


過酷な運命に抗う彼らへのエールとして、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想などをいただけますと大変励みになります。


次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


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