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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第6章 破綻と瓦解の一線を

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第1話・不信と嫌悪に覚悟を決めて ~罪悪感が生んだ善意~

第6章 破綻と瓦解の一線を



     第1話・不信と嫌悪に覚悟を決めて ~罪悪感が生んだ善意~



 数時間にも及ぶ()()が終わり、ぐったりとして意識を失ってしまったインスの細い肢体を前に、担当した医呪(いじゅ)神官たちの表情は暗い。



 こんな、人を人とも思わないような()()を、どうして行わなければいけないのか……



 彼は別に罪を犯した犯罪呪師(じゅし)と言う訳でもないのに、今回行われた()()はそれと同様のものになってしまった。



「……皇帝陛下は、一体何を……」


「黙れ。流石に不敬が過ぎる……それに、陛下からではなく、あくまでも『皇帝執務室』からだ」



 思わず、一番若い一人が呟くと、インスを案内して来た……今回の処置チームのリーダーをしている医呪神官が鋭く咎める。



 そうは言うものの、彼もまた不信感がぬぐえないのは確か。



 まだたった十八歳の青年に、同意を得ることもなく強制執行しろ、などと……少なくとも、彼らが知る範囲ではありえない下命。



 確かに、皇帝陛下は国を治める上で、時に非情な判断を下されることもある。


 それは統治者として必要な資質であり、判断だ。



 けれど今回、インスに対して特別処置を強制するよう命令書を持ってきたのは皇帝執務室の秘書官次官である侯爵自身。



 書類はきちんと正規のもので、持ってきた相手も相手。


 一介の医呪神官が疑問を差し挟み、逆らえるはずもない。



 その結果が、彼らから見ればまだ子供ともいえる青年に対しての、犯罪者扱いの様な処置。


 何度、途中で放棄したくなったことか……


 そして、自分たちがそう思うのが分かっていたからこそ、抵抗を封じ、抗議の声も封じ、目を合わせることがないように目隠しまでした。



 もっとも、それで完全に拒絶に気づけないわけではないので、折れそうになる心を何とか保つために、本来インスに聞かせる必要のないことまで口に出し、処置を完遂した。



「……本当に、もし、ラント呪師が拒絶するようなら……」



 ぽつりと、残る一人が呟きかけて、言葉を失う。



 命令書に書かれていた内容を思い出して、三人共が嫌悪感を隠せずに顔を顰めた。



 この内容を、インスが知ったらどうなることか……



「……とにかく、病室に戻して、休んでもらおう……後のことは、神官長のご判断に任せる……我々も、覚悟を決めておくしかない……」



 この処置が、間違いなく非人道的で、見方によっては犯罪行為に当たると、分かっているからこそ、処置に関わる者を最低限にした。



 無言で頷き合って、一人がそっとインスを抱き上げる。



 グラリと揺れた顔色が、白や青を通り越し、土気色に染まっていて……



(……この国は、呪師を同じ()()とは、見なしていないのか……)



 そんな思考が脳裏を過り、眉を顰めて頭を振る。



 行こう……と促され、三人はそろって処置室を出た。




 午後の機能訓練に、インスが一緒に参加する予定だと聞いていたのに、急な処置が必要になって参加できなくなったと伝えられたアインは、心配そうに眉を下げた。



「……インス様、ご無理、されていたのですか……?」


「……いえ……。退院される前に、一度、どうしても受けて頂けないといけない処置ができただけです……恐らく、とてもお疲れになってお戻りになりますから、今夜は一緒に寝てあげて下さい」



 不安げなアインに、伝言を伝えに来た神官呪師(しんかんじゅし)は少し曖昧に微笑んでそう告げる。



「……お疲れなのに、ご一緒して、大丈夫でしょうか……?」



 言われて、きょとりと目を瞬かせたアインはちょっと首を傾げた。



「……むしろ、一緒に休んで差し上げた方が、彼にも良いでしょう……部屋付きの看護担当者には、話しておきますので……」


「…………分かりました……ご迷惑で、ないのなら……」



 重ねて言われて、こくりと頷いたアインの表情に、心配や不安と一緒に隠し切れない喜びも混ざっていて……



(……少しでも、慰めになってくれればいいですけれど……)



 これから行われる処置の内容を思って、心の中で小さく呟く。



 伝え終わると、すぐに処置が行われる部屋へと急いだ彼は……



 自分のこの判断が、この二人の命を危うくする結果になると、この時は欠片も思わなかった。



 処置を受けたインスが少しでも慰められればと……本当に、心からの善意で言った言葉だったのだが……



 彼は知らない。



 インスがアインを想う気持ちの重さを……



 同時に、インスが自分自身に、どれだけ価値を感じていないのかを。



 もし知っていれば……



 それは無意味な仮定ではあったけれど、この日の夜に起きた事件の全容を調べる中で、彼は確かにそう呟くことになる。



 自分自身よりも大切な、愛しい存在に対して、穢れ、汚れた己が、近づくことなどできないと、インスがそう思い、絶望の中で崩れるまで……あと、数時間。


第6章第1話をお読みいただきありがとうございます。


今回は少し時間を巻き戻し、インスの《処置》直後の医呪神官たちの様子と、アインが添い寝をすることになった経緯が明かされました。


皇帝執務室からの強引な命令に対し、実行せざるを得なかった医呪神官たち。


彼らもまた、強い不信感と罪悪感を抱いています。


そして、疲れ果てたインスを少しでも慰めたいという純粋な「善意」。


しかし、その思いやりが、インスの深い自己嫌悪とアインを大切に想う気持ちとの間に、致命的なすれ違いを生んでしまいます。


インスの狂おしいほどの愛情と自己嫌悪が限界を迎える次回……引き続きお付き合いいただけますと幸いです。


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


インスとアインにとって、あまりにも過酷で試練とも言える展開が続いております。


ショッキングな描写が続きますが、「彼らを応援したい!」「どうにか乗り越えてほしい!」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をお願いいたします。


皆様からの温かい応援が、今後の執筆の大きな支えとなります!


次回もどうぞよろしくお願いいたします。


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

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※本編シリーズはこちら!

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