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魔王は私がニャんとかします!  作者: あまがみ


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大茨の森05


「オオオオオオ……」


サーッ


 魔物の身体から流れ続ける砂の滝の間から咆哮のようなものが聞こえるが、すでにそれは鳴き声と呼べるようなものではなくなっていた。


「あの中から核を見つけるのか?」


 魔物の大きさはすでに十メートルを越えている。それでもなお大地を砂に変えて肥大を続ける魔物の身体の中から核を見つけ出し、砕かなければならない。


 グリーティアは短剣を握る自分の右手を見つめた。


 非力な手だ。二度振り下ろしても、あの魔物の核を割ることができなかった。もう一度振り下ろしても砕けるとは思えない。


「俺に、できるのか……」


「させます」


 ぼそりと呟いたグリーティアの声にベルはすぐ反応した。


 ベルはぐっと腕に力をかけて片腕で懸垂すると、まずグリーティアを杖に座らせた。それから自分は杖の上に立って魔物を見下ろした。


「さて、グリーティア様。技を覚えた後にすることは、その技の強化だとおはニャししたことを覚えていますか?」


 グリーティアはどうして今そんなことを聞くんだと訝し気な顔をしたが、素直に頷いた。


「具体的にはニャにをするか覚えていますか?」


「規模を大きくすることと正確さを増すことだ」


 ベルは頷いた。


「そうです。これまでグリーティア様には正確さを鍛えてもらっていました。ですが今日は規模を……ご自分のお力の限界に挑戦してみましょう」


 ベルはにこりと笑い、右掌を真横に突き出した。


「おいで、聖剣ダオーム」


「!?」


 とてつもなく大きな影がベルとグリーティアの上に降りた。


 剣の作りだした影だ。十メートルを優に越える大きさの剣が浮いているのである。


 グリーティアは目を大きくして驚いた。こんなに大きな剣は見たことがなかった。


「これをグリーティア様にお貸しします。これニャらグリーティア様のお力でもあの魔物の核を割れます」


 グリーティアは眉を寄せた。


「ベル、貴様俺の魔術教師をしているのに忘れたのか? 俺はそれを動かす重力操作魔法は使えぬぞ」


「えぇ、知っています。グリーティア様、想像力です。グリーティア様のお使いにニャれる魔法でも簡単に核を潰せます。難しく考えニャいでください。この剣を移動させるだけで良いんです」


「……空間移動魔術か」


 気づいたグリーティアが口に出すと、ベルはにっこり笑って頷いた。


「あんなに大きなものを移動させるのか……」


 ベルが出した剣の大きさは縦二十メートル弱、横十メートル弱と、とてつもなく大きい。剣身はもはや分厚い金属の壁である。グリーティアが開けたことのある空間の穴の大きさは、精々自分が通れるくらいの二メートルにも満たない穴だ。その五倍以上の穴を空けなければならないというわけである。


 グリーティアはごくりと喉を鳴らした。


 ベルは大きな剣を見つめているグリーティアの横顔に笑みを浮かべていた。


 グリーティアは決してできないとは言わない。できるかできないか分からないが挑戦し、できるように頑張る。そんな彼だから、応援もしたくなるしこうして力になってあげたくなるのだなと思う。ベルはグリーティアのカリスマ性に惹かれたのではない。この可能性を信じて努力する姿に惹かれたのだ。


 ベルはグリーティアの肩に優しく手を添えた。グリーティアが青い目を上げる。


「大丈夫です。グリーティア様ニャら必ず(かニャらず)できます。私もお手伝いいたします。核を、探してきます」


「あの中から見つけられるのか?」


 グリーティアは少々驚いた声を出した。


 今や魔物の身体は大地と同化し、周り一帯が魔物の身体と言っても過言ではない状態だ。その中から核を見つけるなんて無謀も良いところだった。しかし、ベルは口元に笑みをたたえて言うのだった。


「グリーティア様が見つけろと言うのニャら、見つけ出してみせます」


 自信たっぷりだ。表情や声だけでなく、身体全体から溢れてくる。


 グリーティアは口の端を上げて笑った。


「ならば必ず見つけだせ」


「承知いたしました」


 くるりと足首を回し、手にタクトを持ってベルは背中から飛び降りた。


「グリーティア様! 魔術展開を!」


 ベルの身体がゆっくりゆっくり落ちていく。


 グリーティアはベルから大きな剣に視線を移し、両掌を向けた。すると剣の切っ先の下に黒い穴が空き始めた。初めは直径二メートルくらいだった穴が、一回り二回りと少しずつ大きくなっていく。


「くっ」


 順調に大きくなっていた穴の端がぶるぶる震えはじめた。数センチ大きくなっては元に戻りを繰り返している。


 直径五メートル強。これでは全然足りない。


「もっと大きく!」


「やっておるわ!!」


 グリーティアのこめかみに青筋が浮く。黒い角の先が青く光りを放つ。


 ありったけの魔力を込めている。それでもこれが限界だった。


「想像力! 頭を柔らかくして考えて! 訓練を思い出してください!」


「訓ッ練……!?」


 グリーティアは穴が小さくならないよう集中しながらベルと行った訓練を振り返り始めた。ベルとの訓練はエルシオンとの模擬試合から始まった……。


 その間、ベルは体勢を整えて砂の山となった地面すれすれを飛び、上昇して魔物の顔の前までやってきていた。


「オオオオオオオ!」


 魔物が口のようなものを開け、砂の間から覗く赤い目でベルを見ている。もう生き物とは呼べない姿になっているにも関わらず、首を伸ばして大きく開けた口でベルを食おうとしている。


 ベルは金色の目を細めた。


「そんニャに私を食べたい? だったらこっちから行ってあげる!」


 空中で加速し、ベルは魔物の口の中めがけて突っ込んだ。


ぼんっ


 ベルの身体が砂に呑まれた。


 魔物の身体の中は流動していた。右に流されたと思ったら今度は左に流され、下に引っ張られたと思ったら押し上げられた。目まぐるしく頭の位置が変わる。掻き回されているようで吐き気がしてくる。おまけに砂の圧力で肺が潰されそうだった。【金剛石化】という身体強化で防御力を上げていても身体中が痛い。


(くっ。流石に無謀すぎたか。でも、ここならバレない)


 ベルは自分の身体の周りに光魔法で物体を遮断する結界を張った。結界のおかげで押し流されることなく場に留まることができた。使えることなら光魔法を使って解決したいことがいくつかあったが、魔王の千里眼で見られているかもしれないと思うと使えなかった。しかし砂の中なら見られることもない。見えたとしても砂の中にベルがいるように見えるだけだろう。


 さて、とベルは一息吐いてから心の中で呪文を叫んだ。


(コスモス・タイクーン!)


ばあんっ


 魔物の身体が中から弾け飛び、豪風が巻き上がって宙で霧散した。


「ちっ」


 辺りを確認し、思わず舌打ちをする。


 魔物の身体の中から砂を残らず吹き飛ばしたのに核がなかった。ひょっとしたら核は魔物の身体の中から移動して同化した地面の中にあるかもしれないと予想していたのだが、当たってほしくなかった。核が魔物の身体の中にあってくれれば楽だった。肥大したとしても魔物の身体は地面から盛り上がっている部分のため、限度がある。しかし地面の中となると際限がない。どこからどう探せば良いのか検討もつかない。やみくもに探しても見つからないだろう。


(こんな広い場所をくまなく探すくらいの魔力は残ってないし、時間もない)


 ベルは飛んで元の形に戻ろうとしている魔物から距離をとり、ふわふわと宙に浮いた状態でグリーティアを仰ぎ見た。


 グリーティアにも限界がきてしまう。空間の穴を維持し続けるだけでも魔力を使うので、時間がかかればあの剣を移動させられるだけの穴を空けることもできなくなってしまうかもしれない。


(早く核を見つけないと。でも、どうやって……)


 ベルは頭をぐるぐる回転させて考えた。


(砂になった部分を残らず吹っ飛ばすのはもう無理。魔力がない。中に入って動き回るのも無理だ。ピンポイントで見つけないと。でも……)


 どうやって。

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