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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑨~国家《しくみ》の虚構《うろ》に喪失《うつろ》の玉露《なみだ》を~  作者: norito&mikoto
第2章 誰かにとっての……

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第5話・宣誓された真実の ~心の奥の根源に~

第2章 誰かにとっての……



        第5話・宣誓された真実の ~心の奥の根源に~



「アイン。あなたには、指導者、監督者不在下での魔法の使用疑いがかかっています」



 淡々と告げるラティスの言葉に、アインは無言のままこくりと頷く。



 間違いなく、自分は誰の指導も、監督も、許可さえもない中で、いくつもの魔法を使った。



 使ったことに後悔はしていないけれど、見習いがしてはいけないことだったのも、もちろん理解している。



 けれど……



(……こんな、風に、聞かれるの……はじめて……)



 ベッドに寝かされてはいても、手足や胴体を拘束されて、治療や食事もちゃんとして貰えるけれど、みんな、険しい表情のまま。



 判別(はんべつ)神官長であるラティスはいつもこんな風に、感情を一切面に出さない、淡々とした態度で職務に当たっているから、いつも通りに見えはする。



 それでも、宣誓が行われるとも聞いているので、緊張感……いや、恐怖も大きい。



 とうとう、捨てられるのかな? と……何度も脳裏を過った考えが、また過る。



(……いんすさま……)



 ジワリと涙が浮かんで、ぎゅっと、目を瞑って堪えた。



 記憶にあるのは、皇宮呪師長(こうぐうじゅしちょう)の部屋にあった箱に押し込められ、酷い扱いをされていたインスの姿。


 咄嗟に、お水がいる、と思って、魔法をかけたけれど……



(……ご無事、かな……)



 誰にも、何も聞けないまま今になってしまっていて、胸が潰れそうな不安に、心臓が嫌な音を立てる。



 それと……



(……呪師長、さまも……魔族のヒト、ちゃんと、追い出せたかな……?)



 自分の体の中で、自由にならない己の身体に絶望し、必死で抗おうとしていた皇宮呪師長のココロが()()()



 同時に、それを笑って、心底愉しんでいる魔族の姿も。



 だから、追い出そうとしたけれど……



(……ファン様が、僕を叱ったのも、当然……ですよね……)



 インスが酷い目に合っているのを目にしてしまったせいで、誰にも何も伝えずに、勝手なことをしたアインを、ファンが叱るのは当然だ。



 どうしてファンが居たのかは分からないが、他にも護衛官の人たちや、皇宮呪師学校の校長先生だって、すぐそばにいたのだから……結果は同じだっただろう。



 だからアインは、この扱いにも、宣誓が行われることにも、その後にあるはずの罰にだって、何の不満も、文句もない。



 ただ、もう神殿に居られなくなって、ここから追い出されたら、どうすればいいのか分からない。



 居ていいと、言ってくれていたのに、その信頼を裏切ったのは自分だから、自業自得だけれど……



 ()()、捨てられるのだろう……



 今度こそ、怖い人たちが、自分を連れて行こうとしていたところに。




 アインは、自分が記憶もなく、名前も分からず、神さまにも『居ない者』と言われた。



 本当の家族という人たちが、いるのだとしたら、きっとその人たちにも捨てられたのだろう。



 そうじゃなきゃ、説明がつかない……



 きっと、自分が悪い子で、邪魔な子で、迷惑ばかりかけていたから……捨てられた。



 ()()()()……って。



 それで、せめてお金にでもなればと、売られたに違いない。



 ()()()怖い人たちのところに居た。



 鎖に繋がれ、乱暴されて、痛い思いも、苦しい思いも……たくさん、たくさん、したけれど……



 それが、()()()()()()()()自分への罰だったのだろう。





 あの日、皇宮呪師殿で、その呪師長室で、何があったのか。



 宣誓を行ったラティスの問いかけに、静かに話すアインに、混乱している様子はない。



「……ファン様に、()()()()後、急に、からだが痛く……なって……」



 気が付いたら、ここに寝かされていました。



 そう締めくくったアインに、その物言いに、シリウムとチェスパスは表情を保つのに苦労する。



((……本気か!? アレは叱った、などという生易しい行為ではないぞ!!))



 内心で絶叫するが、声にも態度にも出さない。出せない。



 流石にラティスはピクリとも眉を動かすこともなかったが、それでも彼女も内心では驚愕していた。



 むしろ、宣誓を行っている分、シリウムたちより驚きは大きい。



 なぜなら……



「……宣誓を完了致します。嘘偽りは、一切ありません……」


「「……っ」」



 ラティスのその宣言に、シリウムとチェスパスは堪えきれずに息を飲んだ。



 アインは本気で、自分が悪いことをしたから怒られた、としか思っていない。



 否、そう信じ切っているのだと判明した。


第2章第5話をお読みいただきありがとうございます。


ついにアインに対する判別神官長による『宣誓』の聴取が行われました。


指導者不在のまま魔法を使ったことを悔い、自分は罰を受けて当然なのだと怯えるアイン。


彼があの凄惨な現場でファンから受けた仕打ちを、「自分が悪い子だから叱られただけ」と本気で信じ込んでいることが、『宣誓』という神殿の絶対的なシステムによって証明されます。


その残酷なまでの純粋さと、彼の心の奥底に根付いてしまっている「怯え」の深さに、歴戦の神官長たちでさえ絶句する事態に!


嘘偽りのない言葉だからこそ胸を抉る、アインの痛ましい『真実』……。


大人たちの常識が通用しない、アインの過酷な生い立ちが生み出した歪み。


この深すぎる心の傷を前に、大人たちはどう動くのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第9弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

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※本編シリーズはこちら!

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