第7話
事件から一夜明けて、俺は警察署の会議室にいた。
相変わらず、警察官たちは忙しそうに走り回っている。
警察署の前には、たくさんの記者たちがあの事件についての情報を得ようと押しかけていた。
俺が今朝スマホで確認した限りでは、大した情報は流れていないようだった。
事件があったこと。
現在も捜査中であること。
犯人がまだ逮捕されていないこと。
流れている情報は、これぐらいのようだ。
「神崎くん、お待たせ」
葉山さんが会議室に急ぎ足で入ってくると、俺の目の前の席に座った。
「では、改めて事件のことを聞かせてほしい。辛いと思うけど、よろしくね」
「はい。大丈夫です」
葉山さんはバインダーを机の上に置き、紙をペラペラとめくりながら話し始めた。
「まず犯人について。犯人は君のクラスの担任である秋山先生。共犯者はなし。間違いないね?」
「はい」
「次に、秋山先生は自分の右腕に炎をまとわせ、その右腕で生徒を殴って殺していた」
「はい」
「そして、秋山先生は正門と裏門を瞬時に移動していた」
「はい」
「ありがとう。やはり君の言う通り、犯人である秋山先生は特殊な能力を持っているようだね」
「ほ、本気ですか?」
「何がだい?」
「秋山先生が能力者という話です。正直、到底信じられる話ではないと思うんですけど」
特殊な能力が使える。
いくら被害者がそう訴えたとしても、何かしらのトリックが使われていて、俺がそう思い込んでいるだけ。
警察の人は、そう考えるのだろうと思っていた。
少なくとも、そういう被害者を頭ごなしに否定はしないとしても、話をそのまま信じることはないだろう。
「確かに、到底信じられるものではないよ。でも、現場の状況や君の話を聞く限り、そう考えるのが妥当だと思う」
「これまでにも、特殊な能力を持つ人間が関わる事件は起きていたんですか?」
「今回の事件ほど確証をもって断言できるものはないけど、未解決事件は存在しているからね。普通じゃない事件は山ほどあるよ」
「秋山先生みたいなやつが、意外と身近にいたかもしれないんですね」
「否定はできないね」
秋山先生以外にも、得体の知れない能力を扱える人間が世の中にいるかもしれない。
そう思うと、夜も眠れない。
「事件の話はここまでにして、それより大事な話をしようか」
「すみません。俺から一つ聞いてもいいですか」
「ああ、構わないよ。何かな」
俺は、ずっと気がかりだったことを尋ねる。
これを聞いたところで、何にもならないことは分かっている。
それでも、聞かずにはいられなかった。
「裏門で亡くなっている生徒はいましたか?」
「うん。十八人の生徒が亡くなっていたよ」
「そうですか。ありがとうございます」
やっぱり、金村たちは秋山先生に殺されてしまったのか。
俺は何もできなかったんだな。
「じゃあ、君のこれからについて話そう」
俺のこれからか。
俺に家族はいないし、頼れる大人もいない。
お金もそんなにあるわけではないから、どこかに転校することもできない。
そもそも転校云々の前に、俺は今まで通りの生活を送れるのだろうか。
秋山先生からすれば、俺は殺し損ねた人間であり、自分が犯人であることを知っている唯一の人間だ。
口封じのために、是が非でも殺したいだろう。
仮にどこか別の学校へ転校できたとしても、秋山先生に怯えながら生きていくことは避けられない。
「君は今、秋山先生に命を狙われている可能性が高い。今まで通りの生活というのは、正直厳しいものがあるだろう」
「はい。俺もそう思います」
「神崎くん、家族や親戚はいる?」
「いえ、いませんが」
「なら、君に一つ提案がある。星光学園は知っているかい?」
「名前だけは聞いたことがあります」
星光学園。
私立の学校らしいのだが、情報がまったく出回っていない。
噂で聞いたのは、入試などは行われておらず、星光学園から直接入学の通知が届くのだそうだ。
その通知が届いたら、入学を拒否することはできないらしい。
そして星光学園の卒業生は、そのまま星光学園の教員などとして働くことになり、一度入ったら二度と出ることができないと言われている。
「星光学園に転入するというのはどうだろう。あそこなら、君を秋山先生から守ることができる」
「どういうことです?」
「星光学園は、特殊な能力を持った子たちが通う学園だ」




