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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第4章 冷徹なる支配者の

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第4話・選ばれるのは ~止まらぬ皇女を止めるため~

第4章 冷徹なる支配者の



      第4話・選ばれるのは ~止まらぬ皇女を止めるため~



 アインの、一見黒にしか見えない深くて濃い紫色の瞳を見つめるインスは、もう一度、そっと左目の辺りを撫でる。


 正確に言うと、頬に手を添えて、指先で目の下辺りに柔らかく触れただけ。



 ちょっと目を閉じたアインは目元に指を持って来られても怖がることはないが、やはり視界に違和感を感じているらしく、時折困惑気味に顔を顰めていた。



「……アイン君は、どうして左目が見えなくなってしまったのかは聞いていますか?」


「……はい……」



 問いかけに、こくりと頷くアインには、それに対して特に何かを感じているような気配がない。



「……では、アイン君の左目を、治す方法に関しては聞いていますか?」


「……ぇ……?」



 続けて聞かれたことに対しては、戸惑ったように首を傾げる。



 なおるの? と言わんばかりで、治す気があるようにも見えなかった。



「……魔族が去り際に残した情報がそれだ……」



 口を挟んだのはチェスパス。


 そう言えば、失明の原因となった瞳の宝石を奪われたことは話したが、治す方法に関しても言い置いて去ったことまでは言わなかった。


 色々とありすぎて話が複雑化しているせいで、何を話してあって、何を伝えていないのかの判断をつけにくい。



「……ぇ……?」



 言われて、一瞬困惑したように首を傾げたアインは……



「……っ!?」



 直後にびくっと体を震わせて、インスを、部屋にいる大人たちを見回す。



「……そう、気づいたな? ジョーン皇子の失明を治すのも、同じ方法で可能となるだろう」


「……じゃ、あ……?」



 頷いたチェスパスの言葉に、青ざめたアインは信じられないと言わんばかりに大きく目を見開く。


 震える吐息が零れ落ち、ぎゅっと、無意識にかインスにしがみついた。



「……ジャネット皇女は誰に止められても取り戻すために向かわれるだろう……お前たちは、その旅への同行を命じられる」


「……っ……!?」



 淡々と告げたシリウムの言葉に、断言された未来予想図に、息を飲んで絶句する。



「……できる事なら、辞退したいのですけれど、ね……」



 そっと溜め息を漏らしたインスに全力で頷く。


 そんな、どう考えても勝算のない旅に、どうして同行したいと思うのか……



 けれど、その道は最初から絶たれてしまっているのだ。



「無理だな……ジャネット皇女が大人しくジョーン皇子の視力を諦めない限り、誰が止めようと、出奔してでも向かわれる……流石にそこまでの無謀は国としても、陛下としても許容はできない。ならどうするか? ごく少人数の精鋭を供につけて極秘で送り出すしかない……その人選は当然まずは神剣の使い手だ」


「……っ……!!」



 しかも、その神剣の使い手の内、一人はジャンヌの専属護衛騎士団の団長であるファン卿ディアスであり、一人はファンがわざわざ無理を言ってまで「一員に……。」と望んだ神殿護衛官のクロード。


 この二人だけでも実力的には精鋭と言って間違いない。



 そうなると、あとの人選も神剣の使い手を優先することに不自然さはなく、実際に先の魔族との一戦でそれなりに成果を出し、生き残っているのだから反対もされにくい。



 その結果、ジャンヌの親友と言う名の悪友である孤児院育ちのリオンと、戦力になるとは到底思えない幼児のアインが組み込まれてしまう。



 しかも、アイン以外の全員が、同行を拒否しないのも確実だ、というのがまた辞退を不可能にする要因。



「そして、インスは当代一の実力を持つ皇宮呪師だ。魔族の討伐、なんていう半ば夢物語のような無謀な旅に、それ以下の実力しかない者を付けても意味はない」



 だから、インスの同行もほぼ確定。


 問題は呪師であるインスを派遣するのなら、護衛官も必要になる、ということだが、それも人選は済んでいるだろう。


 白羽の矢を立てられた皇宮護衛官には同情するが……



 ほんの少しの皮肉を浮かべたシリウムの物言いに、インスはちょっと顔を顰めて、アインは驚いたようにインスを見上げる。



「……しかもインスとアイン。お前たちは魔族に呪いをかけられた張本人だからな……理由があるのだから、参加させない理由はない、となる……」



 嫌な論法というより、無意味な参加者でしかないのだが、理論上、破綻はしていない。



 まして、皇帝の真意がジャンヌが途中で諦めて引き返すこと、なのだからなおさらだ。



「そう言う訳で、お前たち二人は、なるべく早く回復させて調整を行わないと……」



 真顔でシリウムは言い切った。



「……途中で野垂れ死にするぞ……?」



 冷徹に、確実な未来予想として。



「……っ……!!??」



 青ざめて絶句するアインがガタガタと震える。


 それを、宥めるように撫でて、ぎゅっと抱きしめるインスの表情も暗い。



 それでも、避けられない未来予想と、避けたい未来予想があるのなら。



「……と、言う訳で、アイン。お前も、今日からすぐに、そこに向けて調整していく……死にたくないなら死ぬ気で努力しろ」



 そう、シリウムは重々しい口調で言い切った。


第4章第4話をお読みいただきありがとうございます。


アインから奪われた「瞳の宝石」と、魔族が残した情報の真意。


ジョンの視力を取り戻すという明確な目標ができてしまった以上、皇女でありながら、ジャンヌが暴走するのは火を見るより明らか。


それを未然に防ぐため、国が下すであろう決定は、神剣の使い手であるアインと、当代一の実力を持つインスを「極秘討伐隊」に強制参加させるという、あまりにも理不尽で絶望的な未来予想図でした。


勝算のない死出の旅路が確定し、シリウムからは「死にたくないなら死ぬ気で努力しろ」という容赦のない宣告が下されます。


突きつけられた現実に青ざめて震えるアインと、彼を抱きしめるインス。


過酷な運命に向けて、二人はどう立ち向かっていくのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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