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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第4章 冷徹なる支配者の

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第3話・宣言された絶望的な ~望まれるのは重すぎる~

第4章 冷徹なる支配者の



      第3話・宣言された絶望的な ~望まれるのは重すぎる~



 泣きじゃくるアインを抱き起こし、ベッドに腰を下ろしたインスはチラリと、この部屋にいたチェスパスとラティスに視線を投げる。



 視線を受けて無言で頷いた二人も一瞬視線を交わし、チェスパスが一歩、前に出た。



「……さて、では話を戻すぞ」



 そう告げて、シリウムに視線を向ける。



「……まず、インス。お前は増量と体力作りを継続させろ。食事量が不満なら味を諦めろ」


「それは遠慮します」



 同じように一歩、前に出たシリウムの言葉に、インスが顔を顰めて言い切る。


 味が落ちる上に、どうせ大差ない量を食べさせられるなら、まだ今の方がマシだ。



 話が始まったので、若干しゃくり上げながらもアインも何とか涙を止めて、インスの胸元に頭を押し付ける。



 インスの落ち着いた鼓動を聞きながら、自分自身の気持ちも落ち着けていく。



「なら、今の倍だな」


「は……?」



 インスの返答に、ふむと顎を軽く摘まんで告げる。


 思いがけないシリウムの発言に、ぱかっとインスが口を開いて絶句する。



 今でさえ普段の五倍ほども食べさせられているのに、更にその倍!?



「食事量だけじゃないぞ? 機能訓練は三倍にしないと、多分間に合わん」


「……っ!?」


「……? ……」



 さらっと言われて愕然とする。


 言葉尻にアインがちょっと首を傾げた。



「……インス様、もう、お仕事が……?」



 まだ入院中だというのに、もう次の任務を伝えられているのかと、心配そうに見上げた。


 その、顔の角度がいつもと違って見えて、アイン自身も少し戸惑ったように眉を顰めている。



「……私が、というより、アイン君も、何ですけれどね……」


「……? ……ぼくも……?」



 少し角度を変えて抱き直したインスの、その困ったような言い方と、それ以上に思いもかけない内容に、アインはパチパチと瞬きを繰り返す。



 どうして、見習いでしかない自分が、インスのように仕事を振られるのか分からない。



 それはそうだとばかりに全員が頷いて、アインの戸惑いを肯定する。



「正直、アインを同行させるのは無謀以外の何ものでもないのは全員承知している……そもそもあと一か月ほどしか時間がないのに、動かせるのかも怪しい」


「……ですね……」



 口に出して言ったのはシリウムで、同じく口に出して同意したのはインスだけだったが、チェスパスもラティスも頷いている。



「が、お前たちが二人とも魔族によって呪いで繋がれている以上、片方だけを皇都に残しておくのは不安が過ぎる……それに、アインは水の神剣の使い手として同行は必須だろう……」


「……ぇ……?」



 そう、アインがいかに幼かろうが、水の神剣という、神話の武器の使い手とされてしまっている以上、その力を期待してしまうのは必然。


 更に、秋に魔族によって引き起こされた事件でも、その力によるものと思われている奇跡がある以上、次も同じ奇跡を、と人々が思うのは当然。



 実際には、水の神剣にはその『奇跡』を引き起こす力がある、という記述は一切見つかっていないのだが、それならそれで、アインに引き起こせる可能性を求められてしまう。



「お前は秋の事件で、インスやジャネット皇女らに負担なくその傷を癒した、という実績がある……同じことを次も期待されているということだ」


「……っ……!?」



 ひたすら困惑しているアインに、なぜを説明すれば、大きく息を飲んで絶句する。


 当然だろう。


 どうやって引き起こされたのかも分からないのに、他人の命の救済を、無責任に望まれているのだ。



「……そ……! ……む……っ!」



 そんなの、無理……と言いかけて、言葉に詰まってしまう。



 できない、と口に出してしまえば、なら役立たずは出て行けと言われるのではないか?



 そんな恐怖が体の内側から湧き上がって、ガタガタと震える。



 何よりも……



(……どこかに、連れて、行かれる……?)



 話を聞いていると、そんな風に聞こえるけれど、一体どこに、何をしに行くのかが分からない。


 分からないが、すごく危なくて、インスや、他にも誰かが大怪我をしたり、最悪命を落としてしまうかもしれないようなことなのだと何となく察する。



 しかも、その『大怪我』や『死んでしまうかもしれない』ことを『お前が治して助けろ』と言われている。



(……ど、やって……?)



 秋の事件で、何が起きたのかも分からないまま、インスの怪我や、ジャンヌたちの疲労までもを、一切の負担なく癒したらしい、というのは知っているけれど、それは『ただそうなっただけ』でしかないのに。



「……アイン君。ソレは気にしなくていいです。無理なものは無理ですからね」


「……で、でも……!」



 宥めるように背を撫でて、穏やかな口調で告げるインスに、折角泣き止んだばかりだというのにまた涙が浮かぶ。



 アインの潤んだ神秘の紫を、インスの赤みを帯びた紫色の瞳が真っ直ぐに捉えた。


第4章第3話をお読みいただきありがとうございます。


泣きじゃくるアインを優しく落ち着かせたインスですが、神官長たちとの話し合いは続きます。


「味が不満なら諦めろ」というシリウムにインスが反論した結果、「なら食事量は今の倍。機能訓練は三倍だ」という無慈悲すぎる宣告が下されてしまいました。


一方で、話題はまだ幼いアインの今後についても及びます。


「神剣の使い手」として、秋の事件で起こしたような奇跡を再び期待され、過酷な旅への同行が必須だと告げられるアイン。


大人たちの身勝手で重すぎる期待に怯えるアインに対し、インスは「無理なものは無理」と穏やかに慰めます。


絶望的な状況の中でも、互いを思いやる二人の絆……。


過酷な現実が迫る中、インスはアインの左目にそっと触れて?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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