第8話
「特殊な能力を持った子たちが通う学園、とはどういうことですか?」
「言葉通りの意味だよ。炎を自在に操ったり、瞬時に物を凍らせたり。そういう特殊な能力を持った子たちが通う学園だ」
どういうことだ。
秋山先生みたいな力を持った人間が、この世にはまだたくさんいるというのか。
「彼らは生まれながらに特殊な能力が使えるわけじゃなく、ある日突然、使えるようになる子がほとんどだ。そして、最初から完璧に使いこなせるわけじゃない」
「その能力を使いこなせるようにするための学園ということですか?」
「そう。能力を使いこなせるよう教育するのと同時に、彼らの人権と未来を守るための学園だ」
特殊な能力が使える。
それが原因で、いじめられたり、迫害されたりすることは想像に難くない。
星光学園の噂として、入学を拒否できず、一度入学すると二度と出ることができないというものがあったが、その理由がよく分かった。
特殊な能力を持つ彼らからすれば、入学を拒否する理由がない。
そして、星光学園を出て、自分の能力がバレないようにビクビクしながら生きるよりも、星光学園に残った方が気楽に生きられるはずだ。
「星光学園については理解できました。でも、俺を受け入れてくれるのでしょうか?」
「どういう意味かな?」
「俺は今、星光学園にいる彼らと同じ力を持つ存在から命を狙われている立場です。そんな人間を受け入れてくれるとは到底思えない」
俺がいるせいで、星光学園が秋山先生に攻撃されるかもしれない。
もし秋山先生に仲間がいる場合は、攻撃なんて生易しいものでは済まない可能性だってある。
そして何より、俺に特殊な能力はない。
そんな俺を受け入れる理由はないだろう。
「それなら心配ないよ。星光学園の理事長にはすでに連絡済みで、君の受け入れについて了承してもらえたよ」
俺からすれば、星光学園に受け入れてもらえるのはありがたい話だ。
こうして警察に保護されているよりも、秋山先生と同じ特殊な能力を扱う人たちと一緒に過ごす方が、守ってもらえるだろう。
もっとも、今の俺に生きていく目的も希望も、何もないが……。
「理事長が了承してくださるなら、ぜひ転入させてください。お願いします」
「ありがとう。神崎くんも素直に受け入れてくれて助かるよ」
「一つ聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「葉山さんは、なぜ彼らについて詳しいんですか?」
「僕は今回のような、特殊な能力を扱う者が絡む事件をよく担当していてね。事件の捜査の際は、星光学園とも連携しているんだ。だからかな」
今回に限らず、そういう事件は日常的に起こっているということか。
特殊な能力を使えるのだから、場合によっては犯罪もやり放題だ。
この国の未解決事件のほとんどは、その特殊な能力が絡んでいるのかもしれない。
「三日後、星光学園に君を送り届ける。それまではこの警察署で我慢してくれ」
「それなら、荷物の整理もあるので一度家に帰りたいのですが――」
「申し訳ない。それはできないんだ」
「どうしてです?」
「昨日の深夜、君の家で火事があったんだ。建物は全焼したよ」
俺の家で火事があった。
放火されたと言わないということは、火事の原因が分からないのだろう。
そうなると、おそらく犯人は秋山先生だ。
こうなる可能性を考えてはいたが、実際に起きるとは。
「分かりました。教えていただきありがとうございます」
「すまない。犯人逮捕に全力を尽くしてはいるのだが……」
そう言いながら、葉山さんは力なく俯いた。
「相手がただの犯罪者ではない以上、そんな簡単に逮捕できるわけがありません。ただ、同じ被害に遭う人が出てこないことを祈るばかりです」
「……すまない」
申し訳なさそうにする葉山さんを見ながら、俺はとてつもない無力感に襲われていた。
秋山先生に対抗する力が、俺にはない。
仮に星光学園で守ってもらえたとしても、俺自身は全く戦えないのだ。
俺にも力があれば。
無いものねだりだと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。




