表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第3章 隠れた傷と疼く心に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/32

第3話・容赦なき義務感と ~理解はできても死にそうで~

第3章 隠れた傷と疼く心に



      第3話・容赦なき義務感と ~理解はできても死にそうで~



 その時、インスは機能訓練をさせられていた。



 意識を取り戻した当初は液体食のような物から始まり、流動食、病人食とだんだん食事の内容が変化していった。


 流動食が取れるようになったころから、少しずつ体を動かす訓練をさせられ始めて、病人食に切り替わった時には過負荷がかかる機能訓練に移行し、今では普通食を強制的に詰め込まれながら重症者相手に行うものとは思えない過酷な訓練を施されている。



「……ちょ、と……きゅうけ……」


「分かった、ほら、水分補給だ」



 ぜーはーと肩で息をして、がっくりと床に両手を着いたインスが切れ切れに休憩を望むと、機能訓練を担当している神官呪師(しんかんじゅし)……やたらとごつい男性の医呪(いじゅ)神官……が、緑色のドロッとした液体……医務殿特製・栄養補給ドリンクを差し出す。



「ちょ……ま……っ!?」



 慌てるインスを無視して、半ば無理やり流し込む。



 がしっと頭を固定され、口に押し付けられた水筒から容赦なく注ぎ込まれるそれを、半ば窒息しそうになりながら飲み込み、解放された時にはますます荒く呼吸を乱す。



(こ……ここの方々は……本当に、医療者なんですか……っ!?)



 あまりの容赦のなさに、そろそろ精神的な限界が近い。



 幸いというか、不幸にもというか、間違いなく体力は戻って来ていて、体重も増えてはいるが死にそうだ。



 と――。



「……っ!? ぐ……っ!!」



 それは突然起きた。



 ぎゅっと、内臓をねじ切られるかのような激痛が一瞬体内で弾け、熱の塊がせり上がって喉の奥から溢れ出る。



「っ!? ラント呪師(じゅし)!?」



 呼吸が落ち着いてきたら再開だな……と様子を見ていた担当の神官呪師の目の前で、突然びくりと体を震わせたインスが呻き、咄嗟に手で覆った口から赤黒い色が混ざった緑の液体を吐き出す。



 驚いて、倒れかかったその体を抱き止め、素早く横にすると、顔を顰めて震えるインスの容体を診た。



(……若干の脈拍の上昇。対して血圧は低下。嘔吐物は先ほど飲んで貰った栄養補給ドリンク……他に、酸化した血液……消化器系からの出血の疑い……)



 吐瀉物を掻きだして、口の中も確認するが、切れた様子はない。


 色からしても間違いなく消化器系からの出血。



 けれど、消化器系に異常はなかったはず。



「っ!? インス!!」


「っ! 神官長……」



 そこに、慌てた様子でシリウムが駆け込んできた。


 驚いて担当の神官呪師が目を丸くし、シリウムを見る。



「やっぱりか……」



 床に横たえられたインスが青ざめて嘔吐しているのを見て取り、舌打ちしたシリウムは素早く駆け寄ると容体を確認していく。



「……あの……」


「ああ。インスには、特定の条件下で発作を起こす可能性が判明した。それで様子を見に来たが……案の定だったな……洗浄をしろ」



 あまりにもタイミングよく訪れたシリウムに困惑しきりの神官呪師に、真実ではないが間違ってもいない説明をして、シリウムは処置を命じる。



「っ!? はい!」



 慌てて神官呪師はインスの口の中だけではなく、胃の中までを洗浄するための水魔法を使い、飲ませたばかりの栄養補給ドリンクを排出させた。



「……っ……。……ぅ……っ」



 微かに顔を顰めたインスが呻き、右手で胃の辺りを押さえる。



 しばらくして、洗浄が終わると荒い息を吐きながらも肩から力が抜けていく。



「……よし、気分は?」


「……大分、マシになりました……」



 問いかけたシリウムに、疲労が色濃く滲む声で応じたインスは目だけで問いかける。



 今の現象が何なのか、何となく予想はつくが、確証まではない。



 ただ、単なる胃の不調などではないのは確かだ。



「……説明がいるだろうな……起きれるか?」



 頷くことでその予測を肯定し、場所の移動を示唆したシリウムに、一瞬目を見開いたインスはすぐに手を着いて体を持ち上げる。



 ただ、流石にさっきの今では体が追い付かないらしく、気持ちは急いで動きたいのに、実際には途中でがくりと肘が折れる。



「おっと……」



 倒れかかったインスを神官呪師が支え、まずはゆっくりと上体を起き上がらせた。



「……すみません……ありがとうございます……」


「いや……無理はするな」


「させなきゃダメだろうが」



 掠れた声で告げるインスに、思わず普段、他の患者を相手にする時と同じように返した神官呪師の返答に、呆れたようにシリウムが言う。



「「……………」」



 無言でシリウムを睨むインスと、そうだった! とばかりにハッとした神官呪師が言葉に詰まるのを見て溜め息を一つ。



「……とにかく、一旦移動する」



 そう宣言して、神官呪師にインスを運ぶようにと命じた。


第3章第3話をお読みいただきありがとうございます。


無理やりながらも体力を取り戻しつつあったインスを、突如襲った謎の激痛と吐血。


魔族が残した爪痕が、いよいよ牙を剥き始めます。


シリウムたちも巻き込み、知らされる過酷な現実。


彼らはどうやってこの理不尽な事態に立ち向かっていくのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ