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魔王は私がニャんとかします!  作者: あまがみ


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魔王グリーティア04


「私はどうするべきニャのかニャ……」


 もう一度、誰に聞くでもなく呟いた。するとエルシオンが答えた。


「お前のすべきことはないぞ、ベル」


 金色の目が何か言いたげに見つめる中、エルシオンは腕を組んだ。


「この世に生まれたすべてのものにはすべきことなど何一つとしてない。願望はあれ、当為などないのだ。魔王とてそうだ。若は将来魔王となる存在だが、結局決めるのは若で、若様が望まなければ魔王にならなくても良いと俺は思う。俺がベルに聞いたのは『何を成し得たいか』だ。俺はお前の願望を知りたいんだ」


「ニャにを……ニャし得たいか……。願望……。エルにはあるの?」


「よくぞ聞いてくれたな」


 エルシオンは口角を上げた。


「俺は強くなりたい! 剣の道を究め、この世のすべてのものに勝ちたい! ここにいるのは俺よりも強い魔王様がいるからだ。いつか真剣勝負で魔王様に勝ってやろうと彼の近くで修行している。強さを間近で体感しながらする修行ははかどるぞ!」


「エルは単純だニャ。それに心が強い。強くニャりたいっていう、それだけの理由で突き進める人はニャかニャかいニャいよ。それに近くに自分よりも優れた者がいたら心が折れる人が多いと思うニャ」


 羨ましさからくるため息を混じえて言ってからギネに視線を移した。


「ギネはどうニャの? ギネにはニャし得たいことってあるの?」


「おれは別に……」


「お前の成し得たいことは光魔法の習得だろう」


「は? 何言ってんの?」


 ギネは何故か代わりに答えたエルシオンを睨んだ。エルシオンは目を瞑り、うんうんと頷いている。


「誤魔化すな。俺には分かる。お前は賢者マンシャム様の一番弟子だから、その道を目指すのは当然だ。俺はお前なら必ず二人目の光魔法使いになれると信じている」


「ちょっと。ぺらぺらと人の情報流さないでくれる?」


「師匠の弟子!?」


 驚いたベルの声とギネの声が被った。エルシオンは二人を交互に見て不思議そうな顔をした。


「何だお前、ベルに言っていなかったのか? ならば俺が教えよう。ベル。ギネは兄弟弟子だぞ。時期は全く被っていないがな。ギネがマンシャム様の元を離れて……十年は経つのか? いや、そこまでではないか?」


「だからおれのことを話すなって」


「兄弟弟子……」


「おう。つまりお兄さんだな」


「お兄ちゃんができた」


「あんたの兄になったつもりはないけど」


「すごい顔で睨んでくる」


「気に入らないのか。ベルのどこが嫌なんだ。可愛い妹じゃないか、お兄ちゃ……」


「あ」


 とぷん、とエルシオンの身体が座っていた椅子ごと黒い異空間に落っこちた。強制退場である。


「……ギネのニャし得たいことは光魔法の習得ニャの?」


 身を乗り出して空間を覗き込んだベルが視線を上げてギネを見ると、ギネは眉を寄せていた。


「あんたに話すことは何もない」


 そう言ってギネは自分も異空間に沈んでしまった。


 残されたベルは尻尾をゆっくり左右に振って考えてから食堂を出た。


 向かった先は二階のギネの部屋であった。


「ギネー。いるニャら返事して」


 ドンドン扉を叩いて大声を出す。強く叩いているのだが、応答はない。気配を探ってみたがよく分からなかった。きっと気配を遮断する魔術を使っているのだろう。空間魔術の中に目くらましの魔術がある。


「いニャいの? いてもいニャくても勝手に入るよ」


 一応断ってからベルはノブをひねった。しかし中から鍵がかかっているらしく、開かなかった。仕方なく、ベルは下がった。


「えいにゃっ」


 下がって扉に蹴りを食らわせた。扉はバキッと音を立てて開いた。もとい、壊れた。


「……あんた何なの? 人の部屋のドア壊して押し入るってどういうこと?」


 部屋に入ると不機嫌そうな顔をしたギネがソファに座っていた。どうやら居留守を使っていたらしい。


「それについては謝るね。ごめん。ちょっと聞きたいことがあって来たの」


 ベルは強引に立て付けの悪くなった扉を閉め、何の断りもなくギネの向かいのソファに座った。追い返す気はないのか、ギネは長いため息を吐いただけでそれを受け入れた。


「……私が光魔法を使えること、エルに言ってニャいの?」


「言おうが言うまいがおれのかってでしょ」


「まぁそうだけど。……誰がギネの他に知っているの?」


「答える義理はない」


 ギネはつんと言い返す。ベルは唇をぎゅっと結んだ。


「……私は答えさせることもできるよ。ギネニャら分かるでしょ?」


 真剣な顔をして右手に握ったタクトをギネに向けるベル。


 魔術の中には相手を洗脳する魔術があり、真実を吐かせることだってできるのだった。


「おれに通用すると思ってるの?」


 ギネは黒い瞳でベルをねめつける。


「試してみる?」


 ベルは挑戦的な笑みを浮かべた。


 沈黙。このままギネは何も話してくれないかもしれない。しかしベルはどうしても聞き出したかった。ベルが光魔法を使えることを知っている人物がどれだけいるかでこれからの対応が変わってくるからだ。ギネ以外誰も知らないなら極力隠した方が良い。知っているなら知っているで心構えができる。


 数時間にも思える数秒が経ち、ため息が聞こえた。


「……バカみたい」


 折れたのはギネだった。


「面倒な小競り合いしたくないから言うけど、おれは誰にも言ってないよ」


「どうして?」


「だから、言おうが言うまいがおれのかってでしょ」


「光魔法が使えることはこの世界では重要ニャことのはずニャのに?」


「この世界では?」


 しまった、とベルは思ったが流すことにした。ギネの様子を見ると、少し言葉に引っ掛かっただけのようだ。


「今まで光魔法が使えるのは師匠だけだったでしょ? それが崩れたのは重大なことのはず。それニャのに、どうしてギネは誰にも言っていニャい……。魔王様にさえ報告しニャかったの?」


「おれのかってだって。他のやつは知らないけど、おれは魔王様になんでもかんでも報告するわけじゃない」


 案の定、ギネは深く聞いてこなかった。ベルは内心ほっとして話を続けた。


「魔王様に忠誠を誓っていニャいの?」


「あんたには関係ない」


「関係あるよ! 今後ギネがそれを誰かに言うつもりがあるのかニャいのかで、私の運命は大きく変わる! 私に特別ニャ力があることを知る人が増えればその分リスクが増える!」


「特別なんかじゃない!」


 ギネが大声を出した。数日しか過ごしていないが、怒っても穏やかに怒っていたギネが大声を出すとは思わず、ベルは耳をぺたんこにして目を大きくした。


「……あんたは、特別なんかじゃない」


 ぼそりと言い、ギネは手を払った。


「出てけ。もう二度と来るな」


「にゃっ!?」


 ベルの座っていた場所に空間が開き、ベルはソファごと尻から異空間へ落ちた。ギネはすぐに空間を閉じ、ベルを外へ放りだした。

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