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魔王は私がニャんとかします!  作者: あまがみ


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魔王グリーティア05


 へしゃげた扉の前に放り出されたベルは猫の獣人故か見事着地に成功したのだが、心は穏やかでなかった。


「ひどいニャ! もっと丁寧に扱ってよ!」


 尻尾の毛を逆立てて扉に向かって怒ったが、中からは何の応答もない。ベルは肩を落とし、これ以上はやめておこうと踵を返した。するとアスガープが階段の方から歩いてきているのが見えた。


「何故貴様がここにいるのじゃ。貴様の部屋はもう一つ上の階じゃろう。何ぞ用でもあってここに来たのか」


 深いしわの刻まれた顔にさらにしわを増やしてアスガープはベルを下から睨んだ。アスガープの腰は曲がっていて、背はベルの腰のあたりまでしかない。


「……ちょっと各階にニャにがあるのか気にニャったので見て回っていただけです」


「無意味なことを。貴様のような者はここには必要ない。すぐに追い出されるじゃろう。無駄なことはせず、さっさと部屋に帰れぃ」


 ベルは目を細めた。


「そうさせていただきます」


 軽く礼をするとアスガープはふんっと鼻を鳴らした。ベルは気にせずアスガープの脇を通って階段へ向かった。


(アスガープは私のことを良く思ってないな……。まぁ、それは初めからだけど。……監視されている気がする)


 階段に差し掛かったところで振り返ってアスガープを盗み見た。アスガープはゆっくりと廊下を歩いている。その先にある目ぼしい部屋はエルシオンの部屋だが、アスガープがこの時間にエルシオンを訪ねる理由はないのではないかとベルは考えた。


 ベルの思った通り、アスガープはエルシオンの部屋を通り過ぎて全く別の部屋に入っていった。ベルの知る限り、その部屋は空き部屋のはずであった。


 魔王の相談役、アスガープ。ゲーム内ではいかにも黒幕といった風貌で出てきた陰湿じいさんだ。己の地位を利用して何かと魔王に進言し、魔王城の仲間をも手駒として扱い、策略と陰謀を巡らせてプレイヤーたち革命軍を様々な手で邪魔してきた。


 戦闘時でのアスガープはサポート役だったので単体で戦うことはなかった。しかし魔王と共に出てきて戦闘になった時は彼が開始早々さまざまな弱体効果をつけてきたので手こずった。あまりにも勝てなくて思わず攻略サイトで検索したくらいである。それもあって、ベルはアスガープに良い印象を持っていなかった。実際のアスガープも好きになれそうにない。


(何にせよ、アスガープは確実に魔王様に忠誠を誓っているから、私には協力してくれなさそうだ。たぶんエルやレチェットも……。エルはレチェットからは守ってくれそうだけど。ギネは……分からないな。どれだけ問いただしてもギネは本心を話してくれなさそうだ)


 考えながらベルは階段を上っていった。


 ベルがこうして関係性を整理しているのは己の保身のためである。ずっと迷っていても仕方なく、何かしら策を打たないと命が持ちそうにないことに気づいたベルは、まず身の安全を確保しなくてはならないという結論に至った。生きていなければ成し得たいこと云々は意味のない悩みである。


 己の保身を考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが味方をつけることだった。今後のことも考えると、味方をつけておいて損はない。むしろ必要なことのように思えた。そのためベルは魔王への忠誠や自分への態度を見ることで、誰が味方になってくれそうか見定めようと思ったのである。


 アスガープはまず間違いなく味方にはならない。魔王への忠誠心が厚く、子魔王に対しても過保護で新しく教師となったベルを目の敵にしている。会う度に嫌味を言われるくらいだ。


 それから「魔王様を脅かそうとするのなら、俺はお前を殺さなくてはならない」と発言したエルシオンは魔王への忠誠心があると言えるだろう。しかし魔王よりも強くなりたいとも言っていたので、心酔しているわけではなさそうである。態度も一番好意的だ。


 レチェットは隙あらば生気を吸おうとしてくるが、態度は悪くない。しかし魔王と深い関係にあるところを見ると味方にはなってくれそうにない。


 ギネは先程の発言といい、誰とも交流せずにずっと部屋に籠っているらしいことといい、よく分からないのが現状だった。とにかくこちらから会いに行かねば姿を見ることもできず、会っても話が続かない。すぐ逃げてしまうのである。態度もどっちつかず。ベルのことを良く思っていないようだが、悪くも思っていないのか助言らしきこともしてくれた。ベルにはまだギネが分からない。


(ギネについて知るにはもう少し時間がかかりそうだな)


 とはいえ他の皆のことを完全に把握しているわけでもないが。


(早急に味方になってくれそうなのはこの人だけかもしれない)


 ベルは扉をノックして声をかけ、ゆっくりと開いた。


 銀色の月が照らすベッドの上で、黒い肌に色のない髪をした女性が身を起こしていた。


「フランウィーネ様。若様のご様子をおおはニャしに参りました」


 フランウィーネが優しい笑みを灯して振り返る。


「待っていたわ。さぁ、聴かせてちょうだい。あの子のことなら何でも知りたいわ」


 その笑顔にちくりと心が痛んだ。それでもすぐに頭から出た麻酔薬のような考え方がその痛みを軽減する。


 どんなに優しい人も疑い、そして損益を考えるように。


 マンシャムの教えは確実に受け継がれていた。

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